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1章 アマリリス姫様
28話 約束-5
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暫くしてとうに日は沈み、森は暗い闇に呑まれた。ツユとケイジュの二人は何も見えていない。お互いすらも見えていないが進んでいた。手に握った石が自然と進むべき方へと足を進ませていた。
無。
全く見えていない二人は声を出すことすらも出来ずにいた。そこにいるのが人なのか魔物なのか動物なのかも土を踏む音だけでは判断できない。
歩いていると、先の方がぼうっと光っていた。恐らくあの井戸だろう。思ったよりも、というよりは全く石が光ってくれないのでツユもいつものようには走れない。不安になり、石が導く通りに歩くしかない。まあ、ケイジュにとっては手間が減ってありがたい事だが、光ってくれないのは困る。
近づけば光るそれが井戸だということがわかる。今にも走り出したいのだろうなとケイジュは前を歩くツユの足跡でわかる。それほど長く近くにいるから見えなくても自然と笑みが溢れる。見られていないからこそにっこりと笑っていられる。
もう足元もほんのり明るい。ケイジュからもツユがいることが後ろ姿が見えるのでわかる。一瞬誰かと思ってしまったが、ツユが髪を結ってもらう前に飛び出したせいだ。
明るくても良く見てないのにツユが少し早足になった。見る限り木の枝や足を滑らせそうな物はないのでツユを止めずにケイジュも一緒になって早く歩く。
「ケイジュ、入っていい?」
「わざわざ聞かなくても……。早く降りてね、僕も降りるから」
井戸に手をついたツユがワクワクした目でケイジュに尋ねた。年の離れた妹を見るような目でケイジュは答えるが、ケイジュが言い終えるよりも前にツユは降り始めていた。飛び込まなかっただけマシか。
ピチャン、という音を聴いてケイジュはツユが底まで降りたことを確認する。ツユは上に向けて手を振るが、そんなもの見えない。そこにケイジュが飛び降りた。
「っと……おまたせ、ツユちゃん」
バシャン、という大きな水しぶきと音をたたせてケイジュは両足で綺麗に着地した。水を被ることはなかったが、少しだけ怒り気味のツユがケイジュも軽く叩いてからもう開け方を知っている扉を開いた。
「……来てくれたわね。降りてきて」
井戸の底にあるせいか湿度がやけに高くジメジメとしたその部屋の奥から小さいがハッキリとした高い声がツユとケイジュに聞こえた。
「手、貸してあげるから落ちないでね」
ケイジュが階段を降りようとするツユに手を出す。その手を掴んでツユは降りる。
降りた先にはアマリリスが待っていた。一日しか経っていないはずなのにかなり窶れているようだ。確か、とても美しかった白い髪は暴れたのかボサボサになり、紐で一つに束ねている。白い肌にも深く黒い隈が付いている。美少女であることに代わりはないのだが、どうもその美しさが半減しているようにツユには思えた。
「こんな格好でごめんね……昨日からだけど。二人が何を知っているかは知らないけど、何だか昨日とは顔が違うじゃない。特にケイジュ」
アマリリスは元気がなさそうだ。体調不良か徹夜明けの時にはこんな風になるのだろう。大人びた笑みを浮かべたアマリリスがツユとケイジュの顔を交互に見た。
「そうだね。僕はアマリリスに聞きたいことが山ほどあるんだ。せっかく午前中を潰して調べあげたんだ、答えてもらうよ。アマリリス」
何かを覚悟したような顔のケイジュが問い詰めるように強くアマリリスに言った。ツユだけは何もわからないが、こんな分かりやすい空気も読めないわけではない。少し黙って二人の様子を見ていた。
少し、楽しみながら。
無。
全く見えていない二人は声を出すことすらも出来ずにいた。そこにいるのが人なのか魔物なのか動物なのかも土を踏む音だけでは判断できない。
歩いていると、先の方がぼうっと光っていた。恐らくあの井戸だろう。思ったよりも、というよりは全く石が光ってくれないのでツユもいつものようには走れない。不安になり、石が導く通りに歩くしかない。まあ、ケイジュにとっては手間が減ってありがたい事だが、光ってくれないのは困る。
近づけば光るそれが井戸だということがわかる。今にも走り出したいのだろうなとケイジュは前を歩くツユの足跡でわかる。それほど長く近くにいるから見えなくても自然と笑みが溢れる。見られていないからこそにっこりと笑っていられる。
もう足元もほんのり明るい。ケイジュからもツユがいることが後ろ姿が見えるのでわかる。一瞬誰かと思ってしまったが、ツユが髪を結ってもらう前に飛び出したせいだ。
明るくても良く見てないのにツユが少し早足になった。見る限り木の枝や足を滑らせそうな物はないのでツユを止めずにケイジュも一緒になって早く歩く。
「ケイジュ、入っていい?」
「わざわざ聞かなくても……。早く降りてね、僕も降りるから」
井戸に手をついたツユがワクワクした目でケイジュに尋ねた。年の離れた妹を見るような目でケイジュは答えるが、ケイジュが言い終えるよりも前にツユは降り始めていた。飛び込まなかっただけマシか。
ピチャン、という音を聴いてケイジュはツユが底まで降りたことを確認する。ツユは上に向けて手を振るが、そんなもの見えない。そこにケイジュが飛び降りた。
「っと……おまたせ、ツユちゃん」
バシャン、という大きな水しぶきと音をたたせてケイジュは両足で綺麗に着地した。水を被ることはなかったが、少しだけ怒り気味のツユがケイジュも軽く叩いてからもう開け方を知っている扉を開いた。
「……来てくれたわね。降りてきて」
井戸の底にあるせいか湿度がやけに高くジメジメとしたその部屋の奥から小さいがハッキリとした高い声がツユとケイジュに聞こえた。
「手、貸してあげるから落ちないでね」
ケイジュが階段を降りようとするツユに手を出す。その手を掴んでツユは降りる。
降りた先にはアマリリスが待っていた。一日しか経っていないはずなのにかなり窶れているようだ。確か、とても美しかった白い髪は暴れたのかボサボサになり、紐で一つに束ねている。白い肌にも深く黒い隈が付いている。美少女であることに代わりはないのだが、どうもその美しさが半減しているようにツユには思えた。
「こんな格好でごめんね……昨日からだけど。二人が何を知っているかは知らないけど、何だか昨日とは顔が違うじゃない。特にケイジュ」
アマリリスは元気がなさそうだ。体調不良か徹夜明けの時にはこんな風になるのだろう。大人びた笑みを浮かべたアマリリスがツユとケイジュの顔を交互に見た。
「そうだね。僕はアマリリスに聞きたいことが山ほどあるんだ。せっかく午前中を潰して調べあげたんだ、答えてもらうよ。アマリリス」
何かを覚悟したような顔のケイジュが問い詰めるように強くアマリリスに言った。ツユだけは何もわからないが、こんな分かりやすい空気も読めないわけではない。少し黙って二人の様子を見ていた。
少し、楽しみながら。
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