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第1部:窃盗と盗撮
第12話 攻撃と防衛。
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「説明してください」
こっちの事情も知らずに、すごい剣幕で、つかつかと少女は歩み寄ってくる。男はみんな変態とでも思っているのか。みんなではない。「トイレ訓練だよ。きみだって、子供のとき親御さんからやってもらったはずだ」
「もう小学生ですよ? ひとりでトイレができない人なんているんですか? 仮にそうだったとしても、両親から、もしくは保健室の先生から、してもらえばいいじゃないですかっ」
余計なこと言いやがって。これだから第二次性徴以降の女は……
ほかの人に告げ口されるのも面倒だ。疚しい気持ちはないだろうと汲んでくれそうだが、俺の過去を知っている校長先生の耳へ入れるのは避けたい。少女に向かって言う。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのを抑えながら、俺は平静を装い、目の前の少女へ極めて優しく語りかける。高学年だろうか。少女が腕を組んで仁王立ちすると、蓄えている余分な脂肪が僅かに乗っかった。
「保健の先生って、ずっと保健室にいるようなイメージだけど、暇じゃないんだよ。ほかの先生もそう」
「じゃあ、先生は暇なんですか」
「んん? 違うよ。暇だからしているんじゃなくて、これがオ・シ・ゴ・ト。わかる? お仕事だから、仕方なく下の世話を……」
「ねえ、君! やりたくもないことをやらされてるって、グチってるよ! この先生!」
「あっちょっ……!」
しかしマリヤには早口すぎて、会話の内容が理解できないようだった。俺と少女の顔を交互に見つめ、マリヤは口をポカンと開け、目を瞬く。「……?」
「金髪。日本人じゃ……あ、最近、転校してきた子?」
少女はしどろもどろになってしまい、次の言葉が出てこないようだった。
「まだ日本に慣れていないから、先生がつきっきりで教えないといけないんだよ。きみも、いきなり言葉の通じない外国に行って、わからない習慣に出会ったら、どうすることもできなくて、心細いでしょう? ね? テレビでそういった事件を見たか知らないけど、自分が知った気になって、人の邪魔をしちゃったらよくないよ。相手の事情をよく考えて行動しないと、自分の愚かさを公衆の面前に晒すだけだから」
俺は早口で一気に捲し立てた。ダメ押しで、高圧的な態度に出る。こっちのほうが効果的かもしれない。睨みつけるような上目遣いをしたのち、少女はなにも言わずに、その場を立ち去っていく。
トイレは良かったのか、と相手のことを思うぶんには落ち着きを取り戻した。とりあえず、一難は去ったのだろうか。あしたになっても、校長先生から呼び出しを喰らわなければ、よしと思おう。
チャイムが鳴って、マリヤとともに教室へ戻った。その直後、姫冠が俺たちのもとへ駆け寄ってきて「ご、ごめんなさい」と謝る。突然のことで俺とマリヤは、お互いの顔を見やった。「マリヤちゃんも、くすぐり苦手だったんだね。くすぐったくならないように、一緒にガンバろ!」
姫冠は、なにかを勘違いしているっぽい。しかし、それをどう頑張るつもりなのかはさておき、彼女たちのそんな友情に絆されて、俺はあらぬ妄想を描いてしまった。
二十代になって性癖が歪みつつあるのを感じる。教師と教え子という関係性である以上、俺はこの輪に入ることは叶わない。
だからこそ、思う存分、教師という立場を活用しなければ、もったいないだろう。プールの授業もなく、樋廻のスマホに入れたストーカーアプリも今のところ役に立っていない。しかも中途半端に扱いたぶん、興奮さめやらぬアソコは再び熱を帯びてきた。
股間部分が圧迫されるような窮屈感を覚える。むくむくと盛り上がってきたのを、必死で静めようとするが、考えれば考えるほど、より強固なものへとなっていく。
なので、これから俺が言うことは、熱に浮かされたといっても、過言ではない。「じゃあ、放課後に残る? 擽りに耐える特訓をしようか」
放課後に女子児童を居残りさせて、俺はいったい、なにをさせようというんだ? それはあまり深く考えていなかった。マセガキのせいもあったかもしれない。言葉巧みにねじ伏せる、そういう快感を覚えてしまったのかもしれない。
秘密がバレて、どうせ辞めるなら、とことんやってから辞めたい、と思ったのかもしれない。自分でも、このとき、どういった思考回路だったのかは判然としない。
こっちの事情も知らずに、すごい剣幕で、つかつかと少女は歩み寄ってくる。男はみんな変態とでも思っているのか。みんなではない。「トイレ訓練だよ。きみだって、子供のとき親御さんからやってもらったはずだ」
「もう小学生ですよ? ひとりでトイレができない人なんているんですか? 仮にそうだったとしても、両親から、もしくは保健室の先生から、してもらえばいいじゃないですかっ」
余計なこと言いやがって。これだから第二次性徴以降の女は……
ほかの人に告げ口されるのも面倒だ。疚しい気持ちはないだろうと汲んでくれそうだが、俺の過去を知っている校長先生の耳へ入れるのは避けたい。少女に向かって言う。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのを抑えながら、俺は平静を装い、目の前の少女へ極めて優しく語りかける。高学年だろうか。少女が腕を組んで仁王立ちすると、蓄えている余分な脂肪が僅かに乗っかった。
「保健の先生って、ずっと保健室にいるようなイメージだけど、暇じゃないんだよ。ほかの先生もそう」
「じゃあ、先生は暇なんですか」
「んん? 違うよ。暇だからしているんじゃなくて、これがオ・シ・ゴ・ト。わかる? お仕事だから、仕方なく下の世話を……」
「ねえ、君! やりたくもないことをやらされてるって、グチってるよ! この先生!」
「あっちょっ……!」
しかしマリヤには早口すぎて、会話の内容が理解できないようだった。俺と少女の顔を交互に見つめ、マリヤは口をポカンと開け、目を瞬く。「……?」
「金髪。日本人じゃ……あ、最近、転校してきた子?」
少女はしどろもどろになってしまい、次の言葉が出てこないようだった。
「まだ日本に慣れていないから、先生がつきっきりで教えないといけないんだよ。きみも、いきなり言葉の通じない外国に行って、わからない習慣に出会ったら、どうすることもできなくて、心細いでしょう? ね? テレビでそういった事件を見たか知らないけど、自分が知った気になって、人の邪魔をしちゃったらよくないよ。相手の事情をよく考えて行動しないと、自分の愚かさを公衆の面前に晒すだけだから」
俺は早口で一気に捲し立てた。ダメ押しで、高圧的な態度に出る。こっちのほうが効果的かもしれない。睨みつけるような上目遣いをしたのち、少女はなにも言わずに、その場を立ち去っていく。
トイレは良かったのか、と相手のことを思うぶんには落ち着きを取り戻した。とりあえず、一難は去ったのだろうか。あしたになっても、校長先生から呼び出しを喰らわなければ、よしと思おう。
チャイムが鳴って、マリヤとともに教室へ戻った。その直後、姫冠が俺たちのもとへ駆け寄ってきて「ご、ごめんなさい」と謝る。突然のことで俺とマリヤは、お互いの顔を見やった。「マリヤちゃんも、くすぐり苦手だったんだね。くすぐったくならないように、一緒にガンバろ!」
姫冠は、なにかを勘違いしているっぽい。しかし、それをどう頑張るつもりなのかはさておき、彼女たちのそんな友情に絆されて、俺はあらぬ妄想を描いてしまった。
二十代になって性癖が歪みつつあるのを感じる。教師と教え子という関係性である以上、俺はこの輪に入ることは叶わない。
だからこそ、思う存分、教師という立場を活用しなければ、もったいないだろう。プールの授業もなく、樋廻のスマホに入れたストーカーアプリも今のところ役に立っていない。しかも中途半端に扱いたぶん、興奮さめやらぬアソコは再び熱を帯びてきた。
股間部分が圧迫されるような窮屈感を覚える。むくむくと盛り上がってきたのを、必死で静めようとするが、考えれば考えるほど、より強固なものへとなっていく。
なので、これから俺が言うことは、熱に浮かされたといっても、過言ではない。「じゃあ、放課後に残る? 擽りに耐える特訓をしようか」
放課後に女子児童を居残りさせて、俺はいったい、なにをさせようというんだ? それはあまり深く考えていなかった。マセガキのせいもあったかもしれない。言葉巧みにねじ伏せる、そういう快感を覚えてしまったのかもしれない。
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