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第五章 大忙し

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オーディション会場には、俺一人だった。
どうやら候補の中に有名人がいるので、個々に面接するようだ。

高校の制服っぽいブレザーとパンツが用意されていて、スタイリングされる。
指定されたポーズを撮影されてから、面接になった。

「出雲真凛さん、コンタクトレンズはご利用ですか?」

「はい、資料を見て頂くと判ると思いますが、女弓使いでブラウンのコンタクトを使用しています.
黒のドレスには、グリーンを合わせています
ただ視力は正常ですので、視力矯正のコンタクトは使用しておりません」

「最近は、男性のまま出演する事も多いようですね?」

「相手先の要望とこちらのブランディングを擦り合わせて、使い分けてます」

「ありがとうございました」
質疑応答が終わり、会場を後にした。

「あんな大手企業が、よく呼んでくれたね」

「だから知名度が大事って言ってるんだ」
大手医療品メーカー、コンタクトレンズ部門のCMだった。
さすがに田中氏も、自信が無さそうだ。

「大手は数字を大事にする。知名度や認知度、好感度とかな」
どうしても保守的になりがちだ。
今回は、オーディションに出れただけ良かったと理解した。

……

大学も新学期が始まり、講義がスタートする。
TVに出演したせいか、ずっと遠巻きに見られている感じだ。
「真凛ちゃん、スターだね」聖苑がからかう。

「気が抜けない。あくびも出来ないよ」
お昼にお弁当を食べてると、fortuna応援サークルの人たちが来た。

「真凛ちゃん、ありがとう。寧々ちゃんを指名してくれて」

「いや、仕事だから」

「それでも真凛ちゃんのお陰で、寧々ちゃんがあんなに積極的になった」

「それは本人のやる気だよ、私は何もしてない」

「植木遥ちゃんもSNSで、真凛ちゃんが庇ってくれたってファンの皆んなに言ってた」

「君たちの情報が有ったから、コメントする時に助かったんだ。
聞いてなかったら、気の利いた事は言えなかったよ。
感謝してる」

「過激な連中以外、ファンの大半はfortunaTVに出て欲しいって言ってる。
真凛ちゃんと仕事すると、売れるって」

「情報、ありがとう。考えておくね」

netの評判だけが、全てじゃない。
それも事実だった。

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