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ツマノ ハツシゴト
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「それで、モルダー様がリチャード・ゴドリー伯爵とホランド様を連れて王宮へ移転魔法で夜には到着予定です。名目上はヒル様をゴドリー伯の護衛から正式に近衛騎士とする手続きの立会いのため、それとケルニア戦争の根源であるマカフィーの残党を雇っていたことのへの釈明です」
クラークとハーンが会話している間に、ヘレナはマカフィーについての一連の案件をコールから説明され、次第に表情を曇らせていく。
「その言い訳は誰に向けて? アビゲイルか? それとも……」
「もちろん、コンスタンス様とその他大勢ですね。モルダー様としては揺さぶってみたら何か出るのではないかと」
「それはわかるが、よく、リチャード様が同意したな」
帰国以来、リチャードは国の仕事以外でコンスタンスから離れたことがない。
しかも、ヒルの冤罪はそもそもコンスタンスの讒言だ。
それを追求することなく、いきなり彼女を旅先に置いたままにするとは。
「まあ、もう一つの言い訳はごっそり護衛騎士たちを解雇したので、代わりを手配してそれらを戻るためだとしたそうです。ホランド様が、ですね」
「ん? ちょっと待って。あの坊ちゃん、そんな頭を働かせて根回しできる子だったの? というか、アレもあの女の毒牙にかかってうちらに敵意バリバリだったよね?」
ミカが疑問を投げかける。
時々猫の縄張りの見回りのようにこの敷地へやってきては、魔改造生垣に追い払われていた。
その場面に何度も遭遇したミカの中でホランドは、思春期真っ最中の容姿に養分を全振りされた残念な子という位置づけだ。
「ごもっともです。ここでちょっと整理したい案件がありまして」
ハーンは手のひらをかざし、指を一本折った。
「まず、ヒル様が監禁された時に待遇改善と便宜を働き、リチャード様では埒が明かないためにモルダー様に連絡を取り、騎士団に連れ出される時には不当な扱いに対してたった一人で猛然と抗議したのが、ホランド様です」
ヒルから聞いた話をざっと説明すると、ミカはかくんと顎を外した。
「なにそれ別人」
「で、ですね。リチャード様は体調が悪くなる薬を飲まされて一日中眠らされていたのですが、モルダー様がちょっと治療しまして薬をあらかた抜いた途端、会話が成立。見せられた記録画像も素直に認め、帰還したノーザン隊を断罪しました。ただ、コンスタンス様に対する未練は断ち切れていない状態ですが、それ以外の行動はまっとうになったとのことです」
二本目を折ったところで首を軽くかしげて微笑む。
「ね?なんかすごいでしょう。本邸にいたときとは全然違う」
「……ここを発って、十日目か……」
クラークが顎に手をやり呟くと、ハーンは我が意を得たりと嬉しそうな顔をして頷く。
「理解が早くて助かります。バーナード・コール様の身体の中から見つかった小さなかけら、覚えておいでですよね」
「あ……。あの、私が夢の中から持ち帰ったものですか?」
夢と現実は次元が違う。
それにもかかわらず、イチイの指輪に収納して持ち帰った、禍々しい何か。
「あれの詳しい解析はまだ終了していませんが、考えられるのは経口摂取されたものだということと、普通なら体内で溶けて無くなってしまうはずの物だったのかもしれないということと。そして何より重要なのは、それらの効力は『ものを考える気力が失せる』もしくは『短絡的な人格になる』可能性が高いことです。そうすると、色々合点がいきませんか」
「なるほど……。なんか、初めてお会いした頃、みなさま、ちょっと……。ちょっと、でしたよね」
ヘレナが唇をおさえながらおそるおそる言うと、クラークとコールは恥ずかし気に頭を下げ、それぞれ「すまなかった……」「すみませんでした……」と謝罪の言葉を口にする。
「まあ、アレはかなり強烈な結婚式でしたよねえ。まあ、ああいう性癖の人たちって珍しくはないので、僕はそんなに驚きませんでしたが。あそこの沙汰は金次第なので」
ますます沈みかけている空気をなんとかしようとヘレナは慌てて話題を切り替えた。
「それよりハーン様。ようするに、ある物質を十日間摂取していないから、その効力が切れかけていたということですか?」
「ああ、はい。その通りです。これについてはまだ調査せねばならないので、保留するしかありません。それとは別に試しておきたいことがありまして。前にホランド様のためにハンカチを何枚かヘレナ様に作って頂きましたよね」
「はい。イチイと藍で染色した糸を使ってイニシャルを刺繍しただけですが……」
布はラッセル商会から取り寄せた少し上等な木綿。
四隅を縫った糸も同じく、なんら特別の物ではない。
「それも十分効果があったと思われます。どうやらホランド様はアビゲイル邸でも常にお持ちだったのです」
クラークが仕立屋からの貰い物と言ってホランドに渡していたハンカチ。
彼が使うかどうかはわからなかった。
「……よくは分かりませんが、ちょっと加護を願って刺繍しただけでそれなりに意味があったということなのでしょうか」
「はい。僕たちはそう思っています。なので、今のうちにちょっと仕込んでみませんか?」
ハーンはヘレナに向かって提案する。
「なんでしょうか。私に出来ることでしたら……」
親しくなった人たちのために何かしたいという気持ちもあるが、何よりもこの敷地で決定権を持つリチャードを動かすことができれば、それは自分の状況も改善されるだろう。
過ごしやすくなるに越したことはない。
ヘレナは素早く考えを巡らせた。
「はい。ただ、徹夜はやめてくださいね。出来る範囲でお願いしたいのです」
私も命が惜しいので。
ハーンはキラキラとまばゆい笑みを振りまきながら言葉をつづける。
「クラーク様とコール様がこっそりとリチャード様の衣類をこちらへ移し、使用頻度の高い物から順番に、ヘレナ様に縫い直してもらってはいかがかなと」
「縫い……直す」
「ええ。ただし、周囲に感づかれないように、ほんの一部だけです。もともと完成しているものの糸をほどいて縫って頂いたら、なんらかの護りになるのではないかと僕は思います」
「うーん。例えば、ボタンを付け直すとか、でしょうか?」
こてんと首をかしげるヘレナに、ハーンはこくこくと小刻みに首を上下する。
「そうそう。そんな感じです」
「わかりました。やりましょう。今すぐに」
ヘレナの即決に、三人はそれぞれ何とも言えない顔をする。
「クラーク様。リチャード様の下着を全部持ってきていただけますか?」
「は? 下着?」
クラークは思わず真顔で問い返す。
「ええ。下着です。これが一番でしょう」
ヘレナはいつになく目に力を入れてクラークを見つめ、力説した。
「日常的で、使用頻度が高く、しかも目につかない。いい感じではありませんか?」
「ああ、肌に近いのもイイ感じですね~」
ハーンの合の手に、ヘレナのやる気は加速する。
「私、下着を縫うの、得意なのです。最初の下請けはそこからだったので!」
昔取った杵柄である。
速さには自信がある。
「あれ? 下着の下請けはラッセルじゃないね? アタシ知らなかったんだけど」
ラッセル商会経由の依頼ではミカが材料を届けることが多いため、ヘレナの仕事をあらかた把握していた。
下着を縫わせるなんて、記憶にないし、テリーたちがさせるはずもない。
「ええ。母の具合が悪くなったころに通いの家政婦さんが仲介してくれて。しばらく内緒でしたね」
「それって、十二歳からってことかい」
「ああ、それよりちょっと前ですね。手の込んだ仕事が入るようになるまで受けていたので四~五年ってところでしょうか。途中から娼館の下着も受けました。細工の細かいものの練習になって良かったです」
「なんてこったい……」
ミカが珍しく動揺して、頭を抱えた。
「いや、それよりも。いや、よくないんだけど。あのさ……。男性用の下着だけど……。あんたはいいのか?」
クラークは遠慮がちに疑問を投げかけたが、こくこくとヘレナは頷く。
「仕事は男性用ももちろん経験ありますよ。そもそも、家が傾いてから父とクリスの下着は全部私が縫っていましたし。問題なしです」
「まあ、そうだね……。今回、『夫』の下着だしねえ」
少し遠い目になるミカに、ヘレナは軽く吹きだす。
「ああ、そういえば、リチャード様は夫ということになっていたのでした。これって、妻としての初仕事ですね?」
ヘレナの中で、よくわからないがわくわくしてくる何かが生まれた。
「うん。楽しそうなお仕事です。なんだか、すごくやる気がわいてきました」
ぐっと二つの拳を握りしめ、じっと見つめる。
また、何かを為せるかもしれないのが嬉しくて、楽しい。
「明日の朝までにぜひ全部やっつけたいので……。クラーク様、コール様」
両手の拳を握りしめたまま二人をちらちらと見つめると、なぜか彼らはしょっぱい顔をしていた。
「……ええ。あの、……はい。とってきます。リチャード様の下着……」
なぜか、しどろもどろなコール。
「ああ、すぐには心の整理つかないだろうから、とりあえずデザートとコーヒーはゆっくりおあがりよ、お二人さん」
ミカはどういうわけか、気の毒そうな顔で立ち上がる。
「おかわりも、あるよ」
その後ろをクラークが追いかける。
「すまないが、ジンジャークッキーまだあるか?」
「あるよ。ついてくるかい?」
「あ、私もお手伝いします」
カクカクと微妙な動きでコールもミカについていってしまった。
「ん? どうしたのでしょう、みなさん」
カップに残ったコーヒーに口をつけ、ヘレナは首をかしげる。
「そうですねえ……。お二人は意外と純だったというかなんというか……」
ハーンの返事に、なぜか暖炉の前のパールが「ふー」と長いため息をついた。
クラークとハーンが会話している間に、ヘレナはマカフィーについての一連の案件をコールから説明され、次第に表情を曇らせていく。
「その言い訳は誰に向けて? アビゲイルか? それとも……」
「もちろん、コンスタンス様とその他大勢ですね。モルダー様としては揺さぶってみたら何か出るのではないかと」
「それはわかるが、よく、リチャード様が同意したな」
帰国以来、リチャードは国の仕事以外でコンスタンスから離れたことがない。
しかも、ヒルの冤罪はそもそもコンスタンスの讒言だ。
それを追求することなく、いきなり彼女を旅先に置いたままにするとは。
「まあ、もう一つの言い訳はごっそり護衛騎士たちを解雇したので、代わりを手配してそれらを戻るためだとしたそうです。ホランド様が、ですね」
「ん? ちょっと待って。あの坊ちゃん、そんな頭を働かせて根回しできる子だったの? というか、アレもあの女の毒牙にかかってうちらに敵意バリバリだったよね?」
ミカが疑問を投げかける。
時々猫の縄張りの見回りのようにこの敷地へやってきては、魔改造生垣に追い払われていた。
その場面に何度も遭遇したミカの中でホランドは、思春期真っ最中の容姿に養分を全振りされた残念な子という位置づけだ。
「ごもっともです。ここでちょっと整理したい案件がありまして」
ハーンは手のひらをかざし、指を一本折った。
「まず、ヒル様が監禁された時に待遇改善と便宜を働き、リチャード様では埒が明かないためにモルダー様に連絡を取り、騎士団に連れ出される時には不当な扱いに対してたった一人で猛然と抗議したのが、ホランド様です」
ヒルから聞いた話をざっと説明すると、ミカはかくんと顎を外した。
「なにそれ別人」
「で、ですね。リチャード様は体調が悪くなる薬を飲まされて一日中眠らされていたのですが、モルダー様がちょっと治療しまして薬をあらかた抜いた途端、会話が成立。見せられた記録画像も素直に認め、帰還したノーザン隊を断罪しました。ただ、コンスタンス様に対する未練は断ち切れていない状態ですが、それ以外の行動はまっとうになったとのことです」
二本目を折ったところで首を軽くかしげて微笑む。
「ね?なんかすごいでしょう。本邸にいたときとは全然違う」
「……ここを発って、十日目か……」
クラークが顎に手をやり呟くと、ハーンは我が意を得たりと嬉しそうな顔をして頷く。
「理解が早くて助かります。バーナード・コール様の身体の中から見つかった小さなかけら、覚えておいでですよね」
「あ……。あの、私が夢の中から持ち帰ったものですか?」
夢と現実は次元が違う。
それにもかかわらず、イチイの指輪に収納して持ち帰った、禍々しい何か。
「あれの詳しい解析はまだ終了していませんが、考えられるのは経口摂取されたものだということと、普通なら体内で溶けて無くなってしまうはずの物だったのかもしれないということと。そして何より重要なのは、それらの効力は『ものを考える気力が失せる』もしくは『短絡的な人格になる』可能性が高いことです。そうすると、色々合点がいきませんか」
「なるほど……。なんか、初めてお会いした頃、みなさま、ちょっと……。ちょっと、でしたよね」
ヘレナが唇をおさえながらおそるおそる言うと、クラークとコールは恥ずかし気に頭を下げ、それぞれ「すまなかった……」「すみませんでした……」と謝罪の言葉を口にする。
「まあ、アレはかなり強烈な結婚式でしたよねえ。まあ、ああいう性癖の人たちって珍しくはないので、僕はそんなに驚きませんでしたが。あそこの沙汰は金次第なので」
ますます沈みかけている空気をなんとかしようとヘレナは慌てて話題を切り替えた。
「それよりハーン様。ようするに、ある物質を十日間摂取していないから、その効力が切れかけていたということですか?」
「ああ、はい。その通りです。これについてはまだ調査せねばならないので、保留するしかありません。それとは別に試しておきたいことがありまして。前にホランド様のためにハンカチを何枚かヘレナ様に作って頂きましたよね」
「はい。イチイと藍で染色した糸を使ってイニシャルを刺繍しただけですが……」
布はラッセル商会から取り寄せた少し上等な木綿。
四隅を縫った糸も同じく、なんら特別の物ではない。
「それも十分効果があったと思われます。どうやらホランド様はアビゲイル邸でも常にお持ちだったのです」
クラークが仕立屋からの貰い物と言ってホランドに渡していたハンカチ。
彼が使うかどうかはわからなかった。
「……よくは分かりませんが、ちょっと加護を願って刺繍しただけでそれなりに意味があったということなのでしょうか」
「はい。僕たちはそう思っています。なので、今のうちにちょっと仕込んでみませんか?」
ハーンはヘレナに向かって提案する。
「なんでしょうか。私に出来ることでしたら……」
親しくなった人たちのために何かしたいという気持ちもあるが、何よりもこの敷地で決定権を持つリチャードを動かすことができれば、それは自分の状況も改善されるだろう。
過ごしやすくなるに越したことはない。
ヘレナは素早く考えを巡らせた。
「はい。ただ、徹夜はやめてくださいね。出来る範囲でお願いしたいのです」
私も命が惜しいので。
ハーンはキラキラとまばゆい笑みを振りまきながら言葉をつづける。
「クラーク様とコール様がこっそりとリチャード様の衣類をこちらへ移し、使用頻度の高い物から順番に、ヘレナ様に縫い直してもらってはいかがかなと」
「縫い……直す」
「ええ。ただし、周囲に感づかれないように、ほんの一部だけです。もともと完成しているものの糸をほどいて縫って頂いたら、なんらかの護りになるのではないかと僕は思います」
「うーん。例えば、ボタンを付け直すとか、でしょうか?」
こてんと首をかしげるヘレナに、ハーンはこくこくと小刻みに首を上下する。
「そうそう。そんな感じです」
「わかりました。やりましょう。今すぐに」
ヘレナの即決に、三人はそれぞれ何とも言えない顔をする。
「クラーク様。リチャード様の下着を全部持ってきていただけますか?」
「は? 下着?」
クラークは思わず真顔で問い返す。
「ええ。下着です。これが一番でしょう」
ヘレナはいつになく目に力を入れてクラークを見つめ、力説した。
「日常的で、使用頻度が高く、しかも目につかない。いい感じではありませんか?」
「ああ、肌に近いのもイイ感じですね~」
ハーンの合の手に、ヘレナのやる気は加速する。
「私、下着を縫うの、得意なのです。最初の下請けはそこからだったので!」
昔取った杵柄である。
速さには自信がある。
「あれ? 下着の下請けはラッセルじゃないね? アタシ知らなかったんだけど」
ラッセル商会経由の依頼ではミカが材料を届けることが多いため、ヘレナの仕事をあらかた把握していた。
下着を縫わせるなんて、記憶にないし、テリーたちがさせるはずもない。
「ええ。母の具合が悪くなったころに通いの家政婦さんが仲介してくれて。しばらく内緒でしたね」
「それって、十二歳からってことかい」
「ああ、それよりちょっと前ですね。手の込んだ仕事が入るようになるまで受けていたので四~五年ってところでしょうか。途中から娼館の下着も受けました。細工の細かいものの練習になって良かったです」
「なんてこったい……」
ミカが珍しく動揺して、頭を抱えた。
「いや、それよりも。いや、よくないんだけど。あのさ……。男性用の下着だけど……。あんたはいいのか?」
クラークは遠慮がちに疑問を投げかけたが、こくこくとヘレナは頷く。
「仕事は男性用ももちろん経験ありますよ。そもそも、家が傾いてから父とクリスの下着は全部私が縫っていましたし。問題なしです」
「まあ、そうだね……。今回、『夫』の下着だしねえ」
少し遠い目になるミカに、ヘレナは軽く吹きだす。
「ああ、そういえば、リチャード様は夫ということになっていたのでした。これって、妻としての初仕事ですね?」
ヘレナの中で、よくわからないがわくわくしてくる何かが生まれた。
「うん。楽しそうなお仕事です。なんだか、すごくやる気がわいてきました」
ぐっと二つの拳を握りしめ、じっと見つめる。
また、何かを為せるかもしれないのが嬉しくて、楽しい。
「明日の朝までにぜひ全部やっつけたいので……。クラーク様、コール様」
両手の拳を握りしめたまま二人をちらちらと見つめると、なぜか彼らはしょっぱい顔をしていた。
「……ええ。あの、……はい。とってきます。リチャード様の下着……」
なぜか、しどろもどろなコール。
「ああ、すぐには心の整理つかないだろうから、とりあえずデザートとコーヒーはゆっくりおあがりよ、お二人さん」
ミカはどういうわけか、気の毒そうな顔で立ち上がる。
「おかわりも、あるよ」
その後ろをクラークが追いかける。
「すまないが、ジンジャークッキーまだあるか?」
「あるよ。ついてくるかい?」
「あ、私もお手伝いします」
カクカクと微妙な動きでコールもミカについていってしまった。
「ん? どうしたのでしょう、みなさん」
カップに残ったコーヒーに口をつけ、ヘレナは首をかしげる。
「そうですねえ……。お二人は意外と純だったというかなんというか……」
ハーンの返事に、なぜか暖炉の前のパールが「ふー」と長いため息をついた。
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