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とうもろこし
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とうもろこしの季節がやってきた。
ひゃっほうと空に向かって叫びたい。
今住んでいるところでよく利用する二軒のスーパーはどちらも産直野菜コーナーが豊富で、お手頃価格だ。
しかも、採れたてのトウモロコシが一本百円程度で手に入る。
天国か、ここは。
そのようなわけで、コンビニスイーツ買うより安いしこれは野菜だから身体にも良いはずと言い訳してせっせと食べている。
あの、均一に並ぶつやつやとした金色の実の美しさと茹でた時に沸き上がる甘い香り。
そして列に沿って前歯を立てた瞬間の快感、そして綺麗に粒を噛みとり、綺麗な畝が出来たのを見た時の達成感がたまらない。
もちろん、咀嚼している最中に口にふわりと広がる何とも言えない果汁の甘さよ。
なんて恐ろしい野菜だろう。
こんなに私の心をつかんで離さないなんて。
ちなみにもちきびも大好きで、粒の色の配色におきる偶然の美しさに、毎回画像を撮って愛でてしまうくらい惚れこんでいる。
「そんなに好きなんだ…」
私の執着ぶりに夫は若干引き気味だ。
旬のとうもろこし沼の凄さがわからないなんてなんてかわいそう…と、優越感に浸りながらひたすらばりばりと貪る日々が続く。
ちなみに加熱方法は、昔はフライパンに水を少し張って茹でていたけれど、今は電子レンジ一択だ。
十分美味しいし、ものぐさな私にぴったりなので。
皮とひげを取って、ざっと水で洗い、一つまみに満たない塩をこすりつけてラップにきっちり包んで皿に乗せ、まずは一分半、ひっくり返してまた一分半。
水蒸気を上げ始めていたらだいたいゆで上がっていると思う。
色を見てまだ火が通っていない部分が多いなと思えば角度を変えて更に数十秒加熱するのもよし、時間に余裕があればラップを解かずにそのまま放置すると自然に丁度良い加減となる。
一本食べれば結構お腹が満たされるので、昼ごはんなどにお勧めです。
ところで、子どもの頃に友達の習い事が終わるのを待合室で待っている時に手に取った本があり、読んでいるうちにとうもろこしの始まりの物語に目がとまった。
ただ、流し読みだったしその後二度とその本に巡り合わなかったため、記憶が曖昧だけれど、一つだけ印象に残っているのは、とうもろこしのひげは金髪の名残りだと言うことだ。
話としては伝承もので時折見かける兄弟殺し。
優秀で美しい兄に嫉妬した弟が一緒に生きていくのが辛くて思わず殺してしまうのだ。
兄の死体を土に埋めるとそこから植物が生え、実をつけた。
その実の先端からのぞく金色の糸のようなものが、兄の金髪の証だというしめくくりだったと思うのだが。
夢か幻か。
大人になってからこの話が載っていた本を探すのだがいまだに見つからない。
トウモロコシ発祥のアメリカ系の伝承で見当たらないということは、ますます夢だったのかと思い始めてしまう。
探しているうちに見つけたのは、福音館書店から出ている絵本『とうもろこしおばあさん』だ。
あらすじとしては、だいたい以下の通りだと思う。
今手元にないので、多少の記憶違いはご勘弁願いたい。
あるところに放浪者のおばあさんがいた。
風貌の怪しさからあちこちで一晩泊めてくれと頼むがどこも受け入れてくれず、それを憐れんだひとりの優しい若者が自分のテントへ招き入れた。
すると大人たちが農作業へ出かけている間に、おばあさんが子どもたちに不思議なパンを振舞っていた。
とうもろこしのパンだった。
それはとてもおいしく、みんなで夢中になって食べるが、若者はふととうもろこしの出どころが気になりだし、ある日農作業へ行くふりをしてこっそりテントへ戻りおばあさんの様子を見守った。
するとおばあさんは衣服をまくり上げ、太ももをごりごりと搔き始めた。
床にごろごろと転がり落ちるとうもろこしの粒。
衝撃を受けた若者は、パンを食べられなくなった。
それを見て、おばあさんは若者に声をかけた。
お前はあれを見てしまったのだねとあっさり言った後、自分を殺して髪を掴んで地面の上で引きずり回せと告げる。
若者は言われた通りに行うと、おばあさんを引きずった土地にたくさんのトウモロコシが実った。
インディアンの民話で、挿絵も独特なので一度読んだら忘れられない。
太ももを掻くおばあさん。
パンが食べられない若者をじっと見つめるおばあさん。
殺されて赤茶色の地面の上を引きずられていくおばあさん。
どれも衝撃的で、その辺の怪談話よりずっと怖いと思う。
結果として殺して埋めたら実るという点だけが同じなのだけど、幻の兄弟殺しの物語の挿絵はどちらかと言うと小綺麗な感じで、『とうもろこしおばあさん』は土や草の匂いまで感じられるような濃厚な世界を秋野亥左牟さんが描いている。
こうなると印象深い物語は当然『とうもろこしおばあさん』の方になるだろう。
もし、とうもろこしおばあさんが若くて美しい女性だったなら。
若者はパンが食べられなくなったりしなかったんじゃないかな。
だから物語上、あえてのおばあさん。
年を取るとどうしてもそんな不埒な考えが頭に浮かんでしまう。
すっかり俗世にまみれたものだ。
いや、修行を積んであと一歩のところで仙人になれるところだったというのに、川で洗濯している若い娘の太ももに目がくらんで空から落っこちたという、由緒正しき久米仙人の説話が日本にはあるじゃないか。
私は決して悪くない。
ちなみに、その久米仙人。
なんとその洗濯娘を妻に出来たそうな。
世の中何が起こるか解らないものだ。
まあそのようなわけで。
あの絵本の挿絵と物語を何度も何度も脳内で反芻しながら、今日もごりごりととうもろこしにかぶりつく。
ああ、なんて美味しいのだろう。
夏の暑さは苦手だけど、トウモロコシが存在する限り、私は夏の太陽を許す。
ひゃっほうと空に向かって叫びたい。
今住んでいるところでよく利用する二軒のスーパーはどちらも産直野菜コーナーが豊富で、お手頃価格だ。
しかも、採れたてのトウモロコシが一本百円程度で手に入る。
天国か、ここは。
そのようなわけで、コンビニスイーツ買うより安いしこれは野菜だから身体にも良いはずと言い訳してせっせと食べている。
あの、均一に並ぶつやつやとした金色の実の美しさと茹でた時に沸き上がる甘い香り。
そして列に沿って前歯を立てた瞬間の快感、そして綺麗に粒を噛みとり、綺麗な畝が出来たのを見た時の達成感がたまらない。
もちろん、咀嚼している最中に口にふわりと広がる何とも言えない果汁の甘さよ。
なんて恐ろしい野菜だろう。
こんなに私の心をつかんで離さないなんて。
ちなみにもちきびも大好きで、粒の色の配色におきる偶然の美しさに、毎回画像を撮って愛でてしまうくらい惚れこんでいる。
「そんなに好きなんだ…」
私の執着ぶりに夫は若干引き気味だ。
旬のとうもろこし沼の凄さがわからないなんてなんてかわいそう…と、優越感に浸りながらひたすらばりばりと貪る日々が続く。
ちなみに加熱方法は、昔はフライパンに水を少し張って茹でていたけれど、今は電子レンジ一択だ。
十分美味しいし、ものぐさな私にぴったりなので。
皮とひげを取って、ざっと水で洗い、一つまみに満たない塩をこすりつけてラップにきっちり包んで皿に乗せ、まずは一分半、ひっくり返してまた一分半。
水蒸気を上げ始めていたらだいたいゆで上がっていると思う。
色を見てまだ火が通っていない部分が多いなと思えば角度を変えて更に数十秒加熱するのもよし、時間に余裕があればラップを解かずにそのまま放置すると自然に丁度良い加減となる。
一本食べれば結構お腹が満たされるので、昼ごはんなどにお勧めです。
ところで、子どもの頃に友達の習い事が終わるのを待合室で待っている時に手に取った本があり、読んでいるうちにとうもろこしの始まりの物語に目がとまった。
ただ、流し読みだったしその後二度とその本に巡り合わなかったため、記憶が曖昧だけれど、一つだけ印象に残っているのは、とうもろこしのひげは金髪の名残りだと言うことだ。
話としては伝承もので時折見かける兄弟殺し。
優秀で美しい兄に嫉妬した弟が一緒に生きていくのが辛くて思わず殺してしまうのだ。
兄の死体を土に埋めるとそこから植物が生え、実をつけた。
その実の先端からのぞく金色の糸のようなものが、兄の金髪の証だというしめくくりだったと思うのだが。
夢か幻か。
大人になってからこの話が載っていた本を探すのだがいまだに見つからない。
トウモロコシ発祥のアメリカ系の伝承で見当たらないということは、ますます夢だったのかと思い始めてしまう。
探しているうちに見つけたのは、福音館書店から出ている絵本『とうもろこしおばあさん』だ。
あらすじとしては、だいたい以下の通りだと思う。
今手元にないので、多少の記憶違いはご勘弁願いたい。
あるところに放浪者のおばあさんがいた。
風貌の怪しさからあちこちで一晩泊めてくれと頼むがどこも受け入れてくれず、それを憐れんだひとりの優しい若者が自分のテントへ招き入れた。
すると大人たちが農作業へ出かけている間に、おばあさんが子どもたちに不思議なパンを振舞っていた。
とうもろこしのパンだった。
それはとてもおいしく、みんなで夢中になって食べるが、若者はふととうもろこしの出どころが気になりだし、ある日農作業へ行くふりをしてこっそりテントへ戻りおばあさんの様子を見守った。
するとおばあさんは衣服をまくり上げ、太ももをごりごりと搔き始めた。
床にごろごろと転がり落ちるとうもろこしの粒。
衝撃を受けた若者は、パンを食べられなくなった。
それを見て、おばあさんは若者に声をかけた。
お前はあれを見てしまったのだねとあっさり言った後、自分を殺して髪を掴んで地面の上で引きずり回せと告げる。
若者は言われた通りに行うと、おばあさんを引きずった土地にたくさんのトウモロコシが実った。
インディアンの民話で、挿絵も独特なので一度読んだら忘れられない。
太ももを掻くおばあさん。
パンが食べられない若者をじっと見つめるおばあさん。
殺されて赤茶色の地面の上を引きずられていくおばあさん。
どれも衝撃的で、その辺の怪談話よりずっと怖いと思う。
結果として殺して埋めたら実るという点だけが同じなのだけど、幻の兄弟殺しの物語の挿絵はどちらかと言うと小綺麗な感じで、『とうもろこしおばあさん』は土や草の匂いまで感じられるような濃厚な世界を秋野亥左牟さんが描いている。
こうなると印象深い物語は当然『とうもろこしおばあさん』の方になるだろう。
もし、とうもろこしおばあさんが若くて美しい女性だったなら。
若者はパンが食べられなくなったりしなかったんじゃないかな。
だから物語上、あえてのおばあさん。
年を取るとどうしてもそんな不埒な考えが頭に浮かんでしまう。
すっかり俗世にまみれたものだ。
いや、修行を積んであと一歩のところで仙人になれるところだったというのに、川で洗濯している若い娘の太ももに目がくらんで空から落っこちたという、由緒正しき久米仙人の説話が日本にはあるじゃないか。
私は決して悪くない。
ちなみに、その久米仙人。
なんとその洗濯娘を妻に出来たそうな。
世の中何が起こるか解らないものだ。
まあそのようなわけで。
あの絵本の挿絵と物語を何度も何度も脳内で反芻しながら、今日もごりごりととうもろこしにかぶりつく。
ああ、なんて美味しいのだろう。
夏の暑さは苦手だけど、トウモロコシが存在する限り、私は夏の太陽を許す。
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