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episode 9 〜前を向こう〜
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僕はすぐに婚活を始めた。今話題の婚活アプリを使った。だって、もう周りは既婚者ばかり。この歳でコンパなんてもうなかった。リアルな婚活をするしか出会いはなかった。
…波乱な家族生活を過ごしてきた僕だったが、夢は父に負けない家庭を作ることだった。
もともと女の人との接し方が苦手だった僕が婚活パーティーで積極的になれるとは思えず、手軽なアプリを使うことにした。
数人と実際に会うことができた。写真と全く違う人、情報通りに素敵な人、待ち合わせに遅刻する人…。この年齢で結婚できていない僕にも何かダメなところがあるのだろうと自覚している。人の振り見て我が振り直せ!と自分に言い聞かせた。
1人の女性と知り合った。会った時から他の人とは違った。何も飾らず、そのままの姿で2人でごはんを食べた。正直タイプではなかった。会う前に何度も何度もメッセージを繰り返して、内面を知ってから会ったからだろう。コンパで知り合ったとしたら、おそらく眼中に入っていないと思う。
数回のデートを重ねて、僕らは付き合いだした。まさか、こんな出会い方で彼女ができるとは思いもしなかった。
職場では…
『婚活アプリとか、そんなのどうなの?』
『普通に出会ったらいいのに』
『怖っ』
なんて言う同僚もいた。だからそんな出会い方とは言えなかった。学生時代から付き合った人と結婚した人や、職場内恋愛で結婚した人がこういうことを言う。
普通に出会えていたらしてませんよ。
友だちにもなかなか言えなかったが、意外と婚活アプリや相談所で出会って結婚する人もいたので、恥ずかしさ…みたいなのはちょっとずつ減った。
本当に彼女が好きだったから。
2度ほど父にも会ってもらった。もちろん父にはそんな出会い方とは言っていない。
何度か距離を置くこともあった。出会い方の問題ではなかった。お互いの性格だろう。一度別れ話になった時に父に言った…
「結婚がまた遠のいた」
父は…
『そんなの結婚したら他愛もないケンカだろ』
正直なんのアドバイスかと思った。父の経験なんてあてになるものか…。
でも…あっという間に、僕は彼女とまた同じ時を刻むことになった。父のアドバイスもあながち間違ってなかった。
その頃も実家通いは続いていた。
妹は、僕が家を出てから家事を少しずつするようになった。最近では、妹と父のことをよく話す。
…ただ、妹は父の不倫…彼女のことは知らない。たぶん知らない。真実は言えなかった。
父は堂々と
『職場の人とごはんに行ってくる』という。
妹がどこまで気付いてるかはわからないが言えない。
さらに、この前こんなとこに行ってさーとサラッと僕には話すようになった上に、
『あの子にはこんなこと言えないけどさ』
と、妹には言えないと言う。僕は良いのかよ…。
もう、どうしようもなかった。父のそんなの言葉を聞くたびにため息が出た。
父は父、僕は僕…と割り切るしかなかった。そうやって前を向くしかなかった。
深く…深呼吸をして…前を向こう!と。
…波乱な家族生活を過ごしてきた僕だったが、夢は父に負けない家庭を作ることだった。
もともと女の人との接し方が苦手だった僕が婚活パーティーで積極的になれるとは思えず、手軽なアプリを使うことにした。
数人と実際に会うことができた。写真と全く違う人、情報通りに素敵な人、待ち合わせに遅刻する人…。この年齢で結婚できていない僕にも何かダメなところがあるのだろうと自覚している。人の振り見て我が振り直せ!と自分に言い聞かせた。
1人の女性と知り合った。会った時から他の人とは違った。何も飾らず、そのままの姿で2人でごはんを食べた。正直タイプではなかった。会う前に何度も何度もメッセージを繰り返して、内面を知ってから会ったからだろう。コンパで知り合ったとしたら、おそらく眼中に入っていないと思う。
数回のデートを重ねて、僕らは付き合いだした。まさか、こんな出会い方で彼女ができるとは思いもしなかった。
職場では…
『婚活アプリとか、そんなのどうなの?』
『普通に出会ったらいいのに』
『怖っ』
なんて言う同僚もいた。だからそんな出会い方とは言えなかった。学生時代から付き合った人と結婚した人や、職場内恋愛で結婚した人がこういうことを言う。
普通に出会えていたらしてませんよ。
友だちにもなかなか言えなかったが、意外と婚活アプリや相談所で出会って結婚する人もいたので、恥ずかしさ…みたいなのはちょっとずつ減った。
本当に彼女が好きだったから。
2度ほど父にも会ってもらった。もちろん父にはそんな出会い方とは言っていない。
何度か距離を置くこともあった。出会い方の問題ではなかった。お互いの性格だろう。一度別れ話になった時に父に言った…
「結婚がまた遠のいた」
父は…
『そんなの結婚したら他愛もないケンカだろ』
正直なんのアドバイスかと思った。父の経験なんてあてになるものか…。
でも…あっという間に、僕は彼女とまた同じ時を刻むことになった。父のアドバイスもあながち間違ってなかった。
その頃も実家通いは続いていた。
妹は、僕が家を出てから家事を少しずつするようになった。最近では、妹と父のことをよく話す。
…ただ、妹は父の不倫…彼女のことは知らない。たぶん知らない。真実は言えなかった。
父は堂々と
『職場の人とごはんに行ってくる』という。
妹がどこまで気付いてるかはわからないが言えない。
さらに、この前こんなとこに行ってさーとサラッと僕には話すようになった上に、
『あの子にはこんなこと言えないけどさ』
と、妹には言えないと言う。僕は良いのかよ…。
もう、どうしようもなかった。父のそんなの言葉を聞くたびにため息が出た。
父は父、僕は僕…と割り切るしかなかった。そうやって前を向くしかなかった。
深く…深呼吸をして…前を向こう!と。
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