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第八章 研究生

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12月31日、一ノ瀬邸に泊まっている。

母親とお手伝いさんが、年越しそばの為に海老の天ぷらを揚げていた。
手伝いたいが、何もさせてくれない。

「モデルさんにやけどでもさせたら、大変」

「聖苑は毎日、私に料理をさせてます」

「TVで見ましたよ、手際の良さに感心しました」

「恥ずかしいです」

「素敵なお母さまに、育てられたのね」

「TVを見て、泣いていたそうです」

「子供にTVであんなことを言われたら、親は泣きます」
母親の気持ちは、お金があるとか、無いとか関係ないようだ。

ゴルフから帰ってきた一ノ瀬社長が参加して、夕食を食べる。
晩酌につき合って聖苑と二人、スパークリングワインを頂いた。

「那須高原リゾートの支配人が、聖苑によろしくって言ってたぞ」

「クリスマスイヴ直前の23日に、パティシエを貸すのはちょっとって言ったくせに」

「あの夜は、本社も、リゾートホテルも電話が凄かったそうだ」

「みんな一般人の力を甘く見すぎている」

「あのアイデアは、どこから出たんだ?」

「差し入れは金額じゃない、cloud nineのメンバーが本当に喜ぶものを考えろ。
そう、田中氏に言われたの。
だから自分が差し入れされて一番嬉しいものを考えました。
あのパフェは、作ってすぐに食べないと価値が無い。
それを実現するには、あの方法しか無かったんです」

「なるほど。
反対を恐れず、最善の方法を選んだのは正解だった。
わざとホテル名を出さなかったのは、何故だ」

「今の世の中、どんなに隠しても必ず突き止められる。
だったら正しいヒントを送ったうえで、より難しくすればするほど宝探しは盛り上がります」

「人の気持ちを逆手を取ったのか、良く考えたな」

「次は、向こうの思うとおりになってしまいました。
まあ、どっちに転んでもいい宣伝にはなりますが」

「真凛が絡むと、聖苑も本気で頑張るんだな」

「真凛に恥はかかせられない。
それに差し入れする以上、喜んでもらいたいよ」
聖苑が社長らしい事を言った。

「私は何もしてないけど」俺の本音が出た。

「勝手に、周りを頑張らせる力があるんだ。
社員が真凛に会いたがってる、新年の名刺交換会は頼むぞ」

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