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その朝、何日かぶりに、真祝はすっきりとした頭で目覚めた。
……発情期、終わった?
もそりと、気だるい身体を起こして隣を確かめると、央翔がまだ眠っていた。整った顔に掛かる明るい色の髪が、窓から差す朝陽を受けて煌めいている。
「……綺麗な顔してるよなぁ 」
俺だけじゃない、きっと誰もが見惚れる。しかし、こんなキラキラした美形のくせに、俺が発情期の時には、毎晩、力強く抱くのだ。愛していると、何度も耳許で囁きながら。
一緒にいると言ってから、1年が経とうとしている。けれど、自分はまだその言葉に返事をすることは出来ない。
真祝がベッドから立ち上がろうとすると、腕を取られた。
「……央翔?!」
そのまま、ベッドに引き込まれ、後ろから逞しい腕を巻き付ける様に抱き締められる。
「もう、起きたんですか? 」
「おい、ちょっと…… 」
くん、と、項に顔を埋めて、耳の後ろの辺りの匂いを嗅ぐ。
「……治まったみたいですね 」
「あ、あぁ、今回も助かったよ。ありがとな 」
発情期は治まったというのに、番の、央翔の匂いが近くて、胸の辺りがざわざわとする。その腕から逃げ出そうと、もぞと動けば、「まだ、早いですよ 」と央翔の腕が、力をきゅっと強くした。
『早い』の意味は、起きるのが早いなのか、発情期が終わってしまうのが早いなのか……。
「今日、もう家に帰るんですか? 」
「そりゃ、そうだよ。発情期終わったのに、いつまでも世話にはなれないだろ 」
「……ずっと、ここに居ればいいのに 」
ぐりぐりと背中に擦りつけてくる頭を、クスリと笑って、後ろ手で撫でてやる。
「何だよ、甘えてんのか? 」
「茶化さないで下さい。俺は本気で…… 」
「分かってるよ 」
分かってる、央翔は優しい。俺の気持ちと覚悟を待ってくれているのだろう、一緒に住みたいとは言うものの、それ以上のことは言わない。飲んでいる低用量ピルの服用も、見ない振りをしてくれている。
発情期の時もずっと側に居てくれて、求めるだけ与えられて、央翔の想いに応えられていないのに、気持ちを利用するだけ利用しているみたいで、後ろめたく無いと言ったら嘘になる。央翔は番なのだから当然だと笑うけれど。
今は仕事を辞めたくない、子どもを産むのも怖い。丸ごと明け渡すには、今まで男として生きてきたプライドが邪魔をする。
「ごめん、これでも努力しようとしてるんだ 」
「そんなこと、努力することじゃあないでしょ」
ちゅっ……と、頬にキスを落とされて、その甘さに身体が熱くなった。
「それに、綺麗なのは真祝さんの方ですよ」
「……っ?! おまっ、聞いてたのか? 」
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