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しおりを挟む「……殴ってやる 」
もし、これが本当なら、アイツが認めたならば。
真祝はガタンと音を立てて、席を立ち上がった。
「なぐ……?、どうし……、真祝さん? 」
不穏な台詞と普通ではない真祝の雰囲気に、京香がおろおろとしている。
「ごめんね、京香ちゃん。俺、行かなきゃ 」
「ちょっと待って下さい。行かなきゃって…… 」
「本当は、帰りは家まで送って行こうと思ってたんだけど 」
「それはいいですけれど。真祝さん、行くって、一体どこへ? 殴るって誰を?」
真祝はそんな京香に、ふっと微笑い掛けた。そして、テーブルに紙幣を何枚か置くと、何も言わずに入り口へ向かう。
「真祝さんっ? 真祝さん……っ?!」
背中に京香の声を聞きながら、足が自然に速足になる。
「真祝さんっ! 今夜の兄との約束っ、覚えてますよねっ!! 」
入り口のドア開けた時に放った京香の言葉が、後ろ髪を引っ張る。
一瞬、足が止まり掛けたが、真祝はそれを振り切って外に走り出した。
◆◆◆◆◆◆
勢いでここまで来てしまったが、実際に二海人の部屋の前に立った真祝は、インターホンを押す指を寸前で止めた。
京香が言っていた男は、二海人だと思う。
だが、地下鉄を乗り継いだり、ここに来るまで結構な時間を要したため、真祝は冷静さを取り戻してしまい、あの時思った『絶対』は、『きっと』に変わってしまっていた。
あれから、二海人には1度も会ってはいない。もう、平気な筈だ。俺の方がアイツに裏切られたんだから、俺がビクつく必要はない。
「確認するだけだ、確認するだけ 」
真祝は、ゴクンと喉のつかえを飲み込むと、インターホンに手を掛けた。
「ぅわっ……!」
すると、まだ鳴らしてもいないのに、突然ドアがガチャッと開いて、真祝は驚く。
「ま……ほ? 」
ドアから乗り出した半身、二海人は信じられないものを見るような目で真祝のことを見た。
「二、海人……?! お前、それ…… 」
信じられないのはこっちの方だ。そこに居たのは、真祝の知る爽やかで凛々しい、短い髪の二海人では無かった。
目に掛かる程の前髪、それに加え、目許を縁取る銀色の眼鏡と顎下の髭。
見たことのない風貌に、否が応でも目が釘付けになる。
「……あぁ、最近視力が落ちてな 」
真祝が驚いているのに気付いたのか、そう言って二海人が長めの前髪をサラリとかき上げた。
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