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しおりを挟むそろそろ寝ようか、と寝室へ移動して、ベッドの端に腰掛けた。
明日も仕事だ。とくに朝が弱い訳ではないが、昔から早寝ができる時にはそうしている。
恵介くんはまだ若いのに、いつも僕と一緒にベッドへ向かう。一緒に寝たいんだって可愛く言ってくれる。出会った時の彼は、まるで手負いの野良猫のようだったのに、今ではすっかり僕に擦り寄ってくる。
しばらくして、珍しく少し遅れて寝室に来た恵介くんが抱えている黒い箱を見て、僕は頭が真っ白になった。
「ごめんなさい……勝手に中見ちゃった」
「別にいいよ」
モジモジと膝を擦り合わせている彼に、僕はもう本能が爆発しそうだったけど、なんとか堪える。
「あ、あのさ、こういうの、持ってるってことはやっぱり好きなんだよね」
否定はできない。僕だって可愛い自分のSubを支配するための手段は色々試したい。ただ、それが虐げるだけの行為ならしない方がいい。そうも思っていた。
「俺もね、して欲しいなって、思ってるんだけど……ごめん、引いたよな」
「引いてないしやりたいよ!!ただ、君の嫌がることはしたくなくて」
「理人さんは本気で俺が嫌がると思ってる?それなら俺に人気なんて出なかったよ」
ピクッと本能が反応した。恵介くんは挑発的な表情で僕を見ている。煽られてる。そうわかったが、一度ついた火は止められない。
本当に厄介で、でも可愛い恋人だ。
「君はどうして欲しいの?」
内側からどうしようもない欲求が溢れてくる。涙に濡れ、必死で苦痛に耐える彼を見て興奮するDomの自分だ。
恵介くんが顔を赤くしながら近付いてきて、箱を床に置くと、中から厳つい首輪を取り出した。
「好きにしてって言ったら、どうしてくれるの?」
「君の望む通りにするよ」
首輪を受け取って、彼の細くて白い首に付ける。黒い革が映える。リードも取り付けると、それはまるで従順な犬のようだった。
「言わないとわからないよ?他にどうして欲しいの?」
意地悪を言う。恵介くんが唇をかみしめて、絞り出すように答える。
「もっと縛って。動けなくして欲しい」
そして自らTシャツを脱いだ。残酷な傷跡の残る皮膚が露わになる。
「おいで。手を後ろにして」
「うん」
ベッドの上に膝立ちにさせて、箱から取り出した革の拘束具で両手を後ろ手に固定する。実は彼の為に用意した頑丈なそれは、よく似合っていた。
期待に震える体が艶かしく、さらに虐めたくなった。
「どうして欲しいか言って」
「……ち、乳首、触って欲し、ンン!」
迷わず唇を寄せて吸い付く。ビクビクと四肢が震え、快感に耐えるように目を硬く閉じた。
「Look。目を逸らしちゃダメだよ」
「ん、ふ、うぅ」
唇を噛み締めた彼が、必死に目を開けてこっちを見た。潤んだ瞳に、どうしても嗜虐的な自分を止められない。
「あっ、やぁっ!痛いっ!!」
尖った先端を強く噛むと、しなやかな肢体がビクビクと跳ねる。痛いと言う割に、彼の下着は傍目に分かるほど濡れている。
はぁ、はぁ、と熱い吐息を漏らし、恍惚とした表情の彼が愛しくて堪らない。
「まさと、さん……」
「ん?」
「お、お尻、触って」
懇願するように言われ、僕は迷わず彼の下着に手を差し込んだ。後ろに触れると、すでにヌルヌルで誘うように吸い付いてくる。
「準備したの?」
「……うん。ダメだった?」
「いや、嬉しいよ。僕のためにしてくれたんでしょう?」
「うん」
コクコクと頷いて、薄らと笑みを浮かべる。なんてけしからん天使なんだ。ただ、こうやって客を喜ばせていたんだと思うと、複雑な気分にもなる。
僕だけのものだ。だから、ちゃんと躾けないと。
そんな気持ちが溢れて止まらない。
「それで?どうしたいの?」
「え、えっと、」
「自分から縛ってなんて言って、準備までして、それからどうしたいの?」
羞恥に歪む顔が僕を睨む。反対に、僕は笑った。
自分の衣服を脱ぐと、彼の体を上に乗せる。僕自身も我慢できずに立ち上がり、時折恵介くんの柔らかい尻の肉に触れ、さらに興奮が高まった。
「中に、欲しい」
「自分ですれば?」
意地悪にそう言うと、ついに涙を流しはじめた恵介くんが、そろそろと動いて僕のものに尻の穴を充てがう。僕の顔を見つめたまま、ゆっくりと腰を下ろす。探るように慎重に。腕が使えなくてもどかしい顔をする彼も可愛い。
「あっ、は、んんっ」
ゆっくりと腰を落として、僕のものを受け入れていく。
「全部入ってないけど」
「待って、一気には無理だ!ちょっ、本当に待って!」
はー、っと深く息を吐き、平静を保とうとする。が、僕は待っていられない。恵介くんの両足を掴んで、一気に奥を突き上げる。
「ひぎっ!?ああ、ぁ……」
ブルブル震え、内側の壁が不規則に収縮を繰り返した。彼が行き止まりだという場所に先端が触れる。それがとても気持ちよく、もっといじめたいと思った。
「まあ、ちょっと余ってるけど、とりあえず許してあげる。ほら、自分で動いて。僕に君の恥ずかしいところ、全部見せて」
Attract、と言う。恵介くんがCommandに反応し、ビクッと体を揺らしてゆっくりと両足を開く。繋がったところを見せつけるように、彼がゆっくり腰を動かし始める。
「あっ、うぁ!あたってる、ふ、んぁっ、きもち、イヒッ」
グチュ、ブチュ、と卑猥な水音が次第に激しくなる。不安定な体勢で必死に腰を振る姿を見ているだけで達しそうになる。
霰もない声を上げ、夢中になっている彼の先端が卑猥に弧を描く。先端から絶え間なく蜜をたらしていて、僕の腹の上に水溜りを作った。
「あっ、ああっ、ひやぁああっ、ンンン、く、ぁ……はぁ、はぁ」
しばらくして恵介くんが達した。ギュッと後ろを締め付けてくるが、なんとか耐えた。これで終わらす気は全くない。
くたりと倒れる彼の体を抱きとめて、ふう、と一息つく。
「次は僕の番だね」
「ん…?」
余韻に頭が働いていないのはわかった。僕は彼の体をうつ伏せにベッドに転がして、またCommandを使う。
「Present」
「ひゃあ、あっ」
腰をビクビク震わせながら、それでもしっかり膝を立てて尻を上げる。僕のものを受け入れていた後ろの口が、ぽっかりと真っ赤な内部を晒す。呼吸に合わせて収縮を繰り返す様が見て取れる。
ああ、なんて可愛いんだ。僕のSub。僕だけのものだ。
ヒクつくそこへ、再度自身を捩じ込む。奥へ進むと、苦しげな息遣いが聞こえてくる。
「まさ、とさっ、やめ、無理ッ」
「嫌ならSafe wordを言いなよ。この前決めたでしょ」
「うう、んっ、はぁ」
ブンブンと首を振って、唇を噛み締めて耐えている。もっと泣かせたい。僕なしじゃいられなくなるくらいに刻みつけて、決して離れないようにしたい。
わざと抉るように出し入れを繰り返す。時折腰を押し付けたままグリグリと奥を擦ると、両足をばたつかせて耐える様に震えるほど興奮した。
「やっ、ああっ!?奥、ヤバッ……うぐぁ、あああ!!」
首輪につけたリードを引くと、苦しげな声を漏らして後ろを締め付けてくる。それがたまらなく愛しい。
「恵介くん、出していい?」
「あ、ああ?……え?な、なに?」
喘ぎつつも律儀に返してくれる彼が可愛くて、意地悪するように耳元に囁く。
「中に出していい?」
「ヒッ、あ、ああっ、いいよ……いっぱい、欲し、ん」
リードを思い切り引く。同時に、勢いよく腰を押し付けて彼の中へ自分のものを吐き出す。
「あっ、腹の中、熱い、よ……」
無意識なのか呟く声が聞こえる。荒く呼気を吐く恵介くんをひっくり返して顔を見る。
涙と涎でぐちゃぐちゃな彼も可愛い。キスを落とすと、舌を出して受け入れてくれた。
しばらく貪るようにお互いの口腔を舐め合う。
「理人さん……また大きくなってるよ」
彼の中に入れたままだった自身が復活しているのはわかっていた。我ながら節操がないなと、思わないでもない。
「俺はまだ大丈夫だよ」
恵介くんがそう言うので、今度はゆっくり、彼の気持ちいいところを狙って動き出す。
入り口まで引き抜いて、カリの部分で抜き差しする。穴が小刻みに収縮して、悩ましい顔で見上げてくる。
身動きが取れない状況など微塵も不安に感じていないみたいに、恵介くんの体から力が抜けていく。
前立腺を突くとビクビクと素直に反応して、中心からドロっと体液が溢れてくる。無意識なのか僕の動きに合わせて腰を揺らし、溢れる涙も唾液も気にならないようだ。
「恵介くん?」
「は、ぁ?なに……?」
トロンと潤んだ目が彷徨う。完全に焦点があっていない。
Sub spaceに入ったんだなと理解すると同時に嬉しくなった。何度か体をつなげたが、僕が無茶をするせいで、結局いつも気絶させてしまっていた。
「気持ちいい?」
「う、ん……もっと、中擦って……ん、はぁ……」
「どこがいいの?」
「ん…?全部きもちい……あったかい……」
思わず笑みが溢れる。一番初めに怖がらせてしまったから、Sub spaceにはなかなか入ってくれないだろうなと思っていた。
「一番奥まで入れてくれる?」
我慢のできない自分に呆れるが、結局、どこまでも受け入れてくれることを望んでいる。
僕の支配は厄介だ。相手から求められたいと思ってしまう。僕が言うまでもなく、求めてくれるように躾けたい。
お漏らしさせた時も嬉しかったんだ。嫌そうな顔をしながらも、結局最後には「ちゃんと見てて」と言ってくれた彼が愛おしくてたまらなかった。
「ん、ちょうだい……ほんとは、いつも、すごく気持ちよくて……怖くなっちゃうんだ……でも今は大丈夫な気がする」
「そっか。じゃあゆっくりするね」
「ん」
言葉通り、ゆっくりと腰を進めた。柔らかいうち壁をかき分けて、硬く閉ざした入口を優しく叩く。
恵介くんの体がビクビクと震え、悩ましげな吐息がもれた。
「あ、そこ、きもちい……もっと、奥来て……おねがい」
虚な目で懇願してくる。僕は彼にキスを落としながら、奥の奥を突き抜けた。恵介くんがブルっと震えて硬直し、スッと脱力した。
「ぁ……ヒッ、きもち、い……死んじゃう……」
顎を震わせ、虚な顔で呟いて、それでも意識を失わずに耐えている。方やお尻の中は不規則に痙攣し、僕のものを飲み込んで離さない。
「おねが、ぁ……動いてっ!も、もっと、欲しいよぉ……」
彼の願い通り、無理矢理動かして奥をつく。恵介くんがゲホッとえずくが、構わず続ける。
「あ゛あ゛あ゛っ、ぅあ、ガハッ……イく、イぐっ…んぁ……」
「くっ」
ビュルビュルとあり得ないほどの量の精液が出る。気が付けば恵介くんのお腹の上がびちょびちょになっていた。
「はぁ……大丈夫?」
虚な顔を片手で捕まえて目を合わせる。しばし彷徨っていた瞳が、ゆっくり僕に焦点を合わせる。
「だ、大丈夫……死にそう」
「あははっ、とっても可愛かったよ」
そう言って柔らかい髪を撫でると、恵介くんが戸惑った顔をした。
「今……何があった?俺なんか変なこと言ってない?」
正気に戻り始め、オロオロし出す彼を起こして拘束を解く。手首にしっかりと赤い跡が残っていて、それもなんとなく嬉しくなるのは僕がDomだからだと思いたい。
首輪を外すと、そこにも同じく独占欲の跡があった。
「大丈夫、君はとても可愛かった。何もおかしなことは言ってないよ」
「お、俺、頭がフワフワしてよくわからなくなってた。こんなにフワフワしたの初めてだ……いつもはちゃんと覚えてるのに」
「Sub spaceに入ったんだよ。初めてだった?」
「うん……でも、俺いつも、理人さんに触られるとフワフワするよ。最初から、理人さんの声とか、手に触れられるとなんも考えられなくなってた……そういえば、初めて会った時、理人さんの声を聞いて抱きしめられただけで、とんでもなく幸せな気持ちになったんだ。ああ、この人は相性がいいんだなって、すぐにわかった」
照れ臭そうな笑みで話す恵介くんに、僕も同じく笑みをこぼす。
あの時から、特別に思ってくれてたんだ。この出会いはもしかして、運命だったんじゃないか、なんて、大人気ない思いを抱く。
僕たちに運命などない。互いの欲求を満たせる相手を、いつも冷酷に探している。
でも、偶然に出会って、その人と自分の欲求を完璧に満たし合えたら、それはきっと、理不尽な第二性に振り回される僕たちにとっての運命なのだと思う。
「もう一度、お風呂に入ろうか」
「一緒に入る?」
「そうだね。もう夜中だから」
「初めて一緒に入るね?」
「入りたかったんなら言ってくれたらいいのに」
「毎回お風呂でもしちゃったら、おじさんの体力が保たないでしょ?俺はplayもセックスもベッドでゆっくりしたいんだよ」
そう言って、不敵に笑う彼が可愛くて仕方なかった。
まるで、Subの君に僕の方が振り回されているみたいだ。
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