月夜の小鳥は哀切な嘘をつく【本編完結。アナザーストーリー連載中★】

山葵トロ

文字の大きさ
上 下
78 / 152
9.

13-5

しおりを挟む



 言われている意味が分からなくて、真祝は首を傾げて自分に指を向ける。


 「俺?  」

 「本当に分からないんですか? 」


 誘えば、喜ぶと思ったのに。

 顔に出ていたのか、京香はその可愛い顔を顰めるとかぶりを振った。


 「 ……お兄様が余りに不憫だわ 」

 「はぁ? だから、何で? 」

 年下の女の子に馬鹿にしたみたいに言われて、真祝はムッとする。すると、それを見た京香が真祝にニッコリと微笑《わら》った。

 「じゃあ、真祝さんは兄のこと、どの位、愛していますか? 」

 「へ?  あ、愛?」


 真祝は、食べているパスタのフォークを、危うく取り落としそうになった。どうして、いきなりそんな話になるんだ?

 「私、運命の番って、とても憧れてるんです。本能で惹かれ合う、究極の両想い! 世界で2人だけが持つ絆! でも、お兄様が真祝さんに夢中なのは見ていて分かるんですが、真祝さんが本当にそうなのか…… 」


 チロリと疑い深い視線を寄越されて、真祝はギクリとした。

 「そ、そんなの、決まってんだろ。結婚すんだから  」

 「本当ですか?  でも、今だって、2人だけのデートに私を誘ったりするし 」

 「それは、京香ちゃんに悪いと思ってるから……っ 」


 つーか、今夜のアレ、デートなのか。

 今更に気付いて、冷や汗が出た。食事なんて、いつも行ってるから、そんな意識まるで無かった。


 「それじゃあ、きちんと愛してるって言ってください!」

 「ちょっと待て! 何で、京香ちゃんに?」

 机を叩きそうな勢いに呑まれそうになるが、それはおかしいだろうと気付く。けれど、京香も引かなかった。


 「それは、兄が真祝さんから愛してるって言われたことがないって、悶々と悩んで相談してくるからです。本当、うざったいったら 」

 だから、今言って下されば私が伝えますからと言われて、真祝は頭を抱えたくなる。

 あの野郎……。全く、何てことを、妹に相談してんだよ。


 「ごめん。迷惑懸けて 」

 謝ったら、「そんな言葉が聞きたいんじゃありません  」ときつく返された。真祝は両手を上げる。

 「ハイハイ、分かったよ。俺はアイツのことを愛……?! 」

 しかし、仕方なく言おうとした言葉が、喉奥で詰まる。こんなのただの言葉だ、何てことない。……なのに。


 「……好き、だよ 」

 言い換えた言葉だったのに、京香は満足したらしく、きゃあと嬉しそうに両手を頬に当てはしゃぐ。

 「やっぱり、愛し合っていらっしゃるんですね。そうですよね! 真祝さんとお兄様は運命の番なんですから 」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

なぜか大好きな親友に告白されました

結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。 ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...