86 / 152
9.
13-13
しおりを挟むそれなら、真祝の知っていた二海人は本来の二海人では無かったということなのか。でも二海人は子どもの頃からずっと、真祝の知っている二海人だった。
それ自体が無理をして見せていた姿なのだろうか? 考えれば考える程、分からなくなる。
ならば、理想の男を理想としてたらしめたのは、一体、どんな女の子なのだろう。
「二海人、でも俺は、お前がどんなお前でも大好きだよ 」
羨ましくて、悔しくて、考えただけでどうにかなりそうだ。 そのコが自分だったら、どんなに良かったのにと、心の底からそう思う。
「俺だったら、どんな理由があったって側にいたいと思う。そのコのためにならないとお前が思っていることだって、お前が考え過ぎてるだけで、そのコからしたら大したことじゃないかもしれないじゃないか 」
この1年、少しづつ棄ててきた筈だった。なのに、あっという間に引き戻されたこの気持ちを、ここまで来たら認めざるを得ない。
くしゃりと口元が歪んでしまうのが分かる。こんな時に泣きたくないのに。
滲む視界の中、二海人の驚いている顔が見えた。
「ずるいよ、お前。 俺、お前のこと、絶対許さないって思ってたのに、そんなこと聞かされたら許さなきゃいけなくなる 」
ズズッ……と、洟《はな》をすすったら、「ばぁか、何でまほが泣くんだよ 」と、さっきより強く頭を撫でられた。
「お前は、全く……。賢いのか、馬鹿なのか、本当分かんねぇ奴だな 」
「だから、馬鹿って言うな 」
優しい眼差しと柔らかい微笑みに、心臓がぎゅっと締め付けられるみたいに痛い。真祝は、零れる涙を隠したくて、コツンと二海人の肩に頭を乗せた。
「俺、やっぱり…… 」
その時だった。ドクン……ッと、突然、全身が戦慄く。
何、これ? 嘘、……だ。
「どうした……? 」
まだの筈だった。でも、今日は朝から熱っぽかったのは確かだ、さっきも……。
真祝は、コクリと唾を飲み込んだ。
「二海人、俺、身体が熱い……」
「お前、まさか、発情…… 」
潤む瞳で見上げたら、舌打ちをした二海人が、「気付くことも出来ねぇなんて 」と、スマホを手に取る。けれど、真祝は電話を掛けようとする手を掴んで制止した。
「どこに、掛けるの? 」
「決まってるだろ、久我の坊っちゃんにだよ 」
「嫌、だ…… 」
他の男の番になって、散々抱かれた身体だ。今更、そのことを隠そうなんて思ってはいない。
だけど、何をするか分かっていて、好きな男にその相手を呼ばれるのは、どうしても耐えられなかった。
「また、俺を央翔に渡すの? 」
55
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる