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episode 1 〜あたたかい家族〜

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この物語は事実に基づいたフィクションです


僕の生きてきた日々は平凡だったのだろうか
僕はもっと平凡に過ごせたのだろうか
僕は何度、何度、深呼吸をして…
 深呼吸をして、気持ちを落ち着けて生きてきたのだろうか…


episode 1  ~あたたかい家族~

 僕には、両親と妹がいる。
小さいころから水泳を習っていた。父の仕事が休みの時は、両親そろって迎えに来てくれ、周りからもあたたかい家族だと言われていた。
 夏にはお祭り、幼なじみ家族と動物園に行ったり、誕生日には母手作りのケーキ。本当にあたたかい家族だった。
 妹が生まれてからは、男女ながらもお揃いの洋服を着て、お揃いのカバンを母が作ってくれた。幼稚園には母手作りの巾着袋を持って行っていた。キャラクターの刺繍が細かくて、みんなに羨ましがられた。小学校の入学式には、もちろん両親と妹が参加してくれた。ぎこちない表情で幼なじみたちと写真を撮った事を覚えている。


 ある日の夜、両親のケンカをする声が聞こえた。夫婦喧嘩なんてどこの家庭にもあることだ。
 ただ、母が『出て行く!!』と言いながら、父に刃物を向けていた事を除いては…。
 …次の日の朝、いつもと変わらない朝だった。僕は夢でも見たのかと思いながら、学校へ出かけた。

それから、しばらく経った日のことだった…
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