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第十七章 決断

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一ノ瀬社長の命を受けた、田中社長の動きは早かった。
グループで出利葉花蓮の手伝いをしていた女性スタッフ二人を、ガーデンズオフィスに出向して貰う。
女性スタッフが動きやすいように、オフィスに出利葉プロ担当の職員を置く。
スポーツマネージメント専門会社とアドバイザリー契約を結んで、関係を強化した。

俺が面会してから1週間後、一ノ瀬グループの法務部社員と顧問弁護士、何故か俺も連れられて、角川プロに面会した。
田中社長が、企画書と契約書を見せる。
書類に目を通して幾つかの質問を弁護士した後、角川プロが田中社長に向かって話し始めた。

「1週間でここまで用意してくるとは、流石に一ノ瀬グループだな」

「ありがとうございます」

「但し70点だ。30%のマネージメント料じゃ、赤字になるぞ」

「将来への投資です。いつか10倍になって返ってくると信じています」
田中社長も負けていない。

「いいだろう、後は花蓮との交渉だな」

練習していた出利葉花蓮プロが呼ばれて、部屋に入って来た。
俺や田中社長とは面識が有るが、大人数なのにちょっと驚いている。

「俺が一ノ瀬グループに要請して、来て頂いた。
今年のツアーから、君のマネージメントを任せる体制を作って貰ったんだ」
角川プロが、出利葉花蓮にマネージメントの重要性を説明していく。

「君は、世界で戦う為に俺の所に着た。
だが、君一人では世界と戦えない。
そこでバックアップをするチームを作って、貰った。
試合は君の領域だが、それ以外の全てはマネージメントチームが行う」

「全てと言うのは?」

「君が家を出る瞬間から、試合を終えて帰り着くまでだ。
タクシーの手配から空港の手続き、飛行機のチケットからホテルの予約、食事から試合で着るウェアの管理、試合後のマッサージ、君が希望すれば何でも叶える」

「甘え過ぎじゃないですか?」

「勘違いをするな。
試合に集中出来る環境を作って貰うという事は、結果が求められる。
君が稼いで、彼らを食わせなければならない。
甘えるどころか、厳しい環境だ」

「怖いです」

「これが世界では当たり前なんだ。
今まで後援してくれた一ノ瀬社長が了解して、田中社長に一任している。
後は、君の決断だけだ」

「勝つ為なら、何でもする覚悟は決めていました。
そこまでして頂けるなら、喜んで契約します」
花蓮の覚悟は本物だった。
直ぐに弁護士が立ち会う中で、契約書にサインをする。

「これが世界と戦う第一歩だ、まだやることは沢山残っている」
角川プロの表情は、厳しかった。

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