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しおりを挟む悔しくて枕を投げるが、二海人はそれをヒョイと軽く避けた。
「ばかっ!避けんな! 」
「酷いな、いきなり何だよ? 」
「この、体力お化けっ! 大体、何回ヤったと…… 」
言ってからハタと気付く。6回までは覚えてる、でもそれ以降は何が何だか分からなくなって記憶が曖昧だった。
『や、あ……っ、そんな奥、怖いっ 』
『怖い、だけ? 』
『だめっ、またくる……、これ以上したら、ぼく、壊れ……っ 』
『素直だね、いい子……っ 』
『あっ、くっ、……ばかっ、深いっ、はっ、あっ、あっ……』
途中、何度か意識を飛ばした。けれどその度、それを上回る辛い位の快感に目覚めさせられた。
しかも、朦朧としながらとんでもないことも沢山言わされた気がする。
最中のことを思い出し、恥ずかしさに頬が熱くなった。
「人のこと、好き勝手して……っ! 」
「しょうがないだろ、嬉しくてはしゃいでたんだから諦めろ 」
「は? 」
二海人が部屋のドアに手を掛けながら、肩越しに振り返る。
「こちとら20年来の初恋、ずっと拗らせてんだ。……舐めんなよ? 」
片方だけ少し上げた口角。この上無く魅力的に微笑った男は、催促するインターフォンに「ハイハイ 」と言って後ろ手にドアを閉めて出ていった。
「え、嘘……?、え? 」
今、初恋って言った?
残された真祝は、ポテンともう1度ベッドに横たわる。 赤くなった顔が更に蒸気する。
「ヤバいよ、それ反則…… 」
本当は1回1回抱かれる度幸せ過ぎて、触れられる度嬉しくて、今、この瞬間で死んじゃってもいいと思ってた。
「これ以上、お前のこと好きにならせてどうすんだよ 」
真祝は二海人の綿の黒いスタンドネックのパーカーがベッドの下に落ちているのを見付け、自分の方へと引き寄せる。
拾い上げて抱き締めると、太陽の匂いがした。
太陽の匂い、……二海人の匂い。
鼻腔いっぱいに吸い込むと、二海人の腕の中にいるみたいで安心する。くわっと1つ欠伸が出て、真祝は猫のように丸まった。
瞳を閉じると、遠くで可愛い海音のはしゃぐ声が聞こえる。
大切な人達の奏でる音が心地好い。
待ってね、直ぐにでも行きたいけど、暖かい温もりが気持ち良くて、身体が動かないんだ。
ふと、もう1人子どもが欲しいと、二海人の匂いに包まれながら真祝は思った。
今日とは違う。きっと発情期にはあの時みたいに拒否反応が激しく出るだろう。
だけど、二海人さえ居てくれれば大丈夫だ、自分達なら乗り越えられると真祝の中には静かな自信が芽生えていた。
「だいすき。ふみ、と 」
起きたら、僕の話、聞いてね。
優しい睡魔に誘われて、真祝は遠ざかる意識の中、幸せな気持ちで深淵へ落ちて行った。
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