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しおりを挟む「可哀想な真祝さん。真っ青になってた…… 」
尻尾を振りながら自分に懐いていた犬が、突然牙を剥いたのだから当然だろう。
央翔はテーブルの上で両手を組むと、その上に頭を乗せる。
「で、まほはどうした? 」
「逃げられましたよ 」
怯えた小鳥は、羽ばたいて逃げてしまった。
大きなため息に、目の前の男がクックッと嗤う。
「……だろうな 」
「何が可笑しいんだ! 真祝さんは貴方が好きなんですよ! 」
「おまたせし……?!」
丁度、店員が運んできたジョッキを、央翔は奪うようにして空けた。
店員と二海人が呆気に取られて見ている視線を感じる。
だが、ゴクゴクと動く喉を、口の端から零れたビールが伝うのが分かっていたが、それを気にする余裕もなかった。
飲み干したジョッキを、音を立ててテーブルに置く。
「すまない。 もう、一杯持ってきてくれないか 」
手の甲で拭いながら店員に頼むと、店員はジョッキを掴み、何故か真っ赤な顔で返事をしてその場を離れた。
すると、パチパチとゆっくり手を叩く音が聞こえる。
「お見事 」
「……何がです? 」
「さっすが、特上のα様。セックスアピールも半端ないね 」
そんなつもりじゃない。しかも1番言われたくない相手に言われて、央翔はぎりっと睨み返した。 二海人が肩を竦める。
「そう睨むなよ、合格だって言ってんの。俺はずっとお前みたいなの、探してた。」
「だから、それはどういうっ?!」
「まほ、やるよ 」
「え……?は?」
話が飛んで、理解するのに時間がかかる。
「つーか、この間、頼むって言ったよね? 《運命の番》さん 」
二海人が、口角を片方だけ持ち上げて微笑う。その表情に感じる余裕に、感情が高ぶりそうになる。
「……嫌味、ですか? 」
この男は、一体何を考え、何を企んでいるのか……。
「その《運命の番》よりも、貴方がいいと言ってるんですよ? 」
「だろうね 」
「知ってて……! 」
「そりゃ、知ってる。誤算が生じるまでは、ずっと俺だけを見るように仕向けてきた自覚はある。でも安心しろよ、まほのはインプリンティングみたいなもんだから。……それより 」
何かをスーツの内ポケットから取り出すと、テーブルの上に置いた。カチャリと金属の擦れる音がする。
「……何ですか、それ 」
「合格祝い 」
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