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第31話 後悔
しおりを挟む「ヒヒヒッ!こりゃいい娘捕まえたなァ!」
「だろう?森の中で一人でぶらついててよ……!」
「さァお嬢ちゃん……!おじさん達と遊ぼうか……グヒヒヒヒッ!」
「いや……兄さん助け…………いやっ……触んないで……い、いやあああああああ!!」
****
「そうですか……すみません……お忙しい時に……はい……はい……ありがとうございます。では……はい……失礼します」
秋保の友人宅への通話を終え、青い顔をした詩乃さんは、崩れ落ちるようにソファーに座り込んだ。
「あの子ったら……何処行っちゃったの……!?」
僕、春音姉さん、夏樹、冬乃ちゃんが集まったリビングに、詩乃さんの悲しげな声が響いて消える。
「はるねーたん?あきねーたんどうしたの?」
「……ふゆちゃん…………」
問い掛けて来る冬乃ちゃんにどう答えて良いか分からず、春音姉さんは精一杯の笑顔で冬乃ちゃんの頭を撫でていた……。
……もう、秋保が家を出て、2時間が経過した……。
いくら夏とはいえ、この時間になると薄暗く、大人の目に付かない所……危険な場所が増えてくる。
「詩乃さん……僕探して来るよ!」
「舜くん……!?」
「大丈夫……っ」
不安顔の詩乃さんに力強く頷いて見せて、僕は玄関へ向かう。
……父さんが出張中で本当に良かった。
居たらまた騒ぎ出して、ただでさえ心配している詩乃さんのストレスになるだろうから……!
「舜ちゃん!私も探しに……!」
「舜……!私も……っ!!」
春音姉さんと夏樹がついて来ようとしたが、僕は二人の進路を手で遮った。
「夏樹は家に居て欲しい!もう暗い!詩乃さんや冬乃ちゃんがもっと不安になる……」
「あ……」
夏樹は黙って俯いた。
もし夏樹が秋保を発見したら、秋保はまた逃げてしまいそうな気がする……。
「春音姉さんは……この近所だけを見回って!あまり遠くには行かないで!距離が有る所には僕が行くから!」
春音姉さんは暫く僕を見つめた後、ゆっくり大きく頷いた。
「分かったよ。舜ちゃんの言う通りにする……!」
「ありがとう……!何かあったら携帯に!」
「うん……!」
「二人とも、気をつけてっ!」
夏樹に見送られて、僕と春音姉さんは逢魔が時の街中へと駆け、二手に別れた。
……これは、僕の所為だ。
ちゃんと、秋保のした事に、即座に向き合わなかったから……。
嗚呼くそ……くそっ!
後悔したって仕方がないのに……っ!!
****
僕は駆ける。駆ける。
街灯が灯り始めた住宅街を。帰路につく人々でごった返す地下鉄の駅内を。生協マーケットの店内を。
居ない。どこにも居ない。
秋保……何処に……!?
「あれ?舜じゃねえか?」
聞き覚えのある声に僕は振り返る。
「勇希……!?」
「お前何やってんだ……!?」
街灯の下で、土埃まみれのユニフォーム姿の勇希が、僕を見て驚いた顔をしていた。
勇希の背後には、同じユニフォーム姿の少年達が数人、首を傾げている。勇希のチームメイト達だろう。
「勇希……秋保見なかった……!?」
「秋保?見てねえけど……どうしたんだ?」
「……家から居なくなった……」
「はぁあ!?」
勇希が驚いた声をあげると、背後のチームメイト達も騒ぎ出す。
「家出かよ!?」
「誘拐かも……!?」
「神隠しだ……!昨日テレビで観た……!
「おっかねぇ事言うなよ!馬鹿!」
すると、勇希のチームメイトの内、一番身長の高いニキビ面の少年が一歩前に出て僕の事を見下ろした。
「君、その秋保って子は……どんな姿をしてるの?」
「えっとですね……身長は僕より少し低めで、眼鏡を掛けた、セミロングの女の子です……」
ニキビ面の少年は、顔を強張らせ暫く腕を組んで考えてーー。
「もしかして……その子の眼鏡……赤いかい?」
「……っ!は、はい!」
「オレンジ色のワンピース?」
その通りだ!今日の秋保の格好!!
「はい!その通りです!見たんですか!?」
「うん、そのまんまの姿の子が……森林公園に入って行くのを見たんだ。泣きべそ顔だったから覚えてるよ」
「……っそ、その子を見た時間は……!?」
「……練習が終わってグラウンドにトンボをかけてた頃だから……30分くらい前かな?」
30分前……!そのくらいだったら、まだ公園内に……公園周囲に居る可能性が高い!
「ありがとうございます!探してみます!」
僕はニキビ面の少年に頭を下げると、森林公園を目指す事にする。
「舜!俺も秋保探すの手伝うぞっ!?」
背後から勇希の声が響く。
気持ちは有難いが……。
練習で疲れているだろう勇希に、無理をさせる訳にはいかない……。
「ありがとう!でも大丈夫だから!勇希は早く帰って休んで!見つかったらメールするから!」
「お、おい舜!?しゅーーんっ!?」
慌てた様子の勇希や、心配そうな表情を向けるチームメイト達に頭を下げて、僕はまた走り出す。
「っ!あいつ足速え!!」
「お、俺たちのクラブに欲しい!!」
野球クラブの面々が何か叫んでいたが、今の僕はそれどころではなかった……。
****
「はぁっ……はぁっ……」
破裂しそうな心臓を押さえながら、僕は森林公園へと到着した。
財布を持って来れば良かったと、僕は再び後悔した。
地下鉄を使えば、勇希達と遭った所から森林公園の近くの駅まで2、3分で着けたのに……。
さて、何処から探せば……。
「本当あのホームレスのジジイ共!クソムカつくな!」
公園の地図を探していると、不機嫌そうな学生カップルが出入り口へと向かって行く姿が見えた。
「石とか棒とか投げて来やがって!何が『取り込み中だからどっか行け』だ!?」
「マジでヤバいよあいつら!目がイッてたもん!気持ち悪いよ!」
「あのジジイ共……森の中の倉庫根城にしてるって……」
「流石に通報した方が良いって!」
まるで『気にしてください』といった態とらしい大声で叫びながら、カップルは夕闇の中へ消えていく。
ホームレスか……。
今の時代は不況だから……そういう人達も多いだろう……。
……………………。
…………。
……。
ふと、嫌な騒めきを感じた僕は、掲示板にでかでかと印されている公園の地図を見渡す。
さっきカップルが言ってた……ホームレスが根城にしている倉庫は……今僕が居る所からおよそ300メートルにあった。
もしかしたら……もしかしたら……!?
****
「やだ……やだあああっ……!く……臭いぃ……」
「ほ~~れご開帳~~!」
「おおーーっ!ツルツルのマンコがまる見えじゃあ~~!」
「ヒヒッ!この娘のパンティ~は儂が貰うぞぅ?クンクン…………むほぉっ!○学生の小便のええ匂いがするわい!」
「た、助けて…………おうち…………かえしてぇぇ…………」
「もちろん帰してやるぞぉ?寂しい寂しい儂らと遊んでくれたらのぉ?」
「あ……あそ……び……?」
「まぁ先ずは洗いっこじゃぁ……!ここ数年まともに洗ってない儂らのチンポを綺麗にして貰おうかのぅ?ヒッ……ヒヒヒヒヒヒ!」
「そうじゃそうじゃ!お嬢ちゃんお腹空いとるじゃろ?グヒヒヒヒヒヒ!」
「儂らの熟成チンカス……たらふく食わせてやるからのぉ?ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
「ひ……ぃ……!?」
続く
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