上 下
158 / 322
第十章 成長

しおりを挟む
週末のfortunaTVで、夏のツアーが発表された。
札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡、そして首都湾岸スタジアムでファイナルだ。
その間にも、選抜以外の正規メンバーと研究生でアンダーライブが組まれた。

沙織はレッスン漬けの毎日だ。
風呂上がりに居睡りして、寝たまま聖苑にスキンケアされるほど疲れている。
それでも週末になると、早朝からレッスンに向かう。
レッスンする体力も才能って言うが、沙織はその才能を持ち合わせていた。

俺は、solemnityの秋冬の撮影が準備中だ。
衣装合わせや着る衣装選びなど、時間が許す限り会議に出席している。

ガーデンズオフィスに行くと、田中氏が待っていた。

「沙織が三角監督のドラマCMに出ないと言ってる」

「何のCM?」

「コンタクトレンズだ。
去年のドラマCMが評判が良かったので、新しいシリーズを作ることになった。
主役のジェンダーレス少女に沙織を指名したんだが、本人が嫌がってる」

「どうせ真凛のコネは嫌だと、ゴネてるんだろう」

「その通り、真凛と同じ役を嫌がってる」

「あの三角監督が、去年と同じ役をする訳無いだろ。
このチャンスを逃す意味を判ってない」

「説得してくれるか?」

「いや、しない。
水無瀬結がfortunaを辞めてまで、組みたい監督だ。
事の重大さを、田中さんから話してやってくれ」

結局、出ることになった。
沙織は俺たちの部屋で風呂に入り、夕食を食べていた。

「お兄ちゃん、ゴメン」

「沙織がすることに口出ししないと決めていたが、一つだけ言わせてくれ。
お前に来た仕事は俺のコネがあるかもしれないが、もう一つfortunaに来た仕事だと考えろ。
お前が断るってことは、fortunaが断るってことだ。
自分の事だけじゃなく、仲間の事も考えろ」

「わかった、コネも実力のうちだと考える」

「それでいい。お前が真凛の妹っていうのは、逃れられないからな」

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

感じやすいぼくの話

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:873

君が望むなら、俺が全部叶えてみせる

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:26

気づいたら記憶喪失だった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:19

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:469pt お気に入り:92

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:435

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:975

処理中です...