1 / 3
【前編】
第1話 登山
しおりを挟む
当てもなく家を出発したのは、もう九時間も前のことだった。一応、どこに泊まってもいいよう、最低限の荷物は持ってきたが、どこへ向かっているのかは、自分でもよくわからない。日没が近くなって、俺は何処とも知らぬ山の麓へ訪れていた。
今日が何日だったのか、すぐには思い出せない。まともにカレンダーを見たのは高校生以来、ましてや日にちを気にかけたことも遠い過去のように思える。日にちどころではなく、今年が何年かすらも、よく思い出せなかった。そういやあ、元号が変わったんだっけ?
一台も停まっていない駐車場へ無造作に車を置き、後部座席へ載せていたリュックサックを掴み取ると、凍てつく寒空へと俺は繰り出していく。
周りの風景を見て、なんとなく子供のころ父に連れて来られたような、そんな記憶を想起させる山だと思った。とどのつまり、ごくごく平凡な山に過ぎないということだろう。たぶん、ここに来たのは初めてだ。子供のころに遠出した記憶は皆無だからである。
山頂へ到着するまで、ほかの登山客とは出会わなかった。もちろん、それは山頂へ着いてからも同様だったが、一人だけ、見晴台のベンチに座っている人物がいる。頭をほんの少しだけ覗かせている太陽を眺め、その人は地面に届いていない御御足をパタパタと揺らしていた。
俺に気づいた様子もなく、太陽が沈みゆく様子を、ただじっと見つめている。麓の駐車場には一台も車がなかったので、きっと近所の子なのだろうとは思うが、周りに親らしき人物もいないのが不可解だ。別に悪いことはしていないが、周囲を窺いつつ、その少女の傍へと近づいていく。
よくよく観察してみると、目の前にいるのは奇妙な女の子だった。雪が降り積もった冬山なのに、肌襦袢のようにも見える薄い生地の浴衣を着て、おまけに裸足という軽装をしている。登山に限らず、この季節にはあまりにも不釣り合いに思えた。
脚を動かしすぎたせいで、裾が開けてしまっている。細く伸びた御御足は、周りの風景に同化してしまいそうなほどの白さだった。おまけに衿が浮き、隙間からは地肌が見えている。色素の濃淡が分かれている境目を、俺はハッキリと見て取った。色素の濃い肌の中央には、小さな陥没がある。
俺は思わず前屈みになった。より良い角度から見たいというのもそうだが、股間部分に窮屈さを覚えたからだ。幼女の陥没乳首を見ただけで勃つ自分のイチモツが、我ながらに呆れてしまう。自殺目的で家を出発したのに、身体は生きようとしているのか、自分でも情けないと思うほどの元気さだった。
気になったので、勇気を振り絞り、声をかけてみる。「お名前は?」「どこから来たの?」「お母さんかお父さんは?」「そんな格好じゃ寒いでしょ?」
しかし、なにを訊いても少女からの返答は得られなかった。いきなり「名前」や「住所」を訊いたのは拙かったか。知らないオッサンから、こんなにもズケズケと問い質されたら、そりゃあそんな反応にもなるだろう。
太陽が完全に姿を消すと、残滓のようだった紫色の空が、どんどんと黒く染まっていく。ただでさえ寒かったのに、日の光も届かないとなれば、空気中の熱が奪われていくのに、そう時間はかからない。
駆け抜けていく風のスピードが速まり、舞う雪の結晶が目の端々でちらついている。身体の中心は暖かい(特に心と股間が)のに、末端が異様に冷えてきた。手を擦り合わせ、掌に向けて息を吐きかける。乾燥しているせいか、喉がカラカラのせいか、自分の息の臭さに驚く。
「おじさん……」突然、少女は口を開いた。静かに呟く少女に、俺は顔を向ける。「もう、おうちに帰ったほうがいいよ。今夜は吹雪くから……」
そう言い残し、その少女は森の奥へと、足早に消えていった。なんだったんだろう? あの子のほうが冷える格好をしていたのに、人のことを心配している場合か? 死に場所を探し求めて、俺はさらに歩を進めていった。
今日が何日だったのか、すぐには思い出せない。まともにカレンダーを見たのは高校生以来、ましてや日にちを気にかけたことも遠い過去のように思える。日にちどころではなく、今年が何年かすらも、よく思い出せなかった。そういやあ、元号が変わったんだっけ?
一台も停まっていない駐車場へ無造作に車を置き、後部座席へ載せていたリュックサックを掴み取ると、凍てつく寒空へと俺は繰り出していく。
周りの風景を見て、なんとなく子供のころ父に連れて来られたような、そんな記憶を想起させる山だと思った。とどのつまり、ごくごく平凡な山に過ぎないということだろう。たぶん、ここに来たのは初めてだ。子供のころに遠出した記憶は皆無だからである。
山頂へ到着するまで、ほかの登山客とは出会わなかった。もちろん、それは山頂へ着いてからも同様だったが、一人だけ、見晴台のベンチに座っている人物がいる。頭をほんの少しだけ覗かせている太陽を眺め、その人は地面に届いていない御御足をパタパタと揺らしていた。
俺に気づいた様子もなく、太陽が沈みゆく様子を、ただじっと見つめている。麓の駐車場には一台も車がなかったので、きっと近所の子なのだろうとは思うが、周りに親らしき人物もいないのが不可解だ。別に悪いことはしていないが、周囲を窺いつつ、その少女の傍へと近づいていく。
よくよく観察してみると、目の前にいるのは奇妙な女の子だった。雪が降り積もった冬山なのに、肌襦袢のようにも見える薄い生地の浴衣を着て、おまけに裸足という軽装をしている。登山に限らず、この季節にはあまりにも不釣り合いに思えた。
脚を動かしすぎたせいで、裾が開けてしまっている。細く伸びた御御足は、周りの風景に同化してしまいそうなほどの白さだった。おまけに衿が浮き、隙間からは地肌が見えている。色素の濃淡が分かれている境目を、俺はハッキリと見て取った。色素の濃い肌の中央には、小さな陥没がある。
俺は思わず前屈みになった。より良い角度から見たいというのもそうだが、股間部分に窮屈さを覚えたからだ。幼女の陥没乳首を見ただけで勃つ自分のイチモツが、我ながらに呆れてしまう。自殺目的で家を出発したのに、身体は生きようとしているのか、自分でも情けないと思うほどの元気さだった。
気になったので、勇気を振り絞り、声をかけてみる。「お名前は?」「どこから来たの?」「お母さんかお父さんは?」「そんな格好じゃ寒いでしょ?」
しかし、なにを訊いても少女からの返答は得られなかった。いきなり「名前」や「住所」を訊いたのは拙かったか。知らないオッサンから、こんなにもズケズケと問い質されたら、そりゃあそんな反応にもなるだろう。
太陽が完全に姿を消すと、残滓のようだった紫色の空が、どんどんと黒く染まっていく。ただでさえ寒かったのに、日の光も届かないとなれば、空気中の熱が奪われていくのに、そう時間はかからない。
駆け抜けていく風のスピードが速まり、舞う雪の結晶が目の端々でちらついている。身体の中心は暖かい(特に心と股間が)のに、末端が異様に冷えてきた。手を擦り合わせ、掌に向けて息を吐きかける。乾燥しているせいか、喉がカラカラのせいか、自分の息の臭さに驚く。
「おじさん……」突然、少女は口を開いた。静かに呟く少女に、俺は顔を向ける。「もう、おうちに帰ったほうがいいよ。今夜は吹雪くから……」
そう言い残し、その少女は森の奥へと、足早に消えていった。なんだったんだろう? あの子のほうが冷える格好をしていたのに、人のことを心配している場合か? 死に場所を探し求めて、俺はさらに歩を進めていった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
女の子がいろいろされる話
ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。
私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。
思いついたら載せてくゆるいやつです。。
【女性向けR18】性なる教師と溺れる
タチバナ
恋愛
教師が性に溺れる物語。
恋愛要素やエロに至るまでの話多めの女性向け官能小説です。
教師がやらしいことをしても罪に問われづらい世界線の話です。
オムニバス形式になると思います。
全て未発表作品です。
エロのお供になりますと幸いです。
しばらく学校に出入りしていないので学校の設定はでたらめです。
完全架空の学校と先生をどうぞ温かく見守りくださいませ。
完全に趣味&自己満小説です。←重要です。
【R18】短編エロ小説まとめ
華奈PON
恋愛
エロ系短編小説を載せる事にしました
性癖に刺されば幸いです。
以下作品概要です
勇者の僕が世界最凶の魔王に魅了されたら、いつの間にか世界が平和になっていた件 →18禁ファンタジーおねショタ
雌鳴きの森→18禁ファンタジー百合
ボッチな俺と二人の一途ギャル→18禁現代純愛もの
こびづま・隣人人妻綾香のネトラレチン媚び子作り愛情交尾録・上、下→18禁
現代"ネトリ"もの
こびどる・自殺願望アイドル茜のチン媚び枕営業交尾報告書→18禁現代純愛もの単独完結時系列はこびづまの続き
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる