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あれからの、あんなこと、こんなこと
9.七瀬に、あんなこと、こんなこと ③
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服を脱いで隣に寝た有川が、腕枕にした左手で俺の頭を撫でながら、深く舌を絡めてくる。右手の人さし指と中指は既に俺の穴に根元まで挿れられていて、じらすように中で優しくうごめく。唇を合わせ直すたびに、口の中で小さく「七瀬」と名前を呼ばれて、条件反射のように穴が締まった。
気持ちいい。なんで有川の機嫌が悪かったのかとか、正直もうどうでもいい。
有川の舌先が、俺の唇をぺろりと舐めて離れると、そのまま見せつけるように俺の視線の先で肌の上を滑った。それから、首筋や鎖骨、乳首の上をたどって、へそ、足の付け根に移動していく。
「えっ、ちょ、待って」
有川が、ゴムを外した俺のちんこを前触れなく口に含んだ。初めての熱と刺激に、うっかり口の中で暴発しそうになる。
「それ駄目っ、出る。放して」
ちんこをくわえたままの有川は、いつの間にか三本に増やしてた指で的確に前立腺を押し上げてくる。有川の薄い唇から俺の濃いピンク色の生ちんこが見え隠れして、駄目だと思うのに目が離せない。長めの黒い前髪が俺の腹をくすぐって、その隙間から切れ長の有川の目が俺を見つめ返した。
「や、だめ。なんで、ぁ、んん、ん、ん」
口を押さえて声は殺せてもちんこの方は我慢ができず、有川の口の中でちんこ汁がほとばしる。有川は前立腺を押し上げて残りまで優しく吸い取ると、それをティッシュの上に出して広げて見せた。
「ほら、七瀬。こんなにいっぱい出た」
「な、なんで……っ。俺、駄目って」
「知ってる。七瀬は俺のちんこでイきたいんだよな?」
「……っ、るせ」
そうして正常位でいつもより性急に中に分け入ってきた有川は、その衝動が嘘だったかのように動きを止めて俺の身体を抱きしめた。それはもう、やってる時のいつもの有川で。
「七瀬」
俺が興奮するのを分かってて、耳元で繰り返し名前を呼びながら、有川がゆらゆらと腰を揺らし始めた。腕をほどいて頭を撫でたり乳首を転がしたりして、頬や首筋には優しく触れるようなキスをする。
口にキスしてもらえないのがもどかしい。俺は有川の頭を両側からわしづかみにすると、自分から唇を重ねた。それでもなぜか硬く閉じられたままの有川の唇を、意地になってこじ開けて、舌を絡めていく。だけど、いつもと違う味に俺が思わず顔をしかめたのを見て、有川が口元を緩めて苦笑した。
「七瀬、さっき俺の口に出したの忘れた?」
……忘れてた。けど。
「意外と平気」
「だな。さらっとしてて思ったほど味しなかったし」
「ん」
「……じゃあ七瀬、いっぱいキスしようか」
そっと下唇に吸い付かれたと思ったら、次の瞬間には乱暴なくらいに深く深く口づけられる。
この舌で俺のちんこを舐めたとか信じられない。有川の首に腕をまわしてしがみつくと、舌の動きは尻の中のちんこと連動して激しさを増す。それでも気持ちいいだけでどこにも痛いとこなんてなくて、安心しきった俺は有川に身をまかせた。
有川とこうやってるといつも、抱かれてる、って気分になってしまう。もしかしてこれってセックスなんじゃねえの、って勘違いしそうになる。でも今だけならそれでもいっか、なんてとろけかけた俺の耳元で、激しく腰を振りながら有川が声を絞り出すように言った。
「七瀬っ、もう俺のいないとこで他の奴に抱かれたりすんなよ」
……抱かれるって何だ、抱かれるって。だからそんなのおかしいだろ。それじゃまるで、有川までこれをセックスだと思ってるみたいだ。俺たちは男同士で、これはお互いの身体を使ったオナニーとアナニーのはずなのに。
けど、考えるのを完全に放棄した俺は、有川にすがりついて揺さぶられるままに、何度もこくこくとうなずいた。
いやもう、有川が至れり尽くせりですごい。中出しされた俺の尻には応急処置的にティッシュが多めに挟まれてるし、俺が自分で腹の上にまき散らしたちんこ汁は丁寧に有川に拭われている。なぜかもう甘い空気はどこにもなくて普通の世話焼きモードだけど。つかこいつ、こういうのどこで切り替えてるんだろ。
「……学生証、大丈夫だった?」
ぼんやりしたまま動けない俺は、身体を拭かれる刺激でまたやりたくなる気持ちをごまかそうと、なんとなく思い立った話題を振ってみた。
「ん? ああ、あれ学内の拾得物で届いてた」
「再発行とかは? 二千円かかるって」
「大丈夫、教室ですぐ拾われてたらしいし。取り扱いに気を付けろって厳重注意だけ」
「そっか。よかったな」
「なに。心配してくれてたとか?」
した。心配は、まあ一応した。けど今まで忘れてましたとは言えない。からかうような口調の有川に、ごまかし半分に俺も同じ調子で返す。
「おー、わざわざサイト調べたわ」
「え、マジで?」
有川の手とにやにやが止まる。何だよそんなに意外かよ。わざとらしくにらみつけて抗議すると、急に前髪の生え際辺りを指先でわしわしとかき回された。
「ちょっ、何だよっ」
「わり。……先シャワー浴びるけど、お前も落ち着いたら早めに中の出しとけよ?」
もたもたと髪を手ぐしで直しながら見上げると、ベッドから立ち上がって背中を向けた有川の耳が赤い。
……え、何それ。
有川は俺と違って冷静だし切り替えもできるし、勘違いとかもしないはずなのに。前からずっと思ってるけど、有川はその気になったら絶対モテる。確実にモテる。そんで、どうせ、彼女でもできたらすぐにこれはただの性欲だったってはっきりするはずなのに。
そのはずなのに……いや、そのはずだから、残念ながら俺は「これはただのオナニーだぞ」って、少なくとも今は思い出させてやれそうにない。
有川が引き戸の向こうに消えたのをしばらく眺めていた俺は、そろそろトイレ行かなきゃまずいかなと思いながら、尻に挟んだティッシュを押さえて身体を起こした。
と、いつの間にか風呂から出てしっかり身支度を整えた状態で、ローテーブルに頬杖をついていた宇山と目が合った。
「えー……」
これ、デジャヴュしか感じねえな。
え。マジか。いつからそこにいたんだよ! いやいやいやいや、有川が風呂行ったんだから、少なくともそれより前からか!
有川と二人きりみたいな気分になってて、完全に油断してた。
え、俺何かしたか? 変なこと口走ってないよな? つかこいつは空気読んで席外すとかそういう気遣いはできねーのかな!?
俺が言いたいことでも分かったのか、宇山は居心地悪そうに目をそらす。それから、両手で顔を覆ってため息をつくと、何やらもごもごとつぶやいた。
「いやもう、こんなん俺に求められても無理だって……」
何だそりゃ。そういえばさっきも相談っぽいこと言ってた気がする。やっぱり井田とうまくいってないのかもな。やる気があるならまあ頑張って開発してくれとしか言えないけど。俺はもう本格的にこの先おもちゃとか使える気がしないし、どうしてもって井田が泣いて頼むなら、他のおすすめも譲ってやらないこともない。
◇
とかなんとか俺なりに心配してやったのに。
井田のちんこであっさりトコロテンする宇山を目撃するのは、一か月も経たないある日の話。
気持ちいい。なんで有川の機嫌が悪かったのかとか、正直もうどうでもいい。
有川の舌先が、俺の唇をぺろりと舐めて離れると、そのまま見せつけるように俺の視線の先で肌の上を滑った。それから、首筋や鎖骨、乳首の上をたどって、へそ、足の付け根に移動していく。
「えっ、ちょ、待って」
有川が、ゴムを外した俺のちんこを前触れなく口に含んだ。初めての熱と刺激に、うっかり口の中で暴発しそうになる。
「それ駄目っ、出る。放して」
ちんこをくわえたままの有川は、いつの間にか三本に増やしてた指で的確に前立腺を押し上げてくる。有川の薄い唇から俺の濃いピンク色の生ちんこが見え隠れして、駄目だと思うのに目が離せない。長めの黒い前髪が俺の腹をくすぐって、その隙間から切れ長の有川の目が俺を見つめ返した。
「や、だめ。なんで、ぁ、んん、ん、ん」
口を押さえて声は殺せてもちんこの方は我慢ができず、有川の口の中でちんこ汁がほとばしる。有川は前立腺を押し上げて残りまで優しく吸い取ると、それをティッシュの上に出して広げて見せた。
「ほら、七瀬。こんなにいっぱい出た」
「な、なんで……っ。俺、駄目って」
「知ってる。七瀬は俺のちんこでイきたいんだよな?」
「……っ、るせ」
そうして正常位でいつもより性急に中に分け入ってきた有川は、その衝動が嘘だったかのように動きを止めて俺の身体を抱きしめた。それはもう、やってる時のいつもの有川で。
「七瀬」
俺が興奮するのを分かってて、耳元で繰り返し名前を呼びながら、有川がゆらゆらと腰を揺らし始めた。腕をほどいて頭を撫でたり乳首を転がしたりして、頬や首筋には優しく触れるようなキスをする。
口にキスしてもらえないのがもどかしい。俺は有川の頭を両側からわしづかみにすると、自分から唇を重ねた。それでもなぜか硬く閉じられたままの有川の唇を、意地になってこじ開けて、舌を絡めていく。だけど、いつもと違う味に俺が思わず顔をしかめたのを見て、有川が口元を緩めて苦笑した。
「七瀬、さっき俺の口に出したの忘れた?」
……忘れてた。けど。
「意外と平気」
「だな。さらっとしてて思ったほど味しなかったし」
「ん」
「……じゃあ七瀬、いっぱいキスしようか」
そっと下唇に吸い付かれたと思ったら、次の瞬間には乱暴なくらいに深く深く口づけられる。
この舌で俺のちんこを舐めたとか信じられない。有川の首に腕をまわしてしがみつくと、舌の動きは尻の中のちんこと連動して激しさを増す。それでも気持ちいいだけでどこにも痛いとこなんてなくて、安心しきった俺は有川に身をまかせた。
有川とこうやってるといつも、抱かれてる、って気分になってしまう。もしかしてこれってセックスなんじゃねえの、って勘違いしそうになる。でも今だけならそれでもいっか、なんてとろけかけた俺の耳元で、激しく腰を振りながら有川が声を絞り出すように言った。
「七瀬っ、もう俺のいないとこで他の奴に抱かれたりすんなよ」
……抱かれるって何だ、抱かれるって。だからそんなのおかしいだろ。それじゃまるで、有川までこれをセックスだと思ってるみたいだ。俺たちは男同士で、これはお互いの身体を使ったオナニーとアナニーのはずなのに。
けど、考えるのを完全に放棄した俺は、有川にすがりついて揺さぶられるままに、何度もこくこくとうなずいた。
いやもう、有川が至れり尽くせりですごい。中出しされた俺の尻には応急処置的にティッシュが多めに挟まれてるし、俺が自分で腹の上にまき散らしたちんこ汁は丁寧に有川に拭われている。なぜかもう甘い空気はどこにもなくて普通の世話焼きモードだけど。つかこいつ、こういうのどこで切り替えてるんだろ。
「……学生証、大丈夫だった?」
ぼんやりしたまま動けない俺は、身体を拭かれる刺激でまたやりたくなる気持ちをごまかそうと、なんとなく思い立った話題を振ってみた。
「ん? ああ、あれ学内の拾得物で届いてた」
「再発行とかは? 二千円かかるって」
「大丈夫、教室ですぐ拾われてたらしいし。取り扱いに気を付けろって厳重注意だけ」
「そっか。よかったな」
「なに。心配してくれてたとか?」
した。心配は、まあ一応した。けど今まで忘れてましたとは言えない。からかうような口調の有川に、ごまかし半分に俺も同じ調子で返す。
「おー、わざわざサイト調べたわ」
「え、マジで?」
有川の手とにやにやが止まる。何だよそんなに意外かよ。わざとらしくにらみつけて抗議すると、急に前髪の生え際辺りを指先でわしわしとかき回された。
「ちょっ、何だよっ」
「わり。……先シャワー浴びるけど、お前も落ち着いたら早めに中の出しとけよ?」
もたもたと髪を手ぐしで直しながら見上げると、ベッドから立ち上がって背中を向けた有川の耳が赤い。
……え、何それ。
有川は俺と違って冷静だし切り替えもできるし、勘違いとかもしないはずなのに。前からずっと思ってるけど、有川はその気になったら絶対モテる。確実にモテる。そんで、どうせ、彼女でもできたらすぐにこれはただの性欲だったってはっきりするはずなのに。
そのはずなのに……いや、そのはずだから、残念ながら俺は「これはただのオナニーだぞ」って、少なくとも今は思い出させてやれそうにない。
有川が引き戸の向こうに消えたのをしばらく眺めていた俺は、そろそろトイレ行かなきゃまずいかなと思いながら、尻に挟んだティッシュを押さえて身体を起こした。
と、いつの間にか風呂から出てしっかり身支度を整えた状態で、ローテーブルに頬杖をついていた宇山と目が合った。
「えー……」
これ、デジャヴュしか感じねえな。
え。マジか。いつからそこにいたんだよ! いやいやいやいや、有川が風呂行ったんだから、少なくともそれより前からか!
有川と二人きりみたいな気分になってて、完全に油断してた。
え、俺何かしたか? 変なこと口走ってないよな? つかこいつは空気読んで席外すとかそういう気遣いはできねーのかな!?
俺が言いたいことでも分かったのか、宇山は居心地悪そうに目をそらす。それから、両手で顔を覆ってため息をつくと、何やらもごもごとつぶやいた。
「いやもう、こんなん俺に求められても無理だって……」
何だそりゃ。そういえばさっきも相談っぽいこと言ってた気がする。やっぱり井田とうまくいってないのかもな。やる気があるならまあ頑張って開発してくれとしか言えないけど。俺はもう本格的にこの先おもちゃとか使える気がしないし、どうしてもって井田が泣いて頼むなら、他のおすすめも譲ってやらないこともない。
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とかなんとか俺なりに心配してやったのに。
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