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第十二章 新機軸

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沙織が、fortunaの選抜メンバーに抜擢された。

月城美雪も一緒だ。
研究生の身分で選抜に入るのは、栗栖千鶴以来だった。

「全然、人気なんて無いのに」
沙織は、もっと研究生でやるべき事がある。
だが周りが、二人を待ってくれなかった。

「年末は、TVの仕事が多い。選抜メンバーで経験を積ませたい」
きれい事を言ってるが、ネームバリューを使いたい気持ちが透けて見える。

あのプロデューサーの悪い面が出ていた。
案の定、後一歩で選抜を逃したメンバーのファンが騒いでいた。
沙織は、家では気丈に振舞ってるが堪えている様子だった。
ところが、ある日を境に急に眼の色が変わった。
田中氏に確認すると、理由は明白だった。

「日曜日に、メトロポリスTVでアイドルパワーライブという番組がある。
加藤みさきは、cloud nineのNo3だ。
沙織はfortuna16人選抜の序列で11か12位だ。
そんな二人が同じ番組で共演する。
これで火がつかないようでは、植木遥の弟子って名乗れないぜ」

「端っこで踊ってたら、いつカメラが来るか分からない。
最高のパフォーマンスを見せたかったら、1曲全部どこを切り取られても見てる人に刺さるように踊れ。
遥先輩が教えてくれた」

流石に、パフォーマンスで選抜まで駆け上がったメンバーだ。
残してくれた言葉に、重みがある。

……

日曜日、TV局で番組収録が行われた。
メンバー控室の前で待ってると、リハーサルからcloud nineが戻ってきた。

「みさきちゃん」「沙織ちゃん」
二人が抱き合った。

「あっという間に、選抜まできたのね」

「お試し選抜よ、次は無い」

「次は真ん中目指して、私も頑張るから」

「やってみる」

「じゃあ、本番で会おうね」
二人が別々の控室に戻って行った。

「私たちがNo1アイドルってことを、見せつけましょう」
栗栖千鶴の激が飛んだ。

「「おー ! 」」
全員の気合いが入ったところで、歌収録になる。
一番の奥4列目、左端が沙織、右端が美雪だ。

序列よりポジションは、優遇されている。
選抜に入れた以上、使おうという運営サイドの意図が感じられた。

2曲収録して、トーク収録に入る。
沙織たちは、ひな壇2列目奥に座っていた。

同じひな壇の左側に、cloud nineが座っていた。
加藤みさきは、1列目の中央に座っている。

「アイドル界のトップを走るfortunaと、今人気急上昇中のcloud nineに来て頂きました」

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