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第二章 転機

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6月中旬の朝5時、目覚ましをかけなくても目が覚めた。
俺は聖苑が寝ているベッドから抜け出して、ジャージに履き替える。
もう太陽が出ていて、日焼け止めは欠かせない。
UV加工のロンTを着てキャップを被り、部屋を出た。

首都高の高架が作る日陰を選んで、歩道をゆっくりとジョグから始める。
体が温まってくる10分過ぎから、トップスピードに乗った。
そのまま30分、走り続ける。
この時間だけが、蒼海に戻れる時間だ。
徐々にスピードを落として、息を整える。
最後の15分、女性のウォーキングを意識して歩いて帰った。

部屋に戻り次第、シャワーを浴びて洗顔をする。
バスルームから出てきたところで、聖苑が起きてきた。

「今日も走ってきたんだ」

「時々、蒼海に戻らないと頭がおかしくなる」

12時間何も食べてないので、食欲が半端ない。
白菜とモヤシ、豚肉の中華スープ、十六穀米、納豆、シンプルな朝食だ。
デザートにキウイフルーツを食べた。

最近は、ワンピースばかり着ている。
スチールブルーのAラインワンピに、メンズのストライプシャツを羽織る。
組み合わせを一緒にしてモスグリーンのワンピースを聖苑が着ていた。

表参道の美容室で、カラーを入れてエクステをつけ替える。
今回から、肩に掛かる長さにした。
聖苑はカラーとカットで、ほぼ一緒に出来上がった。

「二人並ぶと、ホント美人姉妹」

「真凛ちゃん、どんどん綺麗になってる」
お世辞だと判ってても、恥ずかしくなった。

「たまには、カフェに寄ろうよ」
ヘアサロンを出ると、聖苑が誘ってきた。

「我慢しすぎるのも、ストレスだからね」
一緒に、渋谷駅前の大型カフェに入った。
ここなら多機能トイレがあるので、安心だ。
生クリームがのった甘いラテを手にして、彼女が嬉しそうな顔をしている。

「全然、外食しないからお金が減らない。
自炊だと、6万円でお釣りがくるから」
久しぶりに、外でゆっくり話している時だった。

「ちょっと失礼していいかな?」
グレーの落ち着いたスーツ姿、笑顔だが目が笑っていない顔が怖い。
どう見ても堅気には見えない紳士が話しかけてきた。

「どうぞ」聖苑が席を勧めた。
男が座ってから、俺に言った。

「君を探していたんだ」

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