あんなこと、こんなこと

近江こうへい

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あれからの、あんなこと、こんなこと

2.宇山も、あんなこと、こんなこと ②

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 ◇

 さて。井田とそんなことをしてたって、俺が七瀬に挿れたら駄目だっていうルールはない。そもそも、七瀬にハマったのが数分遅れたぐらいで遠慮するつもりもない。
 周りにはよく勘違いされるけど、俺は別に井田のまねをしてるわけでも流されてるわけでもないしね。服とか髪とかは好みが似ててかぶるだけで、強いて言うなら、井田の方が自分の好き嫌いに敏感で、その分いつも俺より前を行ってるってだけだし。


 今日は、学生証をなくした有川が一人で大学に引き返して、その隙にさっさと七瀬と二人でHした。
 そういえば、自分がやらない時でも当たり前にそこにいる有川がいないのは、秋学期が始まってしばらくつけど初めてかもしれない。元々俺と有川の番だったし、単発バイトが入った井田とは大学で別れた。見てるだけでもいいから井田にはいてほしかったけど、まあ、そんな罰ゲームみたいなプレイは無理か。
 さくさくと一回やった後、ベッドに寝転がったまま、俺はいない奴のことを考えながら七瀬の肩や背中にキスをして、後ろからゆるくその身体を抱きしめた。やるだけやったら放り出す、みたいなのは男同士でもさすがにないな、と有川のやり方を見て考えさせられた俺は、最近はこんなふうに七瀬を甘やかす。
 週に二日くらいとはいえ、一日に二人分もちんこを突っ込まれてる身体をいたわってやりたい。って思ったのは、俺が井田にいろいろされた結果でもある。そんな気付き方どうよ、って気もするけど、自分が確実に成長してるって実感するのは嬉しい。

「んー、でもさ。なんかごめんな」

 そんな中、七瀬だけがいつまでも童貞のままなのはちょっと悪いなと思ったんだけど、七瀬は何を謝られたのか分からないみたいだ。まあ、何の脈絡もないし当然か。

「ほら、なんだかんだ俺らばっか経験積んじゃってるし?」
「お、おお……」

 あ。これは、言われるまで気付かなかった、って感じだな。
 大丈夫だとは思ってたけど、七瀬が本当はこの状況に納得してないとかじゃなくてよかった。挿れたいって言うのを聞いたことがなくても、万が一ってこともあるし。
 まあ、七瀬は素直じゃないとこが結構あるものの、思ってることが顔に出やすいどころかダダ漏れだ。そういう普段の言動から大体の思考パターンが分かるから、表情に合わせて頭の中でアテレコするのもなかなか楽しい。今だって、「男の尻に突っ込みたいとか思ってねえから別にいいし!」とか思ってそうだよね。

「それは別にいーけど。……つか、さ。お前、俺とやってて楽しいわけ?」
「ん? 楽しいっていうかすげー気持ちいいけど」

 えー、不満があるみたいに思われてたとか予想外だし心外なんですけど。
 なんとなく言いにくそうに口を開いたと思ったら何を言いだすんだか。井田に見られてるともっと気持ちいいけど、そうじゃなくても七瀬の穴は最高なのに。実は、イった後も抜かずにまだ七瀬の中にある俺のちんこだって復活間近だ。

「いや、え……と、お前井田ともやってたりするじゃん」
「ん? んんー、うん」

 この場合、やってるイコールちんこ挿れられてる、なんだろうなあ。ほんとこの誤解どうしてくれんの。アナルプラグをカウントしなくてよかったらだけど、俺の尻はまだ処女なのに。

「だから、本当は井田とか、……有川とか? と、やる方がいいのかなー、とか、思って」

 あ、なんだ。本当に聞きたかったのはそっちか。こいつってほんと有川大好きだよね。有川が絡むHは七瀬の感度が全然違うって井田も言ってたし。これでバレてないつもりとかうける。

「それはないない。挿れる方が気持ちいいし。つか、有川とは何もやってないからね」
「え、マジで?」

 思わず、といった感じで七瀬が上半身だけひねって俺を振り返った。その勢いで唇がぶつかりそうになって、お互いが反射的に顔をそらす。少し緩んだ俺の腕の中で、七瀬はまた俺に背を向けると少しうつむいた。

「わり。あー……、じゃあさあ、お前ら三人でどうしてんの?」
「どう、って。有川は部屋提供してるだけ、で、井田と俺だけがやってる感じ?」

 紳士協定ゆえに、何を、とまでは言えない。そこはぼやっとごまかしたままで、こうして誤解は誤解のまま守られ続けるわけだ。俺の尻は誰が守ってくれるんだろ。

「へー、そ、うなんだ」

 うわあ、喜んでる喜んでる。つか、挿れたままの俺のちんこ締めつけるのはやめてください。ほんと、なんでこれでバレてないとか思ってんのかな。

「うん、そう。でも本当は俺さー、井田がやってるとこ見たりすんのと、自分がやってるとこ井田に見られたりすんのが一番好きなんだよね。あと、井田がお前とやってんの手伝うのも楽しいし?」
「あー」

 七瀬なら否定しないと思った。でもまあ、こんな性癖に気付いたのだって元はといえばこいつのせいなんだけど。

「そ。だからさ、これからも井田と俺にいっぱいいっぱい突っ込まれてよ」

 耳たぶを甘噛あまがみしながら、低めの声を出してちょっとだけ腰を揺する。と、また七瀬の中にある俺のちんこがぎゅっと締めつけられた。
 もうほんと何なの、このエロい身体。たまたま言葉責めみたいになっただけなのにこんな反応されたら、次から井田と二人でどんなこと言ってやろうか、って期待しかなくなる。
 最近は、一瞬女の子に目が行くようなことがあっても、つい七瀬と比べて考えてしまう。身長は俺と変わんなくて、細身だけど華奢きゃしゃでもない。顔だって、整ってるけど女の子に見間違うことなんてない。それなのに、「七瀬でいいや」じゃなくて「七瀬がいい」って身体が勝手に思ってしまうとか、ほんと責任取ってほしいよね。

「うっせ。遊んでないで早く抜けよ」

 耳を真っ赤にしてきゅうきゅう締めつけながらどの口がそんなこと言うんだか。こんなにエロに忠実な身体のくせに、まだごまかそうとするのも、ごまかせてると思ってそうなのも、おもしろくて仕方ない。
 黙り込んだ七瀬の中で少しちんこを揺すりながら、このまま抜かずの二発目とかやっちゃってもいいかなあ、なんて思う。

 けど残念。タイミング悪く、出かけてた有川がもう戻ってきてしまった。

「あれ、珍しー。お前らだけでやってたんだ」

 なんて。何も気にしてない感じの口調で言いながら、「俺がいない時にやってんじゃねえ」って有川が目で牽制けんせいしてくる。普段からお前とは3Pなんかしてないんだし別にいいじゃん。とは思うけど、まあそういうことじゃないんだろうな。
 生活空間をヤリ部屋にされて好き放題されても平気なくせに、ちょっと見てないとこでやっただけでこれとか。ほんとこいつ、どんだけ七瀬のこと好きなの。
 ……まさか、七瀬がいない時に井田に味方なんかしないよね?

 ◇

 さて。フラグというか言霊というか。二人に見守られながらとうとう井田にちんこを挿れられてしまった俺が、なぜかそのままトコロテンまで経験してしまうのは、それから一か月も経たないある日の話。
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