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あれからの、あんなこと、こんなこと
6.七瀬と、あんなこと、こんなこと ②
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やっと奥まで突っ込まれて寝バックで単調に攻められ始めると、井田が動くたびに俺の裏筋がベッドに押し付けられた。やけに刺激が強い。そのせいで自分がゴムを着け忘れてたことに気付いたけど、先走りでシーツが汚れると思ったのは一瞬で、そんなことはすぐにどうでもよくなった。
たぐり寄せた有川の匂いがする枕に口元を押し付けてふうふうと息をしながら、有川のベッドに生のちんこをこすり付ける。視線だけでローテーブルの方をそっと盗み見ると、有川はまだうつむいてテキストを読んでいた。
今日はやりたくなんねーのかな。肉を打ち付ける音もエロい水音も、この狭い部屋の中で聞こえないはずがないのに。
手を伸ばせば届きそうな距離に有川がいるこの部屋で、その有川のベッドで他の奴にちんこを突っ込まれてる俺。そんな自分の姿を客観的に想像するとそれだけで滾る。だけど、本当は有川にもっと近くにいてほしい。あの日みたいに手を握って頭を撫でていてほしい。
今でも、初めての時のあの興奮が忘れられない。あれ以来一度もないけど、また三人に輪姦されたくて仕方ない。井田と宇山に作業みたいに挿れられながら、有川に優しくキスされて抱きしめられたい。
あー……、何だこの刷り込みみたいなの。どうしようもねーな。
そういえば、俺がいない時とか三人では何やってんだろ。有川だっていつもこんなふうに他のことに集中してるわけじゃないし、この遊びに参加する時は本気で参加してんのに。いや、てことは、井田とはありえないけど宇山とは……。
「あっ、こら。お前よそ見してんじゃねーよ。有川ーぁ、ちょっと手伝ってー」
「んー」
集中できてない俺に気付いた井田が声をかけると、有川は気のない返事をしながら読んでいたテキストにしおりを挟んだ。寝バックで突っ込まれたままの俺の両足が、間に割り込んできた井田の膝で左右に大きく開かれる。
「ちょ、井田」
「ほらほら、有川に見てもらえー」
見せつけるように、深く刺さってたちんこがカリの辺りまでゆっくりと引き抜かれた。強制的にあらわになった穴の周辺は、濡れてるせいかエアコンの風をやたら冷たく感じる。有川が自分の引き出しからローションを取り出してベッドの足元側に座ると、井田はそれを待ってたみたいにもう一度ちんこを俺の穴に押し挿れた。
「んんっ!」
有川の目の前には、井田のちんこでぎちぎちに拡げられる俺の穴がさらされてる、はず、で。
「あー、締まる締まる! もーほんとなんなのお前」
「あ、あ」
井田が小刻みにちんこを揺らしながら、後ろ手に俺の会陰を軽く撫で上げる。
「うあ、すげーぴくぴくしてる。有川が絡むと感度上がるとかマジで妬けるんですけどー」
「お前は宇山あえがせとけばいいじゃん」
「あー、それな」
待てコラ、お前らのデリカシーどこ行った! この状況で他の男の話とか!
思わず上体を起こしてできるだけ後ろを振り返ると、手のひらに出したローションをこすり合わせてあっためている有川が見えた。
いやそれ、何するつもり。
有川は井田の背後から俺と目を合わせると、口の端を上げて笑った。
「心配しなくても気持ちよくしてやるから」
「あ、ちょ、それマジで締めすぎ。もうちょっと力抜いてくんないと無理無理」
もう黙れこいつ。期待したのが有川にバレんだろーが!
後ろは気になるけど顔を見られたくはなくて、俺はもう一度つかみ直した枕に突っ伏した。
「ここにこんなん入るとか、ほんと見てなきゃ信じらんねーよな」
井田のちんこで伸ばされたしわの上を、人肌になったローションをまとった有川の指先がそっと往復する。めくれ上がったフチを撫でられるたび、ちんこと一緒に指まで中に入ってきそうな感覚に震えてしまう。
「ん、んぅ」
「ちょ、有川それ俺がやばい。ストップストップ」
「早漏かよ」
「ちげーし! こいつん中がよすぎんの」
「まあわかるけど」
「あー、マジで待って。俺ちょっと休憩」
なぜか井田が一旦ちんこを引き抜いて、俺と壁の間にあおむけに寝転がった。ちんこはまだガチガチで上を向いたままだ。
いや休憩とかいいから早くイけよ。
「七瀬、こっち」
一人だけ服を着たままの有川が狭いベッドの端の方に乗り上げて、中途半端で急に放置された俺の身体を抱き起こす。あぐらを組んだ有川の太ももをまたぐように向かい合わせに乗せられ、両肩に手を置いて身体を支えると、先走りが出てる俺のちんこが軽く握られた。
「っ!」
「七瀬、すげーあふれてる。井田のちんこ、そんなに気持ちよかった?」
「……ん、うっせ。触んな」
ローションを足した大きな手で先端を優しくこすられると、先走りと混じり合った水音がくちゅくちゅと響く。どうせなら有川のちんこでイきたいのに、腰が勝手にゆるく動いてしまう。
「なあ。それ、やだ」
「なんで? イきたくない? イかせてあげる」
下からのぞき込んでくる顔をにらみつけても、有川は嬉しそうに笑うだけだ。
「七瀬、どうしてほしいか言わないと分かんないよ?」
嘘つけ! 俺が尻でイきたいって知ってるくせに!
これはあれですよ。有川がよくやる『じらしプレイ』ですよ。抱き寄せた俺にだけ聞こえるくらいの声で、わざと名前呼びながらエロいことばっか言うやつ。なんかやたら落ち着いてて、もしかして男相手なら経験あったんじゃないかとか疑うレベルのやつ!
くそ。お前のちんこだって俺のタマの下でガチガチにブラックデニム押し上げてきてるくせに余裕ぶってんじゃねえよ。
有川はゆるく俺のちんこを握ったまま、正面からもう片方の手をちんこの下に潜らせた。ローションで濡れた節くれ立った大きな手が、タマと会陰をくすぐりながら通り過ぎて、尻の穴を撫で上げる。さっきまで井田のが入ってた穴の入り口は少し開いてて、指の腹で触れられただけで奥がうずいた。指もちんこも、早く有川のを挿れてほしくて仕方ない。
「……」
「七瀬? ほら、どうしてほしい?」
「ぁ……」
「ちょっとそこの二人ー、俺まだイってないんですけどー」
井田の割り込みでエロい空気が霧散した。有川も、切り替えるように普通の口調で井田に返す。
「あれ、お前やめたんじゃなかったっけ」
「休憩っつったじゃん。そいつの尻こっちにちょーだい」
起き上がった井田が、まだ完勃ち状態だったちんこの根元を支えて、俺ににじり寄りながら手で揺らして見せた。
「よかったね、七瀬。井田がまた挿れてくれるって」
「え」
お前のは? なんて聞く暇もなく、有川が尻の下を支えて俺の身体を持ち上げる。うまくバランスが取れず、崩れたあぐらの間に膝立ちになりながら慌てて目の前の首に腕をまわすと、そのまま有川が俺の尻を井田に向かって割り開いた。
「なに」
「七瀬、いい子だからそのままじっとしてて」
有川の中指が、小さく円を描くような動きで奥まで挿し込まれる。一番気持ちいいとこを触ってほしくて身じろぎすると、優しく穴の中を撫でまわす指がそこだけを避けるように逃げる。気が付いたら俺は、有川に抱きついたまま尻を後ろに突き出して腰を揺らしていた。
「はー、もう無理。お前らエロすぎだろ」
「え、ちょ、っあ」
有川の指が入ったままの穴に、井田のちんこの先端が当たる。井田は俺の腹に手をまわして背後から覆いかぶさると、ぴったりと俺の身体に貼り付くようにして、珍しくゆっくりとちんこを挿れてきた。
「や、ん、んんっ」
有川のちんこに慣れた俺の身体には、指一本分増えたところで太さ自体は何の問題もない。けど、入れ替わりに抜かれると思った有川の指がまだそこにあって、中を触られ続けて膝が崩れそうになる。有川の首にしがみつく腕もぶるぶる震えて、完全に体重を預けた形だ。
「七瀬、すごい締めつけてくる。こんなことされて興奮しちゃった?」
「知、らねっ」
「ちょ、締めすぎ締めすぎ! つか有川もそれストップ! これじゃ動かせねーって」
重ねていた上体を起こして少し身を引いた井田が、俺の尻たぶをつかんで穴の具合を確認している。有川は中に挿れたままで指の動きを止めると、首に抱きついている俺の背中をもう片方の手で抱き寄せた。
「わり。このまま支えとくから動いていいよ」
想定できる井田の動きに思わず身構えると、いつもの少し雑で単調な突き上げがすぐに始まった。
「あっ! っ! っ!」
「あ、すげー気持ちいい。これ俺すぐイくかも」
「七瀬」
密着した頭の横から骨伝導みたいに有川の声が響く。声を抑えながら有川の首筋にうずめていた顔をそろそろと上げると、唇が触れそうな至近距離でもう一度名前を呼ばれた。
「七瀬」
優しい口調からは想像できないくらいの、情欲をにじませた切れ長の目に射貫かれる。黒い前髪の向こうから見つめ返す有川の視線は捕食者のそれで。俺たちはどちらからともなく舌を絡め合った。
井田に腰をつかまれ少し強めに突き上げられながら、あえぎ声は有川に飲み込まれていく。有川にとっては全然気持ちよくないだろうけど、舌を深くからめ捕られるたびに『上も下も同時に犯される俺』を感じて、頭の奥がじんじんとしびれた。でも本当は、口の中も有川のちんこでいっぱいにされてみたい。……なんて、言い出せるわけもなく。
「んぁ、あ……っ」
一瞬だけ離れた唇と唇のわずかな隙間で、有川がそっとささやく。
「七瀬、かわいい」
再び噛みつくように深く口づけられ、俺は無意識に井田のちんこごと有川の中指を締め上げた。
ああ、何だこれ。どうしてくれんだ。ハマりすぎてマジで元に戻れる気がしねえ。
自分にこんな性癖があるなんて知らなかった。アナニーが趣味なのは、男同士の猥談でも簡単に口にできないことだっていう自覚ならあった。だけど、まさかこんな厄介な。
井田や宇山は初めて覚えたエロい遊びにのめり込んでるだけだし、有川も多分ノリで付き合ってるだけなのに。こいつらはそのうち飽きるかもしんないけど、俺だけは飽きる気がしないのに。
いやもう、これほんとどうしてくれんだよ。
◇
──とかなんとか、ちょっとでも心配した俺は何だったのか。
飽きるどころか誰もが引き返せないくらいこの関係にハマってる。そんなことに気付くのは、まだもう少しだけ先の話。
たぐり寄せた有川の匂いがする枕に口元を押し付けてふうふうと息をしながら、有川のベッドに生のちんこをこすり付ける。視線だけでローテーブルの方をそっと盗み見ると、有川はまだうつむいてテキストを読んでいた。
今日はやりたくなんねーのかな。肉を打ち付ける音もエロい水音も、この狭い部屋の中で聞こえないはずがないのに。
手を伸ばせば届きそうな距離に有川がいるこの部屋で、その有川のベッドで他の奴にちんこを突っ込まれてる俺。そんな自分の姿を客観的に想像するとそれだけで滾る。だけど、本当は有川にもっと近くにいてほしい。あの日みたいに手を握って頭を撫でていてほしい。
今でも、初めての時のあの興奮が忘れられない。あれ以来一度もないけど、また三人に輪姦されたくて仕方ない。井田と宇山に作業みたいに挿れられながら、有川に優しくキスされて抱きしめられたい。
あー……、何だこの刷り込みみたいなの。どうしようもねーな。
そういえば、俺がいない時とか三人では何やってんだろ。有川だっていつもこんなふうに他のことに集中してるわけじゃないし、この遊びに参加する時は本気で参加してんのに。いや、てことは、井田とはありえないけど宇山とは……。
「あっ、こら。お前よそ見してんじゃねーよ。有川ーぁ、ちょっと手伝ってー」
「んー」
集中できてない俺に気付いた井田が声をかけると、有川は気のない返事をしながら読んでいたテキストにしおりを挟んだ。寝バックで突っ込まれたままの俺の両足が、間に割り込んできた井田の膝で左右に大きく開かれる。
「ちょ、井田」
「ほらほら、有川に見てもらえー」
見せつけるように、深く刺さってたちんこがカリの辺りまでゆっくりと引き抜かれた。強制的にあらわになった穴の周辺は、濡れてるせいかエアコンの風をやたら冷たく感じる。有川が自分の引き出しからローションを取り出してベッドの足元側に座ると、井田はそれを待ってたみたいにもう一度ちんこを俺の穴に押し挿れた。
「んんっ!」
有川の目の前には、井田のちんこでぎちぎちに拡げられる俺の穴がさらされてる、はず、で。
「あー、締まる締まる! もーほんとなんなのお前」
「あ、あ」
井田が小刻みにちんこを揺らしながら、後ろ手に俺の会陰を軽く撫で上げる。
「うあ、すげーぴくぴくしてる。有川が絡むと感度上がるとかマジで妬けるんですけどー」
「お前は宇山あえがせとけばいいじゃん」
「あー、それな」
待てコラ、お前らのデリカシーどこ行った! この状況で他の男の話とか!
思わず上体を起こしてできるだけ後ろを振り返ると、手のひらに出したローションをこすり合わせてあっためている有川が見えた。
いやそれ、何するつもり。
有川は井田の背後から俺と目を合わせると、口の端を上げて笑った。
「心配しなくても気持ちよくしてやるから」
「あ、ちょ、それマジで締めすぎ。もうちょっと力抜いてくんないと無理無理」
もう黙れこいつ。期待したのが有川にバレんだろーが!
後ろは気になるけど顔を見られたくはなくて、俺はもう一度つかみ直した枕に突っ伏した。
「ここにこんなん入るとか、ほんと見てなきゃ信じらんねーよな」
井田のちんこで伸ばされたしわの上を、人肌になったローションをまとった有川の指先がそっと往復する。めくれ上がったフチを撫でられるたび、ちんこと一緒に指まで中に入ってきそうな感覚に震えてしまう。
「ん、んぅ」
「ちょ、有川それ俺がやばい。ストップストップ」
「早漏かよ」
「ちげーし! こいつん中がよすぎんの」
「まあわかるけど」
「あー、マジで待って。俺ちょっと休憩」
なぜか井田が一旦ちんこを引き抜いて、俺と壁の間にあおむけに寝転がった。ちんこはまだガチガチで上を向いたままだ。
いや休憩とかいいから早くイけよ。
「七瀬、こっち」
一人だけ服を着たままの有川が狭いベッドの端の方に乗り上げて、中途半端で急に放置された俺の身体を抱き起こす。あぐらを組んだ有川の太ももをまたぐように向かい合わせに乗せられ、両肩に手を置いて身体を支えると、先走りが出てる俺のちんこが軽く握られた。
「っ!」
「七瀬、すげーあふれてる。井田のちんこ、そんなに気持ちよかった?」
「……ん、うっせ。触んな」
ローションを足した大きな手で先端を優しくこすられると、先走りと混じり合った水音がくちゅくちゅと響く。どうせなら有川のちんこでイきたいのに、腰が勝手にゆるく動いてしまう。
「なあ。それ、やだ」
「なんで? イきたくない? イかせてあげる」
下からのぞき込んでくる顔をにらみつけても、有川は嬉しそうに笑うだけだ。
「七瀬、どうしてほしいか言わないと分かんないよ?」
嘘つけ! 俺が尻でイきたいって知ってるくせに!
これはあれですよ。有川がよくやる『じらしプレイ』ですよ。抱き寄せた俺にだけ聞こえるくらいの声で、わざと名前呼びながらエロいことばっか言うやつ。なんかやたら落ち着いてて、もしかして男相手なら経験あったんじゃないかとか疑うレベルのやつ!
くそ。お前のちんこだって俺のタマの下でガチガチにブラックデニム押し上げてきてるくせに余裕ぶってんじゃねえよ。
有川はゆるく俺のちんこを握ったまま、正面からもう片方の手をちんこの下に潜らせた。ローションで濡れた節くれ立った大きな手が、タマと会陰をくすぐりながら通り過ぎて、尻の穴を撫で上げる。さっきまで井田のが入ってた穴の入り口は少し開いてて、指の腹で触れられただけで奥がうずいた。指もちんこも、早く有川のを挿れてほしくて仕方ない。
「……」
「七瀬? ほら、どうしてほしい?」
「ぁ……」
「ちょっとそこの二人ー、俺まだイってないんですけどー」
井田の割り込みでエロい空気が霧散した。有川も、切り替えるように普通の口調で井田に返す。
「あれ、お前やめたんじゃなかったっけ」
「休憩っつったじゃん。そいつの尻こっちにちょーだい」
起き上がった井田が、まだ完勃ち状態だったちんこの根元を支えて、俺ににじり寄りながら手で揺らして見せた。
「よかったね、七瀬。井田がまた挿れてくれるって」
「え」
お前のは? なんて聞く暇もなく、有川が尻の下を支えて俺の身体を持ち上げる。うまくバランスが取れず、崩れたあぐらの間に膝立ちになりながら慌てて目の前の首に腕をまわすと、そのまま有川が俺の尻を井田に向かって割り開いた。
「なに」
「七瀬、いい子だからそのままじっとしてて」
有川の中指が、小さく円を描くような動きで奥まで挿し込まれる。一番気持ちいいとこを触ってほしくて身じろぎすると、優しく穴の中を撫でまわす指がそこだけを避けるように逃げる。気が付いたら俺は、有川に抱きついたまま尻を後ろに突き出して腰を揺らしていた。
「はー、もう無理。お前らエロすぎだろ」
「え、ちょ、っあ」
有川の指が入ったままの穴に、井田のちんこの先端が当たる。井田は俺の腹に手をまわして背後から覆いかぶさると、ぴったりと俺の身体に貼り付くようにして、珍しくゆっくりとちんこを挿れてきた。
「や、ん、んんっ」
有川のちんこに慣れた俺の身体には、指一本分増えたところで太さ自体は何の問題もない。けど、入れ替わりに抜かれると思った有川の指がまだそこにあって、中を触られ続けて膝が崩れそうになる。有川の首にしがみつく腕もぶるぶる震えて、完全に体重を預けた形だ。
「七瀬、すごい締めつけてくる。こんなことされて興奮しちゃった?」
「知、らねっ」
「ちょ、締めすぎ締めすぎ! つか有川もそれストップ! これじゃ動かせねーって」
重ねていた上体を起こして少し身を引いた井田が、俺の尻たぶをつかんで穴の具合を確認している。有川は中に挿れたままで指の動きを止めると、首に抱きついている俺の背中をもう片方の手で抱き寄せた。
「わり。このまま支えとくから動いていいよ」
想定できる井田の動きに思わず身構えると、いつもの少し雑で単調な突き上げがすぐに始まった。
「あっ! っ! っ!」
「あ、すげー気持ちいい。これ俺すぐイくかも」
「七瀬」
密着した頭の横から骨伝導みたいに有川の声が響く。声を抑えながら有川の首筋にうずめていた顔をそろそろと上げると、唇が触れそうな至近距離でもう一度名前を呼ばれた。
「七瀬」
優しい口調からは想像できないくらいの、情欲をにじませた切れ長の目に射貫かれる。黒い前髪の向こうから見つめ返す有川の視線は捕食者のそれで。俺たちはどちらからともなく舌を絡め合った。
井田に腰をつかまれ少し強めに突き上げられながら、あえぎ声は有川に飲み込まれていく。有川にとっては全然気持ちよくないだろうけど、舌を深くからめ捕られるたびに『上も下も同時に犯される俺』を感じて、頭の奥がじんじんとしびれた。でも本当は、口の中も有川のちんこでいっぱいにされてみたい。……なんて、言い出せるわけもなく。
「んぁ、あ……っ」
一瞬だけ離れた唇と唇のわずかな隙間で、有川がそっとささやく。
「七瀬、かわいい」
再び噛みつくように深く口づけられ、俺は無意識に井田のちんこごと有川の中指を締め上げた。
ああ、何だこれ。どうしてくれんだ。ハマりすぎてマジで元に戻れる気がしねえ。
自分にこんな性癖があるなんて知らなかった。アナニーが趣味なのは、男同士の猥談でも簡単に口にできないことだっていう自覚ならあった。だけど、まさかこんな厄介な。
井田や宇山は初めて覚えたエロい遊びにのめり込んでるだけだし、有川も多分ノリで付き合ってるだけなのに。こいつらはそのうち飽きるかもしんないけど、俺だけは飽きる気がしないのに。
いやもう、これほんとどうしてくれんだよ。
◇
──とかなんとか、ちょっとでも心配した俺は何だったのか。
飽きるどころか誰もが引き返せないくらいこの関係にハマってる。そんなことに気付くのは、まだもう少しだけ先の話。
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