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第十五章 引退

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専属モデルは、この娘しかいない。

やっと、見つけた。
ただ芸能界を離れている女性なので、話を聞いていただくルートが見つからない。
あれこれ伝手を辿ると、春木プロデューサーに行きついた。

北宮 芽亜里きたみや めありに会いたいんです。
紹介して頂けませんか?」

「もう引退してるだろ。俺の紹介で会ってくれるとは限らんぞ」

「お願いします、会わない事には誠意の見せようが無いんです」

「我儘な奴だなあ。本当にお前はプロデューサーに向いてるよ。
連絡しておく、ただし期待はするなよ」

4年前にプロデューサーは、武蔵野歌劇団の演目「女帝エカテリーナ」の原案を書いていた。
この演目が大ヒットして、北宮芽亜里は娘役の大スターになった。
その後3年間で引退、今は都内の大学に通っている。
本人からガーデンズオフィスに連絡が入って、会ってくれることになった。

出雲真凛は、横浜某所に来ていた。
月奈を連れて、solemnityのドレス一式を持ってきている。
私たちが訪ねた家は、超高級住宅街の一角の豪邸で彼女は本物のお嬢様だった。
母親と思われる女性と二人で、私たちに会ってくれる。
重厚なソファがある応接室で、紅茶が出された。

「こんにちは、出雲真凛と申します。
本日は、お話を聞いていただけると言うことで伺いました」

「いらっしゃいませ、芽亜里です。
人気モデルの真凛さんにお会い出来るのを、楽しみにしてました」

「早速ですが、芽亜里さんにsolemnityの専属モデルを引き受けていただきたい。
もちろん、大学生ですから学業優先は守ります。
私も今、大学4年生ですが、学業を優先して頂いてました」

「私、solemnityの事を全く知りません」

「そうかも知れないと思い、何点か用意して来ました。
スタイリストの月奈を連れてきてます。是非、一度着て頂きたい」

「お洋服は大好きなので、試させて頂きます」
そう言って、別室に月奈と二人で出て行った。
私は母親と二人になる。

「何故、あの子何でしょう?」
母親が心配そうに聞いて来た。

「芽亜里さんの持つ圧倒的な上品さ、気高さです。
あれは教えられません、持って生まれた天性のものです」

二人で話していると、ドアが開いて着替えた芽亜里が月奈と一緒に入って来た。

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