48 / 152
6
10-7
しおりを挟む「俺はいいが……、いいのか、四宮? 」
低く声音を変えて、四宮に聞く。
「俺は今、至極機嫌が悪い。俺がそこら辺のαになんかに負けねぇのは、お前は1番良く分かってんじゃねぇのか? 」
ガキの頃の事だけじゃなく、高校の時の事件の事の顛末も知っているのなら。
青くなり、震えている四宮が、「止め、ろ 」と二人を制した。
「でも、ミヤ……、コイツ 」
「お前らが敵う相手じゃねぇよ 」
手の甲で血を拭いながら、四宮が立ち上がろうとする。足にきたのか、膝が頽れそうになってゆらりとよろめいたが、支えようとする手下の手は邪魔そうに払い除けた。
挑むように、ずいと二海人の方へ一歩前に踏み出す。
「嵐柴、覚えてろよ 」
「もう、忘れた 」
笑みを絶やさず、そう言うと、四宮が悔しそうに口唇を噛んだ。
「βのくせに…… 」
「四宮が心配しなくても、真祝にはもう最高級のαが付いてるよ。お前に心配される必要がないくらいの立派なα様だ。アイツはもう手の届かない所にいる、お前も 」
言おうとして、声が詰まった。覚悟は出来ていても、心の中では分かっていても、言葉に出すのはまた違う。半身が削られるのを認めることに、心臓から血が噴き出すみたいに苦しい。
それでも何でもないことの様に、二海人は言葉を続けた。
「……俺も、な 」
そう、βだって、αだって同じだ。
愛する姫の王子になれなければ、結局は同じこと。
「残念だったな。初恋ってのは、実らないもんなんだってよ 」
「だっ、誰がっ!!」
かぁっと顔を赤く染めた四宮に、おや、案外可愛い所もあるんだなと思う。
「 顔、殴って悪かったな 」
「……っ?! 」
二海人は四宮に軽く手を上げてから、踵を返す。
「……くそっ!このボンクラがっ! 馬鹿にすんじゃねぇっ! 柚井じゃ、ねぇんだよっ!!」
背後で四宮が何かを言っている気がしたが、そんなことはもうどうでもよくなっていた。
「つまんねぇな、全くもってつまんねぇ 」
そう呟くと、ニ海人は足元に転がる小石を蹴った。
25
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる