蒼い海 ～女装男子の冒険～

第十六章 転身

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大晦日、ノートPCでゴルフについて検索を始めた。
長崎の実家は近所にゴルフ場が４か所くらいあり、観光客で賑わっている。
俺の認識では、大人の遊びという感覚だった。
調べるうちにゴルフの歴史が俺の琴線に触れる。
1457年、スコットランドのゴルフ禁止令が公文書に残る最古のゴルフという競技の証だ。
日本で言えば応仁の乱の１０年前、室町幕府中期にゴルフに興じる人がいた。
１６世紀のスコットランド、メアリー・スチュアート女王がドレス姿でゴルフを楽しんでいたという逸話もある。
当時を描いた絵を見ると、男性はツイードのジャケットにニッカボッカ、ハンチング帽姿だ。
solemnityのBritishと極めて親和性が高い。
新年の会議に出す資料を自分なりに書き上げていく。
業界の市場規模など調べる必要があるし、いきなり手を出すにはリスクがある。
あくまで、叩き台という一次資料だった。

……

夜には、一ノ瀬の家族全員で年越しそばを食べた。
その後はリビングで、俺と聖苑、陽彩、沙綾と一緒にTVで大晦日歌謡ショーを見る。
午後７時台にcloud nineが出てきて、今年のヒット曲を歌った。
デビューから足掛け３年、ついに出演の夢を叶えている。
加藤みさきはツインセンターの一角、有言実行通りに最前列まで上って来ていた。

午後８時台、前半戦の最後にfortunaが登場して今年のヒット曲を２曲メドレーで歌った。
沙織はポジションが２列目なってるので、結構映っている。
正確で無駄のないダンス、俺にはキレイに踊っているように見えた。

「真凛がfortunaに入っていたら、こんな感じだったんだね」
俺の横で見ている聖苑が言ってる。

「俺が入っていても、あんなに綺麗には踊れない。
あの位置で踊ってるのは沙織の実力だよ」

「確かに、あんなにレッスン出来るのも才能だよね」

「ああ、アイドルとしての才能は俺など足元にも及ばない」

「蒼海がそこまで褒めるって、珍しい」

「沙織の才能は、田中社長も認めてるよ」

　もう俺が沙織のアイドル人生に口出しすることも無いだろう。
　彼女は自分の足で立っている。
　沙織は妹だが、自立した大人になったと確信した。