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第16話 葛藤ホットロード
しおりを挟む「あ……♡ああっ♡舜ちゃん……♡舜ちゃぁん♡」
深夜ーー。
僕のベッドの上……僕の身体の上で、春音姉さんは騎乗位で腰を振る。
「ぅ ……ううっ……!ね……姉さん……っ!姉さんっ!」
「……っ♡どうしたの……?舜ちゃん……なんか……イライラしてる……?」
「…………っ!」
「……良いよ……。私の事……乱暴にして……良いよ……っ」
「ぇ…………っ!?」
「私は……舜ちゃんの力になりたいから……!舜ちゃんに……幸せになって欲しいから……!」
「く……っ!姉さん……姉さんっっ!!」
目の前でユサユサ揺れる春音姉さんの乳房を力任せに揉みしだき、乳首を抓り上げながら……、姉さんのおマンコに咥え込まれたペニスを思い切り突き上げた。
「ひあああんっ♡ひいぃっ♡はひいいっっ♡」
「ごめん……!姉さん……ごめんっっ!ううっ!」
「良いのっ♡もっと突いてっ♡お姉ちゃんの身体……串刺しにしてええっっ♡」
僕は、何度も謝罪を呟きながら……。
春音姉さんに、姉さんの胎内に欲望をぶち撒けたーー。
そして、翌朝ーー。
窓を開けて、快晴の朝の、澄み切った空気を肺いっぱいに吸い込んで、僕は意識を覚醒させる。
自由って素晴らしい。ケンジによって奪われた日常がどれほど尊かったものか、改めてそう思った。
「ん…………?舜……ちゃん」
僕のベッドの中で、全裸の春音姉さんが寝ぼけ眼で顔を上げていた。
姉さんの周囲には、使用して水風船の様に膨らんだコンドームが4個転がっていた……。
「姉さん、昨日はありがとう……。まだ寝てて良いよ……。僕、朝御飯作って来るから……」
僕が春音姉さんの撫でると、姉さんは幸せそうに微笑み、再び夢の中へと落ちていく。
病院での初セックス以降、僕と春音姉さんの恋人……いや、肉体関係は続いていた。
側から見れば、幼い少年と女子高生、姉弟で愛し合う関係ーー。
勿論、詩乃さん達には、昨日告白してきた夏樹にはまだ内緒だ……。
(モット……モット淫靡ニ蕩カシタイ……!春音ダケジャナク……夏樹モ……皆……皆……!)
昨日から、湧き上がる黒い欲望が、またも込み上げて来る。まるで発作だ……。
「違う……違う……!」
僕は頭を振って、強引に気持ちを切り替える。
僕が春音姉さんを抱いたのは、復讐なんかじゃない。
ただ……前世の僕が終ぞ感じる事が出来なかった……温もりが欲しくて……。
僕は負念を掻き消そうと、朝食のレシピを頭の中に思い浮かべる。
黄金色の朝日が、前向きに生きようとする僕の手助けをしてくれた……。
****
「「「「美味しい!!」」」」
「おいしーー!!」
『夏休み中の家事手伝い』を名目に作ったオムレツは、家族にすこぶる好評だった。
当然だ。とあるホテルのレストランでバイトをしていた時、シェフから直々に教わったレシピだからだ。付け合わせのサラダのドレッシングも勿論特製だ。
「舜くん……!凄く美味しいわ……!お店で食べてるみたい……!」
詩乃さんが瞳を輝かせて喜んでくれた。
「中にカリカリのベーコンが入ってる~!舜ちゃんすご~い!」
「んん……、チーズもトロトロで美味しい……!兄さん……プロ……?」
「ふゆ、おにーたんのオムレツ好きーー!」
春音姉さんや秋保、冬乃ちゃんの幸せそうな顔ーー。
そうだ……。これが……これが見たかったんだ……。
(甘イ……甘イナァ……僕ハ……)
…………。
ザワザワ来る胸のムカつきを抑えながら、僕は夏樹を見た。
「夏樹?味はどう?」
「うん!イケるよコレ……!」
夏樹の口調は、最初は軽快だったが、僕と視線が合った途端に恥じらいを帯びたものとなっていった。
因みに、夏樹のオムレツだけ、中の具材が違う。タンパク質が豊富な鳥ササミと、鉄分が豊富なほうれん草が入っている。
「舜くん、夏樹の身体の事考えてくれたのね?ほんとにありがとう」
詩乃さんの微笑に、僕は照れながら応答した。
「いえ……、お赤飯よりは身体に良いでしょ?」
「舜ちゃん!私も生理になったら、ほうれん草オムレツ作ってね~!」
そう言う春音姉さんに、僕は苦笑した。年頃の娘が平然と生理と言ってはいけない……。こっちが恥ずかしくなってくる。
ただ一人……。
「フン……!男が台所に立つなんて情け無い!こういうのは女のやる事だろうが!」
父さんが面白くなさそうに鼻を鳴らした。腕組みをして、オムレツに手を出そうともしない。
ケンジの件以降、ケンジを僕達に近付けた切っ掛けを作った父さんは、何かと威張って父の威厳を取り戻そうとしていた。
「だいたい、こんなカロリーの高そうな物!朝っぱらから食わすんじゃ……」
だがーー、
「折角舜くんが作ってくれたのに!その言い方は何です!?」
詩乃さんの一喝に、父さんはたちまち「ヒェッ!?」と身を縮こませた。
「文句があるなら食べなくて結構です!」
詩乃さんが父さんを睨んで、オムレツをヒョイと取り上げた。
「あーー……!?」
そこで初めて父さんの顔に後悔の色が浮かぶが、時既に遅し。
詩乃さんは綺麗にオムレツをナイフで5つに切ると、僕、春音姉さん、夏樹、秋保、冬乃ちゃんに取り分けた。
「「「「「………………」」」」」
僕達5人は澄まし顔でオムレツを平らげる。
「………………」
結局父さんは、遣る瀬無い顔でサラダをもそもそ食べた後、逃げる様に仕事へと向かっていった……。
残念だね父さん。三ッ星シェフ直伝の味だったのに……。
****
「やだ……!夏樹ったら……!」
そう詩乃さんが声を上げたのは、僕が夏休みの宿題を終え、秋保と冬乃ちゃんの宿題を見ていた時だった。
「どうかした?」
「夏樹ったら……汗拭きタオル忘れちゃったのよ。もう……バッグにしまっときなさいって言ったのに……」
タオルを持ったままリビングでオロオロする詩乃さん。
夏樹はもう2時間も前に、春音姉さんと一緒に家を出てしまっていた。
春音姉さんは女子高の友達とショッピング。
夏樹は学校でスポーツチャンバラクラブの練習。
タオル無かったらヤバいだろ夏樹……。
「僕が届けに行って来る」
すかさず僕がそう言うと、詩乃さんより先に、
「え…………?」
秋保が顔を曇らせた。
「兄さん……今日は私の勉強……見てくれるって……」
「夏樹を汗まみれにする訳にはいかないだろ?」
「………………」
僕が苦笑しながら秋保の頭を撫でると、秋保は僕の掌に自分から頭を押し付けて来た。
「ふゆもーー!」
冬乃ちゃんの頭も勿論撫でて、僕は詩乃さんから受け取ったタオルをエコバックに入れた。あ、冷蔵庫の氷冷シートも持って行ってあげるか……。
ふと、詩乃さんは小首を傾げながら、ボソリと呟いた。
「本当に……舜くんが居なかったら……私は……私達はダメになっちゃってたかもね……」
詩乃さんが苦笑した。
(調子ノ良イ事ヲ……ヌケヌケト……)
胸内に湧き上がる負念を抑え込んでーー。
朝の事を思い出した僕は、詩乃さんにそっと耳打ちをする。
「僕も春音姉さんみたいにバイト出来るようになったら頑張るから。僕が詩乃さん達を守るから……」
暫くキョトンとした後、詩乃さんは頬を染めて微笑んだ。今まで見た事の無い顔だった。
「舜くんは……本当に……不思議な子ね」
「詩乃……さん?」
「ありがとう……。私も頑張るわ……」
「う、うん……」
「本当にありがとう。私に勇気……くれて……」
詩乃さんから、頬にキスを貰ってーー僕は家を後にした。
モアッとした熱気とセミの鳴き声が僕を包み込む。
リビングの窓から秋保が、哀しい顔で僕を見送っていた……。
****
(嗚呼……嗚呼……!何テ浅マシイ……!)
黙れ……!黙れ……!
感情が昂ぶる度にはっきりと感じる内なる声を抑え込んで、僕は炎天下の町を歩く。
(彼女達ハ同ジサ。サァ……マタ裏切ラレル前ニ蕩カシテシマオウ……)
煩い……!煩いっ!!
(ジャア何デ春音姉サンヲ抱キ続ケテイル……?)
愛しているからだ!愛したいからだ!
仕方ないじゃないか!?愛されなかったのだから!
(ソウサ!ソノ通リサ!ジャアモットモット貪レバ良イノニ!!)
黙れ!!
………………。
…………。
……。
コンビニの手前で、僕は立ち止まった。
止まりたくて止まった訳じゃない……。
中学生らしい学生服の少年3人に、道を塞がれたのだ。
「君さァ?一人ィ?」
「俺たち金無くて~?困ってンだよねェ」
「悪りぃけど金貸してくンねぇ?無期限で」
そう言って3人は僕を嗤いながら僕を囲む。
全く、夏の陽気は、こういった馬鹿も開放的にさせる……。
「あ?チビ……何笑ってんの?」
「早く金出せってんだよ……!」
「お前さァ……ちょっとこっち来ようか?」
そして僕は、3人組によって、コンビニの向かいにある……人気の無い神社の境内へと連れて行かれる……。
服を掴まれて分かる。
こいつら……あんまり鍛えてないな……。
最初は厄介だと思ったけど……、今は正直……助かった。
(嗚呼……!嗚呼……!)
こいつらで……少しは……鬱憤が晴らせそうだ……。
続く
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