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あれからの、あんなこと、こんなこと

12.井田が、あんなこと、こんなこと ③

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 ◇

 結局、俺は有川のアドバイスに従ってしばらく宇山ちをしてみることにした。とはいっても、それぞれが七瀬とHする生活は変わらず、俺が宇山と一緒にはエロい遊びをしなくなっただけだ。毎日会ってはいるし、そこだけ見たら夏休みよりも前の関係に戻った感じに近い。
 それでも、そのまま半月が過ぎて、肉体的には七瀬で間に合ってるけど、もしかして宇山もそうなんじゃねえか、って精神的に焦りが出始めた十一月下旬。
 連休初日にイベント設営の単発バイトが雨で中止になった俺は、暇を持て余して有川にぼやくメッセージを送ったところで、なぜか部屋に呼び出された。

 俺たちには『七瀬とやるのは一日二人まで』っていう紳士協定がある。それを七瀬本人だけが知らない、ってことには最初から誰もツッコまない。知られたら多分「そんなん気にするとか馬鹿じゃねえの」ぐらいのこと言われそうだし、そしたら、七瀬の身体に負担をかけることが本意じゃなくても、誰も自制なんかできるわけがないし。
 それなのに、今日は俺抜きでやってるはずのそこに呼ばれてしまった。何があったか知らないけど、宇山断ちにそろそろ限界が来ていた俺は気持ちが浮き立って、まさかその宇山が俺のために準備して待ってるなんて思いもしなかった。



「え、ちょ、何これ」

 ドアを開けた有川に事情を聞いて慌てて部屋に駆け込むと、宇山が裸にロングカーデっていう謎の格好でベッドに横になっていた。一瞬思考停止した俺は「ああこれ、おととい一緒に出かけた時に買ってたやつだ」なんてどうでもいいことを思い出す。当の宇山はちょっとこっちを見た後、気まずそうに目をそらした。
 有川によるとこれは、七瀬が紳士協定とその実態を知って、宇山の初めてを見たがった結果らしい。もう一つの、っていうのは『七瀬を安心させるために井田おれが宇山ともやってると思わせとく』なんていう詭弁きべんの方だ。
 もし七瀬が聞いてたら「関係ねえ」って一蹴してそうな内容を、よく二人に押し通せたもんだと思ってた。だけど、そんなこじつけでも何か名目がなけりゃ、宇山は尻をいじらせてくれないだろうとも思ってた。のに。
 七瀬が見たいって言ったらやれるとか。今までの俺の苦労は一体何だったんだ……。
 その七瀬は、まだやった形跡もないのになぜか有川のスウェットに着替えた状態で、ベッドの横にもたれてくつろいでいる。脱力しながら思わずじとりと見たら「文句あんのか」とでも言いたげな表情かおをされたけど、今はそれどころじゃなかった。こんなかもねぎの据え膳をのがしたら次のチャンスがいつになるか分からない。
 そろそろとベッドに近づいてロングカーデの裾をめくると、軽く膝を曲げて横たわっている宇山の尻穴から、そこをふさぐように黒い吸盤がはみ出ていた。見慣れたいつものアナルプラグじゃない。はやる気持ちを抑えつつ、ベッドに乗り上げて宇山の尻たぶを開く。それから、そっとその吸盤をつかんで少しだけ引っ張ってみたら、ローションの糸を引きながら姿をのぞかせたのは、吸盤付きのディルドだった。

「……マジか」

 いや、これどう見ても七瀬のだろ。つか、なんでこれを渡したんだと思うくらいには太い。それが今、宇山の入り口を指三本分くらいに拡げている。予想以上だったそこにまた一瞬思考が止まりそうになったけど、俺は全体の形状と穴の具合を確認すべく、つかんだディルドを少しずつ慎重に引き出した。

「ちょ、ああっ」
「すげ、宇山のちんこガチガチ。こんなん入ってるから勃った? それとも、俺に挿れられるの待ち遠しくて勃った?」

 もし宇山が本気で嫌がるなら無理強いするつもりなんかない。焦るな焦るなと自分に言い聞かせながらも、うっかり素で言葉責めみたいに畳みかけると、胸元から上を真っ赤にした宇山が口をとがらせてうなる。

「うぅ……そんなん分かんないって」

 完全に引き抜くと、使ってたローションが中からこぽりとあふれ出た。すぐにぴたりと閉じた穴がひくついててエロい。思わず指でなぞると、やわらかくなったそこは抵抗もせず俺の指を三本も飲み込んで絡みついた。
 ……嘘だろ。指なんて今まで一本しか挿れたことねえのに。

「ん、ん」
「すげ。なあ、今日はいけそうじゃね?」

 いやもうこれどう考えてもちんこ突っ込む流れでしょ。

「ん、いいけど……。ほんと一回だけだから。あと、ゆっくりやって」

 マ ジ か !
 部屋にたどり着く前から半勃はんだちだった俺のちんこは、既に臨戦態勢にある。俺は手早く服を脱ぎ捨てると、ロングカーデを脱がせてあおむけにした宇山の膝を割り開いた。


「ぁあ、ぁっ、あ、あ」

 念願の宇山の尻の穴に、ゴムを着けた俺のちんこがゆっくりと埋まっていく。
 俺の一番太いとこが入り口を通っても、プラグを挿れてる時みたいに宇山のちんこがガチガチに勃起したままでほっとした。けど、よっぽど余裕がないのか、開きっぱなしの宇山の口からはよだれが止まらない。宇山の身体の両脇についた俺の腕の肘辺りに震える手でつかまって、文句を言ってる時ですら基本的にいつも笑ってる宇山が、俺のちんこが収まってくとこを潤んだ目でじっと見ている。

「あー……、すげ。マジで入った」

 何だこれ。胸が苦しい。動かなくてもすぐイきそう。
 奥までたどり着いてじっとしてると、俺の下で浅く息をしていた宇山が呼吸を整えながら尻に手を伸ばした。そろそろと、穴を拡げてる俺のちんこの根元を確認するようになぞる。

「はっ……入った。井田のっ、ここ、ほんとに井田の全部入ってる」

 いやほんと、何だろこれ。すげえ嬉しい。達成感なんて分かりやすい言葉じゃ説明のつかない気持ちで胸の中が満たされていく。七瀬が見たいならいくらでも見せてやる。俺のちんこが入った宇山を見せびらかしてやりたい。
 最初が未遂だったせいで執着してるんだと思ってた。逃げられるからつい追いかけてしまうんだと思ってた。とりあえず一回やれたら落ち着くだろうとか思ってたアホは誰だ。俺か。
 俺は理性を総動員して七瀬のアドバイスを思い出し、宇山の穴に慎重にちんこを出し入れする。宇山が痛くないように、俺の形を覚えさせるように、あと、少しでも長持ちするように。

「あっ、そこ、そこやばい。駄目気持ちいい、井田っ、これやばいって」

 余裕が出てきたのか、なぜか実況を続ける宇山になんだか胸が熱くなって、思わずその下唇に触れるだけのキスをした。びっくりした顔で宇山の実況が止まる。
 え、今俺何した? え、これファーストキスじゃね?
 いやいやいや、俺もびっくりした。だよな。俺ら結構いろんなことやってるけど、キスだけはしたことなかったし。
 多分これが、随分前に「俺をどーしたいわけ」って宇山に聞かれた答えのような気がした。だけど、今はそれを言葉にできそうになくて。

「すげ。お前最高」

 「なんで」なんて口を開かれる前に前立腺を重点的に攻め上げると、しばらくして、宇山は触ってもないちんこの先からちんこ汁をだらだらと吐き出した。

 ◇

 まあ、残念ながら世の中そんなにうまくいくはずがない。
 口癖のように無理だと繰り返す宇山への気持ちが別物に変わっても、季節が冬に変わっても、なんだかんだで俺は相変わらず宇山の尻を追いかけている。

 まさかこんな長期戦になるとは予想もしなかったけど、強情な宇山はトコロテンしたくらいで俺のものになってはくれない、と気付いたのは、あんな初Hを果たしたすぐ後の話だ。
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