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しおりを挟む「子供を産んだことを知ってるってことは、お前、まほの居所知ってんな? 分かってて助けてやらなかったのか? 」
「真祝さんは、憎い俺の手助けなんて必要としていな……」
「それが何だっ! 」
央翔が言い終わらないうちに二海人は大きな声を上げると、央翔の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶる。
「アイツは大学在学中に、たった1人の身寄りである母親を亡くしてる! 頼る者もない! それなのに、見てるだけで放っておいたって言うのか?! プライドか何か知らないが、気にはなるくせに、アイツの苦しい時に側に居て支えてやらなかったって言うのか?! 」
チッと、二海人は舌打ちをすると、突き飛ばす様に手を離した。反動でよろけた央翔がソファーに沈む。
「全く、本当に見込み違いもいいところだ 」
違う。1番頭にきてんのは、何も知らなかった自分自身にだ。
「アンタに、そんな事言われたくない。他に好きな女が出来て、真祝さんを俺に押し付けたアンタに…… 」
襟元を直しながらそう言う央翔に、二海人は上から冷たい視線を落とす。
「何のことだ? 俺はガキの頃から、真祝のことしか見てねぇよ 」
「……?! 」
央翔が信じられないことを聞いたかの様に、目を大きく見開き見上げてくる。
「勝手にお前らが勘違いしただけだろ 」
こっちとしても、その方が都合良かったしな。
しかし、その先の言葉は飲み込んで二海人は言った。
「アイツ、返して貰うぞ 」
央勝は言葉を詰まらせた。
言い返したいのに、言い返せない。それは、言われたことが事実だったからだ。
でも自分だって、本当に好きだった。愛していた、……いや、まだ愛している。
だけど央翔には、嵐柴 二海人の様に躊躇無く、あんなことは言えない。
「なぁ、久我さん」
二海人は、呼び掛ける様に央翔の名前を呼んだ。
「君は真祝の『運命の番』という部分だけを愛していたのか? 」
央翔の身体が揺れたのが、分かった。
「君の言う、真祝が君を信じさせたという期間、何年何ヵ月なのかは分からないけれど、君はアイツの側に居たんだろう? それだけの時間を一緒に過ごして、アイツの何を見てた? あの馬鹿が復讐とか、そんなこと計画出来る賢いヤツに見えたのか? 」
『馬鹿って、言うな! 』
ここにお前が居たなら、きっとそう言ったな。
真祝の声が聞こえた様な気がして、可笑しくなると同時に、心臓が捩れるみたいに軋んで痛む。
でも、馬鹿は文面通りの意味じゃない。こんな俺でも許すと言った、正真正銘のお人好しの馬鹿だから。
「第一、君は見たことないかも知れないが、発情期に番持ちのΩが他の相手に抱かれる時の拒絶反応は半端ない。それに耐えてまで、そんなことをするとは到底思えない。
相手が知らない男だと言っていたのなら、もしかしたら…… 」
考えたくもない理由を口にすれば、ゾクリと背中に冷たいものが落ちる。それは、央翔も同じだったらしい。
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