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episode 3 〜ジェットコースターのような〜
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父は夕方には帰ってくるようになった。おばあちゃんが電車で1時間半かけて週に1~2回来てくれた。週末はおじいちゃんも一緒に車で来てくれた。僕はカギを首からぶら下げて毎日学校に行った。みんなが来てくれるから、自分でカギを開けることはほとんどなかった。
父は母の実家にも連絡をした。おじぃちゃんとおばぁちゃんはただただ謝っていたらしい。
その日は昼までの授業だった。家に着く前に首に引っ掛けたカギを服の中から出して、開ける準備をして…カギを回した。
…ん??…開いてる??
そぉーっとドアを開けると…
『おかえり』
母だ!!そこにはいつもと同じ母がいた!!
僕が母にこの数日の事を聞こうとしたが、
『ごめんね、ちょっとお父さんとケンカしちゃって。もう大丈夫だから』
母のごめんねに…涙が出て、抱きしめられたらこの数日のことが夢だったかのように感じてしまった。
その日の夜は…思い出すのも辛い光景だって。泣きながら父とおばあちゃんたちに謝る母。
僕は妹と2段ベッドの上にあがり、妹が不安がらないよう、みんなの声が聞こえないようにたくさん話して、たくさん笑って…僕もみんなの声が聞こえないように…たくさん笑った。
それからいつもと変わらない日々が続いた。…ただ、僕は父にもらった家のカギを返さず、ずっと首からぶら下げて学校に行った。
父の『お父さんとは違う男の人と恋人になっていたんだ。』という言葉が忘れられなかった。どこかで僕は、母のことを信じきれていなかった。
ある日の朝、ベッドから出た僕はテーブルに置かれた朝ごはんを見て異変に気がついた。トーストとオレンジジュース…。それだけ。ヨーグルトとサラダがなかった。
台所へ向かうと…誰もいない。すると父が部屋から出てきて僕の顔をじっと見つめた。
「そういうことだね、わかったよ」
僕はそう言って、首にぶら下げたカギを父に見せた。
父は黙ってうなずいた。
次の日曜日、母方のおじぃちゃんとおばぁちゃんがやってきて…謝った。ひたすら謝り続けていた。父方のおじいちゃんとおばあちゃんもやってきた。波乱だ…。
おじいちゃんとおばあちゃんは冷静だった。あまり責めてはいけないと思ってくれていたのだろう。
妹は祖父母がたくさん来てくれて喜んでいた。理由はわかっていなかったから。僕はこの状況に我慢ができず…
「明日使うノートがないから買いに行きたい」とテキトーな理由をつけてみんなに向かって話かけた。
『一緒に買いに行こう』と父方のおじいちゃんが言ってくれた。
僕たちは歩いて5分ほどの文房具屋さんにノートを買いに行った。あの場を離れるにはちょっと近すぎた。子どもながらに失敗したと思った。時間稼ぎのために少しでも遠回りをして帰ろうと思い、
『あっちから帰ろうよ』とおじいちゃんに言うと、快く遠回りをしてくれた。
最後の曲がり角を曲がったところで…
「お母さん!!」
家のすぐそばで、様子を伺うように母が挙動不審に立っていた。僕の声に気づいた母は走って逃げようとしたが、おじいちゃんが走って母を捕まえた。あんなに走ったおじいちゃんを見たのはこれが最初で最後だった。
「お母さんが帰ってきたよ!」
家に駆け上がって僕は言った。
おじいちゃんが母を連れて帰ってきた。
…帰ったきたのはうれしかったが、またあの辛い光景がやってくるのだと、帰ってきてから気がついた…。
それから数日…
ある日、家に帰ると…
いなかった。母はいなかった。
父が帰ってきて、今回は何か違う空気を僕らは感じていた。父は慌てて大切なものの入った引き出しを開けた。なくなっているものはなかったらしい。
…ただ、
『子どもたちをお願いします』と書かれた手紙が1枚引き出しの中に入っていた。
もう何度目だろうか。母方のおじぃちゃんとおばぁちゃんが謝り頭を下げる姿を見るのは…。
僕は水泳の練習に行かなければならなかった。ただ、こう言い残して家を出た。
「もうお父さんが我慢する必要はないよ。離婚しても僕と妹は大丈夫だから。2人で話し合って、もうお母さんはいなくていいって決めたから」
その言葉を僕は覚えていない。
9歳の夏。僕の家は父子家庭になった。
父は母の実家にも連絡をした。おじぃちゃんとおばぁちゃんはただただ謝っていたらしい。
その日は昼までの授業だった。家に着く前に首に引っ掛けたカギを服の中から出して、開ける準備をして…カギを回した。
…ん??…開いてる??
そぉーっとドアを開けると…
『おかえり』
母だ!!そこにはいつもと同じ母がいた!!
僕が母にこの数日の事を聞こうとしたが、
『ごめんね、ちょっとお父さんとケンカしちゃって。もう大丈夫だから』
母のごめんねに…涙が出て、抱きしめられたらこの数日のことが夢だったかのように感じてしまった。
その日の夜は…思い出すのも辛い光景だって。泣きながら父とおばあちゃんたちに謝る母。
僕は妹と2段ベッドの上にあがり、妹が不安がらないよう、みんなの声が聞こえないようにたくさん話して、たくさん笑って…僕もみんなの声が聞こえないように…たくさん笑った。
それからいつもと変わらない日々が続いた。…ただ、僕は父にもらった家のカギを返さず、ずっと首からぶら下げて学校に行った。
父の『お父さんとは違う男の人と恋人になっていたんだ。』という言葉が忘れられなかった。どこかで僕は、母のことを信じきれていなかった。
ある日の朝、ベッドから出た僕はテーブルに置かれた朝ごはんを見て異変に気がついた。トーストとオレンジジュース…。それだけ。ヨーグルトとサラダがなかった。
台所へ向かうと…誰もいない。すると父が部屋から出てきて僕の顔をじっと見つめた。
「そういうことだね、わかったよ」
僕はそう言って、首にぶら下げたカギを父に見せた。
父は黙ってうなずいた。
次の日曜日、母方のおじぃちゃんとおばぁちゃんがやってきて…謝った。ひたすら謝り続けていた。父方のおじいちゃんとおばあちゃんもやってきた。波乱だ…。
おじいちゃんとおばあちゃんは冷静だった。あまり責めてはいけないと思ってくれていたのだろう。
妹は祖父母がたくさん来てくれて喜んでいた。理由はわかっていなかったから。僕はこの状況に我慢ができず…
「明日使うノートがないから買いに行きたい」とテキトーな理由をつけてみんなに向かって話かけた。
『一緒に買いに行こう』と父方のおじいちゃんが言ってくれた。
僕たちは歩いて5分ほどの文房具屋さんにノートを買いに行った。あの場を離れるにはちょっと近すぎた。子どもながらに失敗したと思った。時間稼ぎのために少しでも遠回りをして帰ろうと思い、
『あっちから帰ろうよ』とおじいちゃんに言うと、快く遠回りをしてくれた。
最後の曲がり角を曲がったところで…
「お母さん!!」
家のすぐそばで、様子を伺うように母が挙動不審に立っていた。僕の声に気づいた母は走って逃げようとしたが、おじいちゃんが走って母を捕まえた。あんなに走ったおじいちゃんを見たのはこれが最初で最後だった。
「お母さんが帰ってきたよ!」
家に駆け上がって僕は言った。
おじいちゃんが母を連れて帰ってきた。
…帰ったきたのはうれしかったが、またあの辛い光景がやってくるのだと、帰ってきてから気がついた…。
それから数日…
ある日、家に帰ると…
いなかった。母はいなかった。
父が帰ってきて、今回は何か違う空気を僕らは感じていた。父は慌てて大切なものの入った引き出しを開けた。なくなっているものはなかったらしい。
…ただ、
『子どもたちをお願いします』と書かれた手紙が1枚引き出しの中に入っていた。
もう何度目だろうか。母方のおじぃちゃんとおばぁちゃんが謝り頭を下げる姿を見るのは…。
僕は水泳の練習に行かなければならなかった。ただ、こう言い残して家を出た。
「もうお父さんが我慢する必要はないよ。離婚しても僕と妹は大丈夫だから。2人で話し合って、もうお母さんはいなくていいって決めたから」
その言葉を僕は覚えていない。
9歳の夏。僕の家は父子家庭になった。
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