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【こぼれ話】それぞれの、あんなこと、こんなこと

7.【七瀬・社会人二年目/秋】ちんちんかもかも ③

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「七瀬かわいい。大丈夫だから力抜いて?」

 耳の中に吹き込むように、俺の大好きな低い声で有川がささやく。
 なだめてるつもりなのか後頭部を撫でられて、顔だけを上に向けるとそっとキスされた。左ももにしがみついてる俺の手を、大きな手が上から優しく包み込む。
 つか、こんなしぐさや口調なのに、ギラギラした目で牙を見せられると「本当は気持ちいい」って認めてしまいそうになるのはなんでなんだ……。
 ──と、うっかり気が緩んだ隙に、しっぽの根元を少し強く引かれた。

「あっ!」

 一番外側にある玉が尻の穴からこぼれ出る。とっさに伸ばそうとした手は、有川にしっかり捕獲されててびくともしない。
 嘘つき! 全っ然大丈夫じゃないじゃん!

「や……っあ、あ!」

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!! 穴から出たとこ絶対井田と宇山に見られた! つか、二人とも現在進行形で尻の穴いじりながら何かぐちゃぐちゃ言ってるし! つか、ちんこの先っぽから何かとろとろ出てくるし!
 玉がこれ以上出ないように必死で穴を締めながら、有川の左ももにぐりぐりと額をこすり付けると、しっぽを持ってない方の手であやすように背中を撫でられた。

「ぅう~……。くっそ、だまされた」
「だましてないって。これ入ったままだとちんこ挿れらんないけどいいの?」
「そう、だけど……」

 そんなこと言ったって、こんなのあと六個とか無理だ。つか、心なしか声が笑ってるし、優しいふりして有川が変態だ。いや、知ってたけども!

「恥ずかしい? 七瀬かわいい。大丈夫、すぐ済むからまかせて?」
「え、わ……っ! んっ、んんんっ」

 安心する間もなく、井田と宇山に尻たぶどころか両足を開かれて、ひとつ、またひとつ。穴をきつく閉じるたびに、次の玉を有川に引っ張り出された。
 有川が食物繊維の多い飯とか食わせてくれるおかげで、同棲を始めてからずっと快便だし。浣腸しなくても、中を何度かすすぐだけで準備完了する便利な身体だし。今だってちゃんと中まできれいにしてるし。だから粗相なんてするはずもないんだけど!
 でも、次の玉が中からまたせり上がってくると、有川に強制的に排泄させられてるみたいな感覚でぞくぞくと肌が泡立つ。

「ぅ……っ、く」

 やばいやばいやばい。こんなんでイったら俺変態じゃん!

「っ! っ!」
「あっ、今ちょっと中見えた。あー、俺もう挿れたい。すげえ潤んで赤くてエロいんだけど。俺が最初でいい?」

 誰に向かって言ってんのか、いつもの宇山の実況が、自分の心臓の音にまぎれてどこか遠くに聞こえて──。
 最後の四個が一気に引き抜かれると、三人が見ている前で、俺はちんこ汁も吐き出さずにあっさりとイってしまった。

 ◇

「んっ、んん」

 尻を後ろに突き出して目の前の首に抱きつくと、俺の腰を抱く有川の腕にも力が入った。
 結局、しっぽ以外は『黒猫』装備のまま膝立ちになった俺は、あぐらを組んだ有川につかまって、後ろから井田と宇山に交替でちんこを突っ込まれている。
 とはいえ、俺の感覚では一人が一分やってるかどうかくらいのペースだ。一人一回までのルールはどこ行ったんだって思うけど、こいつらのはちんこ汁が出るまで、を指すらしい。後ろでわちゃわちゃ言いながら、相変わらず俺を無視して話が進む。
 まあ、ちゃんとゴムさえ着けてくれりゃ何でもいい。いっぱい輪姦まわされてるみたいでなんだかお得だし、二人が気持ちよくなるための道具おもちゃになったみたいで興奮するし。それに、さっきアナルビーズなんかでイってしまった手前、俺の反応とかを気にせずに勝手にやってくれるのは気が楽だ。
 有川は、二人が入れ替わる時に俺がちょっとだけ腕を緩めると、そのたびに俺の本物の耳にキスしたり後頭部を撫でたりとご機嫌取りに忙しい。

「なあなあ七瀬ー。今どっちのちんこが入ってるか分かる?」
「ん、井田」
「当たりー。じゃあ……、今は?」
「宇山……っ」

 井田は挿れながら真後ろで聞くから分かるし、宇山はシャツは脱いでても狼のしっぽがふさふさと俺のタマに当たるから分かる。ちんこのサイズとか動きの癖とか以前の問題なんだけど、これは井田が馬鹿なのか俺が馬鹿にされてんのかどっちだ。

「あ、宇山ストップストップ。しっぽでバレてる」
「あっ、それ引っ張んの駄目だってぇ。わ、ちょ、井田もう交替!」

 あ、井田が馬鹿なだけだった。とうとうしっぽをつかまれたらしい宇山のちんこが、俺の中でぐっと角度を変えてから出ていく。
 その後は、撹乱かくらんしてるつもりなのか、宇山が二回続いたり、井田が三回続いたりの繰り返しで。たまにイきそうになりながらも何度か二人の名前を言い当てたところで、それまで黙って俺の腰を抱いていた有川が俺を呼んだ。

「七瀬」

 静かだけど、はっきりと俺の意識を引き戻す声。
 後ろから井田に小刻みに突かれながら、目の前の肩につかまって身体を起こしてみると、切れ長の有川の目が射るように俺を見ていた。

「七瀬。そんなのいいから、俺の名前だけ呼んで」

 ……何だそれ。
 笑ってるような、怒ってるような、口の端を上げただけの笑み。のぞく『吸血鬼』の牙で喰われそうだ。
 やばい。かっこいい。嬉しい。好きだ。
 他のちんこで気持ちよくなるのはいいのに、他の名前を呼ぶのは駄目とか、そんなの急にかわいすぎだろ。
 有川が見せる独占欲に胸がギュってなって、ないまぜになった気持ちが胸から尾骨に向かって駆け抜ける。こんなの、もうそれだけでうっかりイきそうだ。
 唇が触れるだけのキスがもどかしい。舌先だけのキスがもどかしい。今すぐに有川を確かめたいのに。

「有川ぁ、ちんこ。ちんこ舐めたい」
「ちょっとだけな」
「ん」

 ちょうど交替のタイミングだったのか話を聞いてたのか、浅い所にいた井田が一旦俺からちんこを抜いた。
 その隙に俺は、やたら謎のジッパーと縫い目が多い有川のブラックデニムに手をかける。はやる気持ちを抑えきれずにブリーフごと下ろそうとしたら、有川は口の中で笑いながら腰を浮かせて、自分でその全部をまとめて脱ぎ捨てた。
 それから、金具の多いシャツとカットソーも手早く脱いで全裸になると、ヘッドボードを背にして両膝を立てて座る。俺はその股の間に四つんばいになって、まずは割れた腹筋に舌を這わせた。くすぐったそうに有川の筋肉が揺れる。

「俺の腹筋好き?」
「ん、好き。かっこいい」

 そのまま有川の腹に吸い付きながら、少しずつ下に滑り降りて。

「七瀬……っ?」

 舌先で先走りを舐め取ってすぐに深くちんこをくわえると、有川が焦ったような声を上げた。心配されるような無理なんて全然してねえのに。こんなのは、太くて硬い感触を確かめたいだけの俺の自己満足なのに。
 少し遅れて、後ろから誰かがちんこを奥まで突っ込んできた。身体の中をまっすぐにされるようなこの感じは宇山だ。
 上も下もいっぱいとか、俺マジでエロい。
 そう思った途端、身体の中を一気に快感が駆け抜けた。ちんこをくわえたまま声も出さずにびくびく跳ねる俺の腰を、宇山が慌てて押さえ付ける。

「えっ⁉ ちょ、もうイってる。俺まだ何もしてないんだけど」
「うわ、マジか。じゃあ宇山も七瀬で一回イっとく? それか、また交替する?」

 ガクガクして崩れそうになる膝と肘に気合を入れながら、余韻を逃がすように、ふ、ふ、と鼻だけで息をする。後ろで二人がわちゃわちゃ言ってるのは気にせず、両手で握った有川のちんこから、歯が当たらないようにそっと口を離した。

「七瀬、苦しくなかった?」
「ん」

 両肘をついたままうつむいている俺の口元を、有川が気遣うようにぬぐって頬を撫でる。
 小さくうなずいて返事すると、安心したような吐息が上から聞こえて、胸を覆っていたチューブトップが乳首のすぐ下までずらされた。唾液を絡めた節くれ立った指先が、手探りで乳首の上に優しく円をえがく。
 やばい、これだけでまたイきそうなんだけど。
 俺に当てさせる遊びはもうやめたのか、少し腰を引いた宇山のちんこの横から、井田の指がちょっとずつ差し込まれる。

「ぁ、んん」
「あーっ、やばい井田。これ絵面えづらがほんとエロいんだってば。駄目っ、あ、すぐイくかも」
「七瀬、気持ちいい?」
「んぅ、気持ちいい。んっ、有川……っ、あっ、あ、あ」

 宇山が本気で腰を振り始めて、合わせるように有川に乳首を転がされた俺は、また簡単にイってしまった。つか、予告どおりに宇山もすぐイったけど、あれは俺の穴じゃなくて井田の指にダメ押しされてた気がするな。
 今度こそ身体を支えきれなくなった俺がその場につぶれると、井田が間を置かずに尻の上にまたがってきた。余計なことを考える余裕はあってもすっかり敏感になっていた俺の身体は、ちょっとカリが通っただけでまたあっさりと中イキしてしまった。
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