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第二章 転機

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「オーディションは100に3つだから」

田中マネージャーがオーディションを前に語る。

「どういうこと?」

「そのままだよ。一流モデルでも落ちまくる。
だから下手な鉄砲でも、数打つしか無いんだ」

アメリカFreak社の新カジュアルライン、 BiginningのCMモデルオーディションが再スタートする。

「俺たちは、会場まで連れていくことは出来る。
そこから先は、真凛自身が何とかするしか無いんだ」
田中氏が色々と手を回して探っても、今回のオーディションの中身が見えてこない。
従来の日本のやり方とは、違っている。

「これはチャンスだと思う。
ネームバリューより、個性を重視している可能性に賭けよう」

……

1次の書類選考を突破して、2次のオーディションに参加が決まった。
医療脱毛をされて、美容歯科でホワイトニングまでされた。

「今出来る事は、全部やった。
後は真凛次第だ、初めてなんだから気楽にやってこい」
あれだけ煽っておいて、気楽に何か出来るかよ。
そう思うが、これも田中氏らしい配慮なんだろう。

指定されたスタジオには、書類審査を通過した20人くらいがいた。

「メイクを落として、これを着てください」
黒いレオタードを渡された。
ヤバい、男だとバレる。

ここで開き直る。
俺は男なんだ、それしか武器が無い。
ここに居る全員が、俺よりデカイし本物の女だ。
もう普通じゃない何かに賭けた。

4人グループで一通りポージングした後、質疑応答が始まった。
司会者以外全員が外国人で、英語でガンガン聞いてくる。
必死で単語を繋いで、自分の気持ちを伝える。
もちろんジェスチャー付きで、しどろもどろだった。
流暢な英語でやり取り出来るものもいれば、全く喋れない者もいた。

午後の3次審査には、4人になっていた。

「ここまで来るとは、正直思ってなかった」
今頃になって、田中氏が言った。

「英語onlyなんて聞いてない」

「そうじゃないかとは思ったけど、通訳無しは想定外だ」

3次審査は、向こうが連れてきたメイクアップアーチストにフルメイクされる。
それに新作のブラウスとパンツで、シンプルな格好にスタイリングされた。
二人づつ、審査が始まった。

俺から先行で、ウォーキングからポーズをとる。
また英語で質問攻めされる。
判る単語を繋いで、必死に答えた。

次のモデルが歩き始めた、もう瞬間に負けを覚悟した。
レベルが違い過ぎる、質問の受け答えも完璧だ。
あまりのレベルの差に、悔しくもならない。

……

「明日に残ったぞ」
田中氏が興奮気味に叫んだ。

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