あんなこと、こんなこと

近江こうへい

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あんなこと、こんなこと

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 ◇

 そんなこんなで、初めてのちんこを突っ込まれるに至った俺である。

「なあ、そんなんマジで入んの? やっぱ無理じゃね?」

 ハンドクリームまみれの井田のちんこが俺の尻の穴にあてがわれたのを見て、ちょっと思案顔になったのは有川だ。分かる。形が凶悪すぎるよな。けど俺はもう完全に覚悟決めてやる気満々なので邪魔しないでほしい。

「えー平気でしょ」

 相変わらず何も考えてなくて調子がいい宇山が無責任にも言い放つ。邪魔はしてほしくないが無茶もしてほしくない。が、似た者同士の井田も何も考えてなかったらしく、一気にそれを俺に突き立ててきた。

「!!」
「ね、ほら入った入った」

 つか、なんで宇山が得意げなんだ。
 一気に挿れるつもりだったみたいだけど、実際はまだ根元までは入ってない。太めのカリが入り口の一番きついとこを通過しただけだ。それが分かってる井田は俺の両足を抱え直して、奥までしっかり挿れようとぐいぐいと腰を押し付けてくる。
 おい、先っぽだけの約束!

「あーやべ、気持ちいい」
「マジで!? 次っ、次俺ね」
「おい、あんま無理させんなよ」
「うっせ。そういうこと言う奴は最後だかんな」

 宇山が食い付いたのを皮切りに、どうやら俺はこのまま、井田、宇山、有川の順で輪姦まわされることに決まったらしい。
 いいけど、俺の意思はどこ行った。つか、これ俺じゃなかったら尻の穴切れてんぞ。

「すげ。七瀬もちんこガチガチじゃん。尻の穴気持ちいいの?」
「……知らねーよ」

 まあ、有川にTシャツを胸の上までめくり上げられ、ごまかせない状態の濃いピンク色のちんこが腹の上に乗っかってる以上、何を言っても説得力がないのは分かってる。だとしても、これで気持ちいいとかは言いたくなかった。
 だらしなく緩んだ顔を見られるのも、うっかり漏れるあえぎ声を聞かれるのも嫌で、枕に手を伸ばして顔の下半分を隠すようにぎゅっと抱え込む。
 萎えてたら少しは優しくしてくれたのかもしれない。けど、結局穴さえあればいいのか、顔を見せろとか声を聞かせろとか言われることもなく、滑りの良くなったそこを井田に遠慮なく攻め立てられた。俺を気持ちよくさせようという気はまったくないらしい。まあ、彼女でもなけりゃ女子でもないからそんなもんか。
 とはいえ、アナニーしながら夢想していた初めてのリアルちんこである。単調に中を往復されるだけでもそれなりに興奮した俺は、井田が結構あっさりイってしまってもまだ萎えることがなかった。

「うあー、すげえ気持ちよかったー」

 ずるりと尻の中のモノが抜かれて、寂しくなった穴がぱくぱくする。
 井田に開放された足を閉じながら、新鮮な空気を求めて枕から口を離すと、頭上の有川と目が合った。二人ほどのやる気はないような空気を出してるくせに、しっかり欲情した目で俺を見てるのがおかしくて思わず頬が緩む。

 笑ってるのがデフォルトで軽い感じの井田と宇山とは違って、有川は女子がいると基本的に無愛想で──まあ実際はこじらせてるだけなんだけど、無口で無表情で分かりにくい。俺らだけの時には普通にノリもいいし冗談も言うし笑いもするけど、それでもまさかこんな表情かおまで見せるとは。
 有川は、顔立ちのきつい長身の細マッチョだ。刈り上げた前下がりのツーブロックマッシュは真っ黒だし、服なんかも黒っぽくて気だるげなモノトーンコーデが多い。その上に無愛想とか、こいつの性格を知らなきゃちょっと近寄りがたいんだよな。
 新歓の飲み会で女子に勧められた酒を「ミセイネンなので」ってカタコトになりながらもきっちり断る姿に、既につるんでジュースを飲んでた俺らの同類センサーが働かなかったら、今も有川とは知り合いですらなかったかもしれない。

「なあ、これ苦しくねえの? 出したら?」

 ずっと首の後ろに当たってた有川の股間を、少し頭をずらして肉眼で確認する。そういえば、有川はベルトを緩めただけでまだ一度もちんこを放り出してなかった。どう収まってるのか不思議な細身のブラックデニムの上から、硬くなったちんこを指先で引っかくと、小さく跳ねた有川にその手をつかまれた。

「七瀬ー、次俺ね」
「え、あっ!」

 有川にすっかり気を取られてた間にゴムを着けてた宇山が、俺の足を割り開いて身体を寄せてくる。休ませる気もないらしい。

「あー、待って宇山。股関節しんどい。足閉じさせろよ」
「マジで? 閉じてて入る?」
「ん、大丈夫、だと思う」

 足は閉じるけど、やっぱり見てないと怖いからバックにはならない。そろえた膝をあおむけのまま左に倒して、挿れやすいように自分で右の尻たぶをつかんで開いた。慣れてると思われても困るけど、本当に輪姦まわされるならカマトトぶってる余裕もないからな。楽な姿勢、大事。

「どうぞ」
「やった!」

 宇山はいそいそと俺の穴にちんこをあてがうと、井田の駄目な見本を手本にしたように、荒々しく自分本位に腰を打ち付け始めた。
 ほんとこいつ、いっそすがすがしいな。

「あーっ、あー、井田! これマジで気持ちいい!」

 これは俺じゃない。宇山である。
 つか、なんで突っ込まれてる俺じゃなくて井田に感想言うんだ。
 井田のよりも細身だけど長めのちんこが奥を突き上げてくる。初見で可もなく不可もない造形だと思ったけど、これはこれで結構いい。背中がぞくぞくする。
 俺は尻たぶをつかんでいた右手を離して、また枕に手を伸ばした。が、両手で抱え込もうとして、左手は有川のちんこをいじろうとした時に拘束されたままだったことに気が付いた。
 熱くなる枕にふうふうと息を吹き込みながら有川を見上げる。宇山が激しすぎて、ちょっと涙目だったかもしれない。有川は、つないだ俺の手をなだめるように撫でながら、切れ長の目にかかる黒い前髪の向こうからじっと俺を見ている。
 いや、男があえいでる顔とか見てどうすんだ。健全な青少年は尻の穴の方を見てろよ。いやいや、尻の穴見るのもどうかと思うけどさ。
 にらんで抗議すると、ぎゅっと手を握りしめられる。そこ以外は有川とつながってないのに、じんじんと胸の奥がしびれるようにうずいた。

「あー、イく! もうイく! あっああー!」

 ……これも俺じゃない。宇山である。
 つか何なのこいつ、こういう奴だったのか。

「うあ、すげえ出たー」

 外したゴムの口を縛りながら、なぜか宇山がそれを自慢げに井田に見せに行く。ご褒美が欲しい犬コロみたいだ。そういえば宇山がやってる時に井田がそばにいなかったけど、どうやら一人であっちの壁際に座ってたらしい。
 そうか、賢者タイムか。そんで宇山もこれから賢者タイムか。
 エンドレスでさかられて輪姦まわされたら困るからいいんだけど、冷静になった人間にやってるとこ見られるのはなんだか嫌だ。ちょっとどうしてくれようかなと回らない頭で考えながら、有川と枕から離した両手を後ろについて上半身を起こす。
 うわ、腕なんか全然使ってないのにガクガクする。
 さりげなくそっと背中を支えてくれる有川には、俺とやる気があるのかないのかよく分からない。見た感じ、ちんこは確実にガチガチに勃ってるんだけど。つか俺もまだ一回もイってない。正直物足りない。

「大丈夫か?」
「んー平気。ちょっと息吸いたい」

 物足りないけど、この悪ノリを主導してきた二人が冷静になったらこの流れはおしまいかもな。そう思いながらボクサーブリーフを探してベッドの周りを見回していると、後ろでジッパーを下げる音が聞こえた。

「おわー、何その凶悪なちんこ。反則だろ」

 やる気はあったらしく下を完全に脱ぎ捨てた有川に井田が寄ってくる。自分だってまだ下着姿のくせに、完全におもしろがってる顔がなんとなくイラっとくるな。
 井田の指摘のとおり、初めて見る有川のちんこもまたすごかった。井田ほどカリは太くないけど、ごつごつした造形で全体的にでかい。その上、見たことないくらい弓なりに反り返った先端が自分の腹に付いてる、とか。
 ちょっと呆然としながら、座り込んだ俺の目の前で自分のちんこをゆるゆるとしごいている有川を見上げると、熱に浮かされたような視線とぶつかった。

「七瀬、マジで挿れるけどいいか? 無理だったら言っとけよ」
「うわー、こんなちんこ腫らしてなにかっこつけてんの。早く挿れちゃえよー」
「挿れちゃえよー」

 井田と宇山が相変わらず絡んでくる。

「うるせ、お前らに聞いてねえし。なあ、七瀬いいか?」

 あー、挿れてほしい。
 正直、尻の穴はじんじんしてるけど、その反り返った先端がどんなふうに俺の中をこすり上げるのか期待しかない。でも、この期に及んでもまだそんなことには気付かれたくないわけで……。有川は普段からさりげない気配りとかできる奴だけど、こういう時には遠慮とか気遣いとかマジでやめてほしい。多少強引なくらいでいいのに。

「……焼肉」
「っくく。わかった。できるだけ優しくする」
「ひゅー、有川やーさしー」
「やーさしー」

 仕方ないから飯と引き換えに挿れさせてやるっていうふりを貫くけど。……多分気付かれてるな、これ。
 往生際の悪い俺のTシャツを有川が苦笑しながら脱がせると、汗ばんだ肌にエアコンの風が当たって少し寒い。寒さ半分、恥ずかしさ半分で、脱がされたTシャツを引き寄せて胸元を隠す。
 いや、ていうかなんで俺全部脱がされてんだ。挿れるだけなんだからお互い下だけ脱いでりゃいいんじゃねえの?
 これじゃまるでセックスみたいだ、と思いかけて思考を無理やり引き戻す。

「つかそれ、ぱっと見無理そうだけどちゃんと入んの?」
「井田のが平気だったら平気でしょ。案外つるっと入るって」

 ……ほんと外野がうるせえな。井田のが入ったのは多分ゆうべの俺のアナニーの成果だし、宇山のがつるっと入ったのは奴のが細いからだ。
 こいつら筆おろししてやった俺に対してあまりに敬意がなさすぎる。文句のひとつでも言ってやりたかったけど、どう言えば一番ダメージがでかいか一瞬考え込んでしまった隙を突いて、有川が先に口を開いた。

「はいはい散れ散れ。俺はお前らみたいに飢えてねーの」
「うわ、有川。童貞のくせに無理しちゃってー」
「かっこつけてたら一生童貞のままだぞー」
「うるせ。お前らがそれ言うな」

 ほんとそれ。たかだか数分差で童貞卒業した奴らが言うとか。調子に乗りやがって。
 井田と宇山は一回イってちょっと我に返った感があって、居たたまれないのか必要以上にからかってくる。ほんと、冷めた奴らにやってるとことか見られたくないんだけど。いや、でも、こんな会話しながらでもしごく手を止めず萎える気配のない有川のちんこに触発されたのか、井田のは少し復活しかけてる、ような、気もする。
 ……ちょっと煽っとくか。

「なあ」
「ん?」
「井田のそれ、まだイけそうじゃん。こんなん見ててもしょーがねーし、今度はそっちの隅で宇山と遊んどけば?」

 まだブリーフしかはいてない井田の股間を指さしてやると、つられてそっちを見た宇山の顔が一気に赤くなる。青ではなく、赤である。

「は……っ、はあぁっ!? 俺男なんですけどーっ!」

 いや、俺も男なんですけど?
 つか、挿れられてみろって言ったわけでもないのにこの反応とか怪しいな。さっき俺とやってた時もすげえ井田のこと意識しまくってたし、井田と同じ穴に挿れてること自体に興奮してたような気もするし。
 気のせいかもしんないけど、もういいや、そういうことで。まあ、井田さえその気になればやれるだろ。
 うろたえた宇山はまだちんこを放り出したままで、俺ほどじゃないけど白くて毛の少ない足をさらしている。井田の視線が視姦するようなものに変わって、宇山の細い身体を舐めるように見た。ついさっきまで仲良くちんこ出してハイタッチなんかしてたくせに、宇山は前を隠しながら脱ぎ捨ててあったトランクスに慌てて手を伸ばす。つか、がっつり見られてんのは尻の方だっていつ気付くのか。

「……ああー、うん。なるほどね。やってみる? 俺お前でもいけそう」
「はぁっ!?」
「何だよさっきからうるさいなー。近所迷惑なんですけどー」
「だっ、だってそれは井田が急に無茶なこと言うからでしょ!」
「あー分かった分かった。無茶かどうかは今から確認するから、ちょっと黙って俺のちんこくわえてみて」
「……っ!」

 絶句した宇山はあっさりと井田に捕獲され、腕を引かれてローテーブルの向こう側に連れてかれる。躊躇ちゅうちょなく再びブリーフを脱ぎ捨てた井田のちんこが、一連のやり取りの中で既にガチガチに勃ち上がってるのが見えた。
 まあ、宇山の方も大丈夫だろ。さっきイったばかりのちんこが、触られてもないのにあっさり復活したみたいだし。俺らがやってる間だけでも、二人でいいように時間をつぶしててほしい。

「あー……」

 二人に気を取られていたら、頭上から有川の困惑した声が降ってきた。
 膝立ちになった有川のちんこの先端にはゴムが押し当てられてるけど、見た感じそこからちっとも先に進む気配がない。
 え、マジか。それ井田が普通に使ってたのと同じやつだよな。いや、まあ、なんとなくそんなサイズな気はしてたけど……。
 思わず遠い目になりかけてたら、眉間にしわを寄せた有川が俺の耳元に口を近づけてささやいた。

「……なし、でもいけるよな?」
「え」

 思わず有川の顔を凝視する。
 待て待て男の尻だぞ。ゴム着けてたって抵抗ある奴はあるはずで。それを生でとか。

「えー……と、つか、お前はそれでいいの?」
「いい。挿れたい。挿れさせて?」

 マジか。いいのかよ。
 黒い前髪のかかる切れ長の目が、射るように至近距離で俺を見ている。一歩も引く気配のない有川に正面から見つめられて、井田と宇山に茶化されて冷めかけていた身体がもう一度熱くなった。
 有川の見せる抑えきれない情欲が、他の誰にでもなくなぜか俺に向けられている。しかもこれは多分、まだ誰にも見せたことがないはずのものだ。
 ……うわ、やられる。
 そう思うと独占欲が満たされるような不思議な気分になった。それが何なのかよく分からないまま、どくどくと胸が高鳴ってちんこはぴくぴくと期待に震える。
 ゴムをかぶったちんこはディルドやバイブと同じだが、生のちんこはちんこでしかない。けど、でも。

「あー、別に、いいよ、好きにしたら?」
「ん。じゃあ、あいつらには内緒、な」
「っ!」

 思わず視線をそらしながらぼそぼそと答えると、有川には使えなかったゴムが前触れなく俺のちんこの先端に当てられた。くるくると根元まで丁寧に撫で下ろす指先に、衝動的に腰を振りそうになるのをぐっとこらえる。ゴムを着けてくれたのは俺をイかせる気があるってことなら、どうせなら、尻の穴でイきたい。
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