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第5話 許さないぞクソ親父……!

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「舜!夏樹から聞いたぞ!?体育で大活躍したそうじゃないか!?」

 夜、久しぶりに早く帰宅した父さんは、詩乃さんにビールを注いで貰いながら上機嫌に言った。

「うん、まぁ……」
「凄いじゃないか舜!矢張り男の子はそうでないと!」

 父さんに褒めて貰うなんて久しぶりだったから、嬉しくて僕は少しはにかんでしまう。

「舜がこれまで活動的になったのも……ケンジ君のお陰だな!」


 …………前言撤回。

 食卓でヤツの名前を呼ぶな父さん、折角詩乃さんが作った絶品の油淋鶏が不味くなる。

 僕を鍛えたのは自分だと、夏樹が至極面白くない顔をしていた。


 僕は、今日の放課後を思い出してしまった。




 ****




『 今日のサッカーで負けたチームが教室の掃除なwwwこれゼッタイwww』

 と、体育の授業開始前、ケンジが自分から堂々と宣言した。

 それなのに、サッカーで敗けた途端、ケンジはーー。

「まぐれ勝ちは勝ちに入んねーからwwwという訳でBチームが掃除ね?wwバイバーイwww」

 と嗤って、取り巻きのスポーツ少年達や女子生徒達を連れてそそくさと帰ってしまった。

 無論、ケンジの宣言を聞いていた萩本先生は何も言わず、だらしのない苦笑を残して、

「ちゃ、ちゃんと、き、綺麗にするんだぞ?」

 と、僕達Bチームに言って、いそいそ職員室に退散した。

 ケンジ中心に廻る学級セカイ。納得がいかなかった。

 だが、良い事もあったんだ。

「良いよ!さっさとやっちゃおう!」
「うん!今日は塾休みだし!」
「運動にもなるしね!ね?舜君!」
「…………ああ!その通りだ!」

 勝利の余韻はまだBチームのジミメン達を鼓舞し続けていた。

「皆!頑張ろ!やれば出来る!」
「「おー!」」

 僕らはケンジ達の事なんか忘れ、楽しく掃除をする事が出来た。矢張り、悔しい時は、身体を動かすに限る……。

 それにーー。

「ゴミ集めたらゴミ袋前に出しといてくれ!俺が下まで持っていく!」
「「了解!」」

 Aチームでただ一人、小宮君が手伝ってくれた事が、僕は何よりも嬉しかった。

「小宮君、ありがとう。クラブは大丈夫?」
「問題ねえよ。それに……」

 小宮君は哀しく笑って僕を見た。

「元々は……これは俺たちAチームがやるべき事だったんだ……それが……っ!」

 悔しそうに拳を握り締める小宮君……。

「本当に……小宮君は良い奴だね」
「言うな……!恥ずかしい奴……!」

 小宮君は半ば八つ当たり気味にゴミ袋を絞りながら、

「それに……"小宮君"はやめろ……。舜……」
「え……?」
「…………"勇希"で良い」


 嗚呼……そうだ……。

 勇希……勇希……小宮勇希。

 8年後には……デカデカと新聞に載る名前。


「頼む……!お前は……お前だけは……!ケンジに敗けるな……舜……っ!」

「うん……ありがとう……勇希……!」


 僕と勇希は、ガッチリ固い握手をした。



 ****



「ケンジ君は昔の俺に似てるんだ!腕白な所は!ケンジ君はそれに加え挨拶が丁寧で……。良い子だよ本当に!」

 ビール泡を鼻の下に付けた父さんの声が、僕の意識を、少し居心地の悪い現実へと引き戻す。

 凄まじいな……父さんのケンジ贔屓は。

 すっかり詩乃さんと春音姉さんは苦笑しながら相槌を打つ事しか出来なくなっていた。

 それにしてもケンジ……アイツの大人に対する外面の良さは脅威だな。

 口だけの、僕の言葉では誰も信じてくれない……。

 矢張り物的証拠が……それらを作り出す機材が必要だ。

 その為には……。


「所で秋保は……」

 父さんが、黙々とご飯を食べている秋保を見る。

「秋保は最近ケンジ君の家に行っているのか?ケンジ君は勉強も出来るから、時々見てやって欲しいとも頼んだのだが……?」

 ……………………は!?

 秋保が……ケンジの家に……!?仕向けたのは父さんだったのか!?

 僕は頭痛を覚えた。

 アンタの所為かクソ親父。

 僕は前世を、あの忌まわしい動画を思い出した。



『 はん♡あぁんっ♡私がじゅ……12歳の時ですっ♡ 』
『 おぉ~wwもう7年前になるのか~ww 』
『 はいっ♡ケンジ様のお家で勉強見て貰って……その時にオンナにして貰いましたっ♡勉強と読書しかしなかった私にっ♡おっきいおペニスの快楽を教えてくれましたぁぁぁっ♡ 』



 アンタが秋保をケンジの家に行かせるから、秋保はケンジに処女を奪われて……!


「ん…………、ケンジさんのお家……最近は行ってない……」

 秋保は首を振りながら、スローペースな口調で応えた。

「え!?どうして!?折角ケンジ君受けてくれたのに?」

 父さんが若干詰め寄る感じで秋保に尋ねたが、秋保はどこまでもマイペースで、

「勉強……舜兄さんが教えてくれる……」

 父さんがビックリした目で僕を見た。

 オイ……そんな目で見るなクソ親父……。

「舜よりもケンジ君の方が要領良いだろう?」
「んん…………!」

 すると秋保は激しく首を振って、抗議の眼差しを父さんに向けた。

「舜兄さん……教え方上手……。私が納得するまで……何回でも……教えてくれた。今日も……優しく教えてくれた……。嬉しかった……」

 父さんがポカンとする。

 まぁ……前世では……家庭教師のバイトもやってたからね……僕……。

「舜くん、最近家事のお手伝いたくさんして貰って……」
「私も舜ちゃんに元気分けて貰ったよ~!」
「昔みたいにナヨナヨはしなくなったわよねー!」
「ん……!舜兄さん……かっこ良くなった……!」

 詩乃さん、春音姉さん、夏樹、秋保に褒められて、僕は背中がむず痒くなった。

 忘れていた。この感触ーー。

「おにーたん!はい!」

 ニコニコしながら、冬乃ちゃんが自分のポテトサラダを僕の皿に乗せた。

 ポテトサラダは、冬乃ちゃんの大好物なのに……。

「良いの?大好物でしょうに?」

 僕が尋ねると、冬乃ちゃんはニコニコ笑ってーー。

「うん!あそんでくれてありがと!ふゆ、おにーたんだいすき!」

 僕は冬乃ちゃんに手を合わせてから、ポテトサラダを食べた。冬乃ちゃんは更にニコニコ。

 詩乃さんや、春音姉さん達も、幸せそうな、嬉しそうな顔で僕を見ていた。

「そ……そうか……舜が……そうか……」

 ただ一人だけ、父さんは居心地が悪そうに、身を小さくしてビールをちびちび飲んでいた。

 ざまぁ見ろクソ親父……!短小包茎クソ親父……!




 ****





 そして、夕食の後は、最近の日課となっている、春音姉さんとのお風呂タイム。

「流しっこしようね~?舜ちゃん~?」
「はいはい……」

 流しっこは良いとして、腋毛の剃り残しチェックを僕に頼むのは勘弁してよ……姉さん……。

「……………………」

 ふと、背後に視線を感じ、僕は廊下からリビングの方を振り返る。

 秋保が、ジィーと僕を見つめていた。

「秋保?秋保もお風呂入る?」

 すると秋保は、ふるふると首を横に振る。

「3人だと狭い……。また今度……、舜兄さん……予約させて……?」
「うん……」
「ん……」

 秋保は、頬をピンク色に染めてはにかんだ。

 何だろう……?

 秋保って……あまり感情を出さない子だと思ってたけど……。

 あんな……綺麗な表情も……出来るんだ……。





「舜ちゃん?早く早く~?」


 脱衣所から、すっかり真っ裸になった春音姉さんが手招きしていた。

 姉さんの乳房と腕の間からは、鬱蒼とした腋毛がはみ出ているのが見える。

 姉さん、生え直るの早いよ……。





 ****






 翌日、土曜日ーー。

 早く起きた僕は、デイパックにお小遣いが入った財布と携帯電話を詰めて部屋を出た。


 今日、目当ての物が手に入れば……ケンジとの戦いがグッと楽になる。

 僕に……有利になる……!

「ふわぁ~?舜ちゃん~?どこかお出かけ?」

 ピンクのパジャマ姿でリビングをウロウロしてた春音姉さんに、

「ちょっと友達と買い物に出かけてくるよ。夕方までには戻るから……」
「え~?夕方~?折角の休日なのに~……お姉ちゃん寂しいよ~」

 眉をハの字、涎の跡が付いた頬で擦り寄って来る春音姉さんを、僕は苦笑しながら宥めた。


 その時ーー。


「あら!?下着が無いわ?」

 脱衣所から聞こえてきた詩乃さんの声に、僕の肌は逆立った。

「舜ちゃん~?」

 春音姉さんを置いて、僕は全速力で脱衣所目掛けて走る!

 まさか……!?『あの日』までまだあるのに!?

「詩乃さんっ!?」
「舜くん!?どうしたの!?怖い顔して?」
「誰の下着が無いんですか!?詩乃さんと姉さん達!?」


 しまった!僕はまた……ケンジの罠に……!



 そう思っていたが……。

 詩乃さんは、困った顔をしてーー。


「舜くんのトランクスが無いのよ……」
「ぼ……僕……っ!?」


 無くなったのは……僕のトランクス!?

「朝イチで洗おうとして……昨日の夜にちゃんと洗濯機の中に入れておいたのに……おかしいわね……?」

 僕の身体から力が抜け、デイパックが一層重く感じた。

 僕のトランクス……。

 どうでも良い……。

 至極どうでも良い……!

「詩乃さん……行ってきます……」
「あ!もう行くのね?待って?いつもお手伝いしてくれるから、特別にお小遣いプラス!」
「あ……あぁ……ありがとうございます」

 嬉しそうに微笑む詩乃さんから千円札を受け取って……僕はトボトボと玄関へ向かう……。

 朝っぱらから……酷く気疲れしてしまったな……。






 ****






「んん……っ♡ん……は……ぁ♡」


 僕は、知らなかった……。


「しゅ……舜……兄さん♡」


 洗濯前の、僕のトランクスを取ったのが、秋保だという事……。

 そして……。


「すぅ…………は……ぁ♡舜兄さんの匂い…………舜兄さんの…………おちんちんの匂いぃ…………♡」

 秋保が、僕の汚れたトランクスの匂いを嗅ぎながら、自室で独りオナニーをしているなんて……。

「はぁ……っ♡はぁ……っ♡兄さん……♡兄さん……♡」

 トランクスに鼻を付けて、夏樹よりも肉厚なワレメを……勃起したクリトリスを弄っていたなんて……。

「兄さんっ♡兄さんっ♡好き…っ♡好き…っ♡舜兄さ……しゅ……ふぁああ……ぁっ♡」


 プシャァァァァッ!


 僕の名を呼びながら、ベッドの上で、ワレメから潮を噴いて絶頂していたなんて……。


 この頃は未だ……知りようも、無かった……。




 続く
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