Breathe 〜僕の生きてきた時間〜

episode 10 〜僕の明るい未来〜

　父は相変わらずだった。何を言われようともう僕の中だけで留めておくことにした。

　僕はずっとこんなに子どもの頃から波乱万丈な生活をしているのは自分だけだと思っていた。僕の人生はなんでこんなにも…ずっとそう思って過ごしてきた。
　病院で働くようになり、いろんな患者さんと出会い…僕の人生なんて大したことないと思うようになった。
　病気をしても子どもと疎遠になって助けてくれる家族がいない人、病気をきっかけにケンカが絶えなかった夫婦の離婚、遺産問題で誰が親を見るのか争う家族、事故で命を落とす人。…一夫多妻制のような複数不倫のドクターもいた。
『あなたは若くて悩みなんてないでしょう』
と、患者さんに言われた時は反論しようとしたこともある。
　たくさんの人と出会うことで自分の人生も捨てたもんじゃないと思うようになった。もちろん良い出会いもある。どんなに寝たきりになっても家に連れて帰ろうとする家族、余命短い家族を家で過ごさせてあげようとする人、病気になっても前向きに進んでいこうとする人…。
　僕は人より多くの経験をして、少し人より早く大人になった。ただ、それだけのこと。

　そんな僕も…
明日新しい家族ができる。
これからもたくさんの経験を積むだろう。
何かにつまずいた時は、深呼吸をして、心を穏やかに前に進んでいこう。

　そして、
深呼吸をして、僕はバージンロードを歩いた。