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第十五章 引退

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「後3日で、出雲真凛を引退するんだね」

solemnity meetingの開催まで後3日になって、俺と聖苑は部屋のソファーで話している。
思えば大学に入学して3日目、ガイダンスの日に付き合おうって言われた。
その日にこの部屋でメイクされたのが、全ての始まりだった。

「ここで10万円に釣られて、メイクされたのがスタートだった」

「あの時10万払ったのが、100億まで行くとは思わなかったな」

「何であんな行動したの?
今の聖苑を見てると、考えられないんだけど」

「父に対する反抗だったのかな。
高校時代は、父と話なんか一切しなかったから」

「何で? 素敵なお父さんだと思うけど」

「偉大過ぎたのよ、なのにお前の自由にしていいと言ってたの。
周りは口にはしないけど、後継者になって欲しいと思ってた。
私はどうしたらいいのか、判らなくなってたの」

「プレッシャーがあったんだ」

「結局、真凛を利用した形になったね。
スカウトからガーデンズオフィス設立まで父の世話になって、仲直り出来たから」

「聖苑が真凛の道を作ってくれた。
渋谷の眉サロンから表参道のヘアサロンに始まって、伊集院先生の発声教室、スカウトに積極的だったし」

大学ネームとして使い始めて3年半、俺は出雲真凛の名前を捨てる。

……

「真凛さん。男子に戻ったらプライベートで着る服が無いと思って、フィーデスから頂いてきました」

月奈がフィーデスのスタイリストと一緒に選んでくれた服を10セット程、届けてくれた。
solemnityの専属になって、自分で服を選ぶ習慣が無かったので助かる。
花鳥先生はメンズラインを作りたいようだが、今の忙しさではまだ先になりそうだ。
それを作っていくのは、俺の仕事になるのかな。

明日がリハーサルで、明後日が本番だ。
地元から両親、姉、弟も上京してくる。

最後の準備が、始まった。

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