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第九章 沙保里

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「お待ちしてました」
研究生公演の受付を済ませると、fortunaのマネージャーが待っていた。

「こんにちは、妹を連れてきました」

「話は伺ってます。楽屋裏でみんな待ってますよ」

楽屋裏は、差し入れが並べられている。
正規メンバーやプロデューサー、招待客が懇談していた。
solemnityの衣装スタッフもいる。

「真凛、彼女を紹介してくれ」
加山副社長だ。

「妹の沙保里です」

「何ていう透明感だ、うちのワンピースが似合ってる」

「九州のアイドルを受けたいっていうので、見学させてます」

「九州なんかやめて、fortunaを受ければいいだろう」

「受かりますかね?」

「落とすほうがおかしい」
みんな、グルなんじゃないかと思うほどだ。

水無瀬結がやってきた。
「こんにちは」妹と握手をした。

「こんにちは」沙保里は声が震えている。

「まあ、可愛い声。初々しい真凛ちゃんだ。
本当に、可愛い」
トップアイドルに褒められて、パニックになっていた。

「他所のグループに渡さないでね」
栗栖千鶴が言ってる。

「そんな才能、あるのかなあ?」

「真凛ちゃんより、fanが応援してくれる。
彼女は本物の娘だから」

「アンチされそうで、怖いよ」

「大丈夫、アンチもfanだから」
メンバーは判っていた。

結局、沙保里は2公演共に見て長崎へ帰った。

研究生バレンタイン公演は、大成功で終わった。
SNSでは、次世代センター論議が再燃して大騒ぎだ。
solemnityの衣装提供は、fanの評判も良くて話題になった。

翌週、写真週刊誌に沙保里が載った。
ゲネプロで春木プロデューサーの隣にいた写真が使われている。
俺の隣でステージを観ている写真も一緒に使われた。

「研究生公演を騒がせた謎の美少女」
「真凛ちゃんの隠し玉か?」
妹は一般人なので、顔にはモザイクがかけてあった。
それが余計に、想像を膨らませた。

翌週、俺と聖苑、山内女史の3人で長崎のホテルで家族と会った。
両親は、ガーデンズオフィスが預かってくれるならと賛成してくれた。

「実家に帰りたい」俺が両親に頼んだ。

「パニックになるから、やめて」
田舎は世間が狭い、みんなそれなりの苦労があるようだ。
俺は仕方なく諦める。

みんなで夕食を楽しんで、翌朝帰って行った。

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