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第三章 チャンス

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1月4日、仕事初めの日に一ノ瀬流通グループの名刺交換会が行われる。
関連会社、取引先が集まって、新年の挨拶をする会合だ。
その席に、グループ会社の一員として出席する。

控室でメイクされてヘアアレンジを作り込んだら、振袖を着せられる。
元旦に着た、水色に白い鶴の振袖だった。

「お母さまが、真凛ちゃんにプレゼントしてくださったの」

俺は、ホテルの宴会場に入る。
スタッフに案内されて、ひな壇の端っこに座った。
司会者の仕切りで、一人ずつ紹介されていく。
最後に俺が紹介されて、立ち上がって頭を下げた。
他の重役より、拍手が多くて恐縮する。

司会者の指名で、社長が新年のスピーチをした。
その後、役員が今年の方針や事業計画を説明してから、歓談の時間になる。
ひな壇から立ち上がってフロアに降りると、娘たちに囲まれた。
「一緒に写ってください」 あっという間に列が出来る。
ひたすらペアで、ツーショット撮影をしていく。

役員や関係会社の娘たちだから、ないがしろにも出来ない。
中には白いロリータドレスの娘もちらほらいた。
「振袖も素敵だけど、黒のドレスが良かった」面と向かって言う、生意気な娘がいた。
だんだん笑顔がしんどくなる。
自分に仕事だって言い聞かせて、最後まで頑張った。

「過去の撮影で、一番しんどかった」
控室に戻って腰掛けた瞬間に、本音が出た。

「まだ、お手伝いしてくれた会社のお姉さまたちが待ってるわ」
聖苑社長は、厳しい。
もう一度部屋を出て、会場のお手伝いをしてくれたスタッフと撮影した。

「同じ一ノ瀬流通グループに、真凛ちゃんがいるって嬉しい」
「イグナイトドラゴンで遊んでます。勿論、女弓使いも使ってますよ」
「ツーショット、ありがとうございます。スマホの待ち受けにして自慢します」
スタッフの声援が温かい。
こんなに喜んでくれてるんだと、気を取り直した。

「赤字を出して、この人たちの足を引っ張らないようにしよう」

「今年は少しでも利益で貢献したいね」

聖苑と中園氏、俺で、今年の目標を口にした。

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