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しおりを挟むお互いのけぶるようなフェロモンに包まれながら、あのあまい身体を何回抱いたのか。
想像しただけで、心臓がザラザラと引っ掻かかれ血が流れる。
パキ……と小さな音が聞こえた気がした。続くカシャンとガラスの割れる音。
「嵐柴さんっ?! 」
「……? 」
瞬間、名前を呼ばれた意味が分からなかった。
追った央翔の視線の先、割れたシャンパングラスが二海人の手を傷付けて指先から血が出ていた。床には落ちたグラスの破片が散っている。
「あぁ、悪い…… 」
「悪いって……、怪我してるじゃないですか 」
央翔は目配せで使用人を呼ぶと、その場を片付けさせる。
人の手を煩わせたことが申し訳ない。
アイツのこととなると自制が効かなくなるのはいつものことだが、自分の嫉妬深さにはほとほと呆れる。だが、どうしようもない。
「……手ぇ、洗ってくるわ 」
ついでに頭も冷やそうと、使用人から清潔そうなタオルを受け取り、その場を後にしようとした時だった。
「嵐柴っ!! 」
尋常ではない山本の声がして振り返る。
「やっと見つけたっ! ほら、パパ居たよ 」
その腕には、ぐったりとして具合の悪そうな海音を抱いている。頭の中が真っ白になった。
「どうした! 何があった! 」
「って、お前っ?! 怪我してんじゃ……
」
「そんなのどうでもいい!! 」
その手から奪う様に海音を受け取る。
「パ、パ…… 」と、海音がか細い声を出した。見上げる瞳は潤んでいる。
「パパ、あちゅ、い、あちゅいよう 」
「……熱があるな 」
ぐずる海音の額に手を当てると確かに熱い。それにしても、先刻まではあんなに元気だったのに。
疑問を感じ、山本の方を見ると山本は青くなっていた。
「さ、さっきまで、沢山のケーキを前にご機嫌だったんだ。それがいきなり…… 」
「別に山本を責めてはいないよ。それより何か変わったことは無かったか? 海音が食べていたものとか 」
山本が首を振る。
その時、二海人は気付いた。どうやら、広間の方も騒がしい。
「レモンタルトを探してたんだ。まだ、何も食べちゃいな…… 」
ガシャーーンッ!! 突然、大きな物音がした。
「何事だ? 」
「……失礼します! 」
言うより先、央翔が広間の方へ向かう。二海人と山本も駆け足でそれに続いた。
原因は直ぐに分かった。
「ーーー京香っ!」
大きな階段の下で、淡いブルーのドレスを着た京香が倒れる様に座り込んでいる。
そして、彼女の周りには噎せ返るような深く甘ったるい匂いが立ち込めていた。
ーーー発情、か……っ?
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