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第一章 始まり

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「ちゃんと、朝から食べたんだな」

翌日に一ノ瀬聖苑の部屋を訪ねると、食事も終わって大学に行く準備は出来ていた。

「いつも朝は寝起きが悪いんだけど、熱い豚汁で目が覚めた」

「朝食に味噌汁を食べるのは、ちゃんとした理由がある」

「料理に詳しいのね」

「母親が管理栄養士なんだ。
両親が共働きなので、手伝うのが当たり前の環境で育ったから」

「これから毎日作ってよ。ここに住んで良いから」

「居候するってこと?」

「付き合ってるんだから、同棲でしょ。
その代わり、家事一切のアルバイト代として毎月10万払うよ」

俺に家事を押し付けるくせに、強気な奴だ。
俺からも、条件を付けてやる。

「作って貰うからには、料理には一切文句を言うな。
好き嫌いも、言わせない。それでも大丈夫か?」

「いいよ。残念ながら好き嫌いは無いわ」

「同棲っていうくらいだから、sex前提だよね?」

「当然でしょ。ただ次の生理からピルを飲むから、その後にして欲しい」

kissした時の反応から、virginだと思ったが違うのか。
何とも違和感を感じさせるお嬢様だ、考えている事がまったく読めない。

「分かった、今日からここに住むよ」

……

今日は、大学で学科登録の相談会がある。
会場の体育館は、新入生でごった返していた。
とりあえず、二人で列に並ぶ。

俺の番が来た。
女性チューターに、履修登録票を見せる。

「よく考えられてる。
これでいいけど、第二外国語のフランス語は厳しいよ。
ドイツ語か中国語の方が、単位は取りやすいけど」

「フランス語で行きます」

「覚悟があるなら、このまま登録していい」

「ありがとうございます」

隣で聖苑が相談しているが、問題は無さそうだ。
相談カウンターの後ろに用意されたテーブルにノートPCを広げて、登録を終わらせる。
聖苑も同じカリキュラムで、登録は完了した。

帰り道、携帯ショップに寄った。
彼女がiPhoneを契約している間に、スーパーで買い物を済ませる。
鶏ガラスープの素と胡麻油、ツナ缶、鯖水煮缶、舞茸、豆腐などを買った。
ショップに戻ると、彼女がケースを選んでいた。

「どれがいいと思う?」

「画面が割れない奴」

「可愛くない」

「聖苑が好きな奴で、いいんじゃない」

「蒼海が使うんだよ、自分で選んで」

「iPhoneって、高いだろ」

「女の子は、iPhoneしか使わないから」

よく判らない、彼女なりの美意識があるようだった。

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