蒼い海 ～女装男子の冒険～

第七章 紆余曲折

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放送中の深夜から、もう差し入れの予想が始まった。
一ノ瀬流通グループのHPから、食品会社、観光部門のホテルなどの検索数が跳ね上がった。

fortunaファンの検索能力は凄かった。
SNS上の予想ランキングでは、軽井沢スペキアーリスホテルのチョコレートショップが１位、２位がその直営の銀座店だった。
お土産は、バレンタインのチョコレートだと予想が出ていた。

「ここまで予想されたら、出さないわけにはいかないね」

「ホントはどうするつもりだった？」

「予想通りだった。読まれすぎて口惜しい、裏切っちゃおうかな」
聖苑が怖いことを言っている。

……

緊急で、ラジオに呼ばれた。

「本日のゲストは、真凛ちゃんです」水無瀬結が紹介してくれる。

「こんばんは、出雲真凛です」

「fortuna new year concertに来てくださるそうで、ありがとうございます」
結が言った。

「プロデューサー直々に招待頂いたので、必ず観に行きます」

「クリスマスコンサートで、cloud nineがのメンバーが美味しそうな差し入れを食べてました」
来栖千鶴が話を振る。

「うちの社長が那須のホテルからパティシエを連れてきまして、大騒ぎになりましたね」

「私達の時は軽井沢のホテルからチョコレートショップが来るんじゃないかって、ファンの皆さんが予想してますけど？」
結が心配そうに聞いてくる。

「社長が予想を知って、当たってるのが口惜しいって言ってました。
裏切ってやろうかって、怖いことを口走ってます。
当日のお楽しみですね」

「チョコレートショップがいいです。真凜ちゃんからも、お願いしてください」
メンバーの期待を背負って、千鶴は懸命だった。

「寧々ちゃんも、遥も、莉緒もチョコ大好きだし」
メンバー名を出して釣ってくる。

「社長に、私からチョコでお願いしますって伝えます」
無事に収録は終わった。

放送直後から、軽井沢のホテルに大量の電話が入って大騒動になったらしい。
銀座店の留守番電話も、大変なことになった。

翌日もガーデンズオフィスの電話は、鳴りっぱなしだ。
聖苑社長の指示でHPに軽井沢スペキアーリスホテルのショコラティエがコンサートに参加する旨を、顔写真付きで掲載した。
お土産のバレンタインチョコセットもHPに載せておいたら、即日予約分は完売した。

直ぐに聖苑の父親から、正月は必ず戻るように連絡が入った。