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しおりを挟む「じゃあ、このマンションは? 」
「マンション? 」
「だって、オカシイだろ? 再会して、海音が居るから直ぐに結婚決めたまではいいとしても、こんな家族で住むような所を既に用意してるなんて 」
それに対して、二海人は忌々し気に舌打ちをした。
あまり二海人のそういう所を見たことの無かった真祝が目を瞠ると、気付いた二海人が「俺はこういう男だよ、幻滅したか?」と苦笑した。そして、言いたくないのだろう話を、余計なことを全て省き、端的に訥々と説明する。
「まほがあの坊っちゃんと別れたと聞いて、直ぐに新築で入居出来る物件を探した。条件に合い、手頃なのがここだった。思いの外、まほを探すのに手間取って、こっちの契約のが早く済んだってだけの話だ 」
俺と海音のため。 聞いてしまえば、疑っていたのが恥ずかしくなる位、単純なことだ。けれど今度は……。
「二海人、央翔に会ったの? 」
別れたとかそんな当人同士の話、聞いたのなんか本人からに決まってる。二海人は聞かれるのが分かっていたのか、仕方がないという風に言った。
「……会った。というか今、ウチの会社とK.Gで同じプロジェクトを進行してる 」
現在進行形で、一緒に仕事をしてるのか……。
二海人が言いたく無かった理由が分かった。マンションの話をすれば、この話をしなきゃいけなかったからだ。
「……アイツ、元気に、してる? 」
「気になるか? 」
「そりゃ…… 」
言い掛けて、真祝は二海人に1番聞かなくてはいけないことがあることを思い出す。
二海人は自分のことがずっと好きだったと言った。それなら、何故俺を央翔に差し出した?
「アイツは…… 」
自分は何を言おうとしているのか。止めておけと心が警鐘を鳴らしている。
だけど、これは他の誰でもない、弱い俺が犯した決して消えはしない罪科。
「アイツは、……央翔は俺に凄く優しかったし、愛してくれたよ 」
ポツポツと彼の人を思い出しながら言った言葉は、胸の中で降り出しの雨みたいに落ちていく。
「俺をお姫様かなんかと間違ってるんじゃないかって思うくらい、大事にしてくれた 。発情期で苦しい時はずっと側に居て、自分だって番のフェロモンに当てられて辛いだろうに、俺が壊れない様に、俺の身体が必要とする分だけアイツのをくれた 」
俺が、治療以上のそれを望んでいなかったから。
知っていた、本能剥き出しの央翔に抱かれたのは、番になったあの夜だけだった。
「だから、気になるのは当然だ。俺は裏切ったとはいえ、アイツの番だから 」
ふっと、二海人が片方の口角を上げて微笑った。凍える様な冬の海、冷めた瞳に、ひゅっと喉が鳴る。なのに……。
「羨ましいな、俺には一生分からない感情だ 」
なのに、胸がこんなにゾクゾクとあまく震えるのはどうしてだ?
「二海人には分からなくて当たり前だ 」
「……あぁ、そうだな。俺には分からない、どんなに欲しくたって、努力したって、手に入らないものだ 」
「だから、俺を諦めたの? 」
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