蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

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第五章 大忙し

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afterglowの夏シングル、「Digitalisジギタリス」MVの出演依頼がきた。

監督が売れっ子の三角寛という事で、スケジュールがギリギリだ。
企画書を見て驚いた、水着って書いてある。
CGにでもするのかって思ったが、そんなお金はない様子だ。

「ゲーム会社の了解は取ってるそうだ」
田中氏が話を聞いていた。

「三角監督の作品に出れるだけで嬉しい」

新曲「Digitalis」のパイロット版が送られてきた。
ロックナンバーだが、爽快なだけじゃないメリハリの凄さがafterglowの持ち味だ。
洗練され過ぎてない、大人の毒が癖になる。

この曲がMVになったら、普通の夏のMVになるはずがない。
三角寛だ、きっと何かある。

3日前に、最終の絵コンテが送られてきた。
最初の企画書の面影が無いほど、変更されている。
「ベッドシーンがある」

集合時間は、前日の夕方だった。
ホテル最上階のスイートルームを借りて、リハーサルをした。
相手役とシーツに包まって、いちゃいちゃするのを確認する。
カット割りに合わせて、動くがこれが難しい。

「愛しあったところは、見てる人の想像に任せる。
終わった後の、余韻が欲しい。
朝日の中で、撮影するから一発勝負だ」

三角監督がプレッシャーをかけてくる。

「真凛ちゃん、明日は相手に任せていいから」

「わかりました、指示どおりにします」
下手な芝居など通用しない、素の自分を見せるだけだ。

日の出は早朝4時30分、1時間前に起きて準備をする。
極限まで素肌に見えるようにしたナチュラルメイクで、裸のままベッドに入る。
相手役も入ってきて、スタッフがシーツを直して監督の指示に合わせた。

東側の窓が赤く染まってきた。
「さあ、スタート」監督の声で撮影が始まった。

ベッドにスタッフの影がかからないように、慎重に撮影が続く。
朝日の光が時間が経過と共に、明るさが増していく。

「真凛ちゃん、目線こっち」
「ニコっとしてみようか」次々に指示が飛んでくる。

「二人抱き合って、kissして」
「そのまま、ぐるぐる回ってみよう」恥ずかしさとか、無くなった。
周りにスタッフがいて、監督の指示に全員が振り回される。
最後にベッドから出て、上半身裸で窓際に立つ。

「はい、カット」
後姿を撮影されて、朝の撮影は終了した。

午後に海岸のシーンを撮影して、全ての撮影が終わった。
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