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  俺の気持ちを無視してまで、他の男に押し付けるくらいに。


 「居るんだろ、二海人っ! 答えろっ、答えろよっ! 」

 部屋のドアに向けて、真祝は真っ直ぐに手を伸ばした。本当は助けて欲しい。こんなの、俺は嫌だ。嫌だ……っ!


 「答えろーーーっ!! 」

 けれど、手は虚空を掴むだけ。 ドアは開かず、しんとした部屋には、はぁはぁと自分の息遣いが響くだけだった。
 
 ……分かってる、本当は助けになんて来てくれないこと。俺は捨てられたんだ。こんな裏切り方をされて、友達としても要らないって、捨てられた。

  
 「可哀想だね、真祝さん 」

 後ろから、央翔が流れる涙を掬うように、真祝の頬にちゅっとキスをする。央翔は、パタンと落ちた右手を引き寄せ、大きな手に包むとその手にも口付けた。


 「俺が俺の全てを掛けて、貴方を愛してあげます。貴方の全部を愛します 」


 止まらない涙は、赤い色をしていたのではないかと思う。

 「……んなの、いらねぇよ 」


 聞こえているのか、いないのか、央翔は長い指先で真祝の顎を掴むと、口唇を重ね合わせてきた。

 もう、どうでもいいと思いながら、されるがままに、口付けを許す。だけど……。

 だけど、騙し打ちみたいに、優しくしておいて突き落とすなら、いくら二海人だって許さない。絶対に。


 「ここで、するの……か? 」

 「貴方はこの部屋で、僕に抱かれるのはお嫌でしょうね 」

 好きだと言う、その男の生活する部屋で。


 「でも、だからこそ抱きたい 」と言う男の首に、真祝はするりと腕を絡めた。

 「……いいぜ 」

 央翔の瞳が、分かる程に見開かれる。


 「真祝さん…… 」 

 「俺のこと、愛してくれるんだろ? 」

 口元に微笑みを乗せてそう言えば、力強く抱き締められた。

 「そんなの、もう……、もうとっくに愛してんですよ! 」


 央翔の腕の中に閉じ込められるように抱かれて、真祝はその背中に手をまわす。央翔の身体がビクンと揺れた。

 「もう、逃げないで。お願いだ 」


 だけど、その縋るような言葉に返事はしない。抱き締められながら、真祝はその後ろの白い壁を睨むように見つめていた。


 俺は絶対に許さない。お前もだ……。




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