蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

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第十章 成長

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「博多に行くって、久しぶり」

聖苑と俺は、fortunaのライブツアーを見るために博多に到着した。
お昼に名物のラーメンを食べて、ホテルにチェックインする。
時間に余裕を持って会場に到着すると、マネージャーに呼ばれて楽屋裏に入った。

「おっ、来たか」春木プロデューサーがいた。

「家族と一緒に、見させていただきます」

「地元凱旋だ、楽しんでくれ」
話しているとfortunaのエース、栗栖千鶴がいた。

「真凛ちゃん、沙織の応援に来たの?」

「もちろん、家族と一緒に見るんだ」

「期待していいと思うよ」
思わせぶりな言葉に、沙織の見せ場が用意されていると確信した。

「楽しみにしてる」そう言って、関係者席に移動した。

「大学はどうだ?」拓海に聞いた。

「面白い仲間が出来た、それと彼女も」

「充実してて何よりだ」

今日は両親と一緒に、姉の汐里も来ていた。
「初めて見るから、沙織が心配」

「九州メンバーは、見せ場があると思うよ」
会場のライトが落ちて、ステージ上のモニターに映像が流れる。

九州出身のメンバーの顔写真と出身地が表示されてovertureが流れた。
一気に会場は盛り上がり、ペンライトの光と歓声に包まれた。

スタートは、ツアータイトルのシングル曲からだ。
センターに白河寧々が立ち、両脇を栗栖千鶴と坂井理乃が務める。
そこから連続して8曲披露されて、沙織はアンダー楽曲に出ていた。

前半MCで九州出身メンバーに話が振られて、3人が挨拶をした。
沙織も他のメンバーと変わらない、拍手と声援を受けていた。

MC明けは、栗栖千鶴がセンターのユニットからスタート。
白河寧々や古田美那たち、選抜メンバーと研究生、アンダーの子たちがユニットで出演していた。
ユニットの後半、鹿児島出身の選抜メンバーがソロ曲を歌った。

次に沙織が植木遥とコンビで、1曲披露した。
デュエット曲と言うより、コンビで踊るダンス曲だった。
イントロから激しく踊り、歌いながら激しい振り付けを堂々とこなしていく。
小柄でスピードがある遥と、大柄で大きなダンスをする沙織のコンビネーションが美しかった。
二人の師弟関係を1曲に込めた、魂の3分間だった。

「沙織って、あんなに踊れるんだ」
初めて見た、姉の汐里が驚いている。

「私たちだって驚くほど、上達してるよ」
俺は答えた。

母は、泣いていた。
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