上 下
212 / 322
第十二章 新機軸

17

しおりを挟む
「それでは、お手本を見せてもらいましょう」

俺と月奈、沙織と美那がペアになってランウェイを歩く。
座って観ている人たちが、嬉しそうだった。

「小柄なモデルさんたち、月奈のウォーキングを見たでしょう。
真凛と一緒でも、堂々と歩いていた」

「みんな、応募するくらいだから理想のモデルとかいるでしょう。
気持ちだけでも、成りきってください」

「TVカメラも着てますよ。さあ、歩いてみましょう」
音楽が鳴って、ウォーキングが始まった。

1回目より、ずいぶん良い。

「みんな音楽聞こえてる?リズムに全然乗ってない」
「明日は会場いっぱいの人が見ています。私を見て、そんな気持ちになって」
「恥ずかしいとか思ってる人は帰っていい」
講師の指導に熱が入ってきた。

午前中の練習が終わり、昼食の休憩だ。
俺が推薦した子がやってきた。

「私を推薦してくれて、ありがとうございます」

「君の笑顔が見たかったから」

「上手く笑えないんです」

「音楽に乗ればいい。
イヤホンで音楽聞きながら、遊びに行くようなイメージ」

「やってみます」
返事は力強かった。

午後も、何本歩いたか判らないほど練習していた。

「さあ、ラストいくよ」
講師の声が響く。

みんな疲れのピークで、無駄な力が入ってない。
歩きはいいが、笑顔が消えていた。

「笑って、最高の笑顔を出して」講師の絶叫が聞こえる。
リハーサルは終わった。

モデルが集められて、solemnityの加山社長が話をした。

「皆さん、リハーサルお疲れ様でした。
明日着ていただく衣装は、倒産騒ぎで日の目を見なかった春夏コレクションです。
聖苑さんが全量買い上げてくれたので、市場には出回っておりません。
この配送センターが稼働したら、ECサイトでoutlet商品として販売予定です。
明日、皆さんが無事にステージを終えたら、着た衣装はプレゼントします。
頑張ってください」

歓声が上がって、みんな喜んでいた。

「明日に備えて、今日はゆっくりしてください」
最後に、講師が優しい言葉をかけていた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

白雪姫の元継母は氷の公爵との結婚を破棄したい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:371pt お気に入り:47

学校一の美女が学校一の漢に告白される話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:110

君の世界は森で華やぐ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:383

いちゃらぶ×ぶざまえろ♡らぶざま短編集

BL / 連載中 24h.ポイント:7,896pt お気に入り:526

かりそめマリッジ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:405pt お気に入り:21

薔薇の耽血(バラのたんけつ)

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1

処理中です...