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第十二章 新機軸

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1月3日。
みんなで会場に行くと、家族や友人に送られた社員モデルの皆さんがいた。
緊張感を出すために、友人や家族の皆さんに声をかけた。

「練習の緊張感を出したいので、見たい方は中へどうぞ」
ランウェイ沿いに並んで座ってもらった。

バックヤードでは衣装合わせが行われた。
流石に太って入らない人はいないが、サイズ変更は4人出た。
月奈がメイクを直していく。
その都度、歓声があがる。
みんな手鏡を放さないで、しげしげと見ていた。

俺が指名した彼女は、ノーメイクだった。
一番後回しにされて不安そうだ。
眉をカットされるところから始まって、ちょっと時間がかかった。
その分、完成度が高い。
見ていた他の素人モデルがため息をつくほど、変わっていた。

「これが、私?」

「真凛がオーデションで指名した子だから、気合が入っちゃった」
月奈は自信ありげに答えた。

全員でステージに上がり、ウォーキング講師の話を聞く。
「皆さんに一日でモデルウォークを教えるのは無理です。
だから明日キレイに見えるテクニックを教えます。
楽しんで歩いてください」

「美那ちゃん、モデルウォークじゃなくて基本の歩きを見せてあげて」
音楽が鳴って、古田美那が歩いていく。
丸4カ月レッスンを続けているだけあって、キレイなウォーキングだった。

「今から言うことに気をつけて、全員1往復してもらいます。
まず背筋を伸ばす、足元を見ないで遠くを見る。笑顔で歩く。それだけです」
簡単に言ってるが、本当は相当に難しい。

一人ずつスタートしていく。

「とぼとぼ歩かない、もっと速足」
「前かがみになってますよ、反り返るくらいでいい」
「駅までちょっと早歩きぐらいで」
「笑顔が無い、お葬式ですか」
講師の𠮟責は容赦ない、これでも優しいほうだ。
一往復した素人モデルたちは、ゼイゼイいってる。
腹筋に力を入れて歩くと、相当に疲れるのだ。

「もう少し、膝を曲げないで真っすぐ脚を出した方がいい」
「笑顔は出来てる、後はとぼとぼ歩かないで」
「真面目過ぎて顔が怖い、リラックス」
戻ってきたモデルに、俺は声を掛けていった。

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