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しおりを挟む……相当な美少女だ。
ふわりとした明るい色の髪は自分のものだろう。 整った鼻梁、瞳を縁取っている、髪と同じ色のけぶるような睫毛は細かく揺れている。
けれど一番印象的なのは、一見大人しそうに見えるのに、こんな状況でも気の強そうな瞳だった。
「そうだよ 」
随分とキラキラした子だなぁと思いながら真祝は、いざという時の為に持ち歩いている薬とペットボトルを取り出して女の子に渡す。
「はいこれ。 水はまだ開けてないから。 」
渡された抑制剤と真祝の顔を見比べながら、「本当なんだ 」と女の子が呟いた。
「男の人、なんですよね? 」
同情するように言われて、真祝は苦笑する。
「女に見える? 」
ふるふると首を振りながら、それでも女の子は相反することを言った。
「見えないけど、でも、とても、綺麗だから、……もしかしたらって思って 」
それは、真祝には誉め言葉にはならない。 Ωということに輪を掛けて、この容姿のせいで嫌な思いも沢山してきたからだ。
女の子に悪気はないと分かってはいても、どうしても心がささくれ立ってしまう。
「もしかして、《 男Ω 》見るの、初めて? 」
「え…… 」
「別に、男なのに可哀想なんて思ってくれなくていい。 男だって女だって、ΩはΩ、一緒だ。 君も、性の対象として狙われる危機感をもっと持った方がいいよ。番を持ってないΩが発情期の時に外を歩くのは、裸で歩いてるのと同じなんだから。 」
だからって、こっちから言わせると、襲っていい理由にはならないが。
「……?! ご、ごめんなさい 」
真祝のトーンを落とした声に、女の子も自分が失礼なことを言ったことに気付いたのか、慌てて謝ってきた。
我ながら大人気ないとは思った真祝は、自分を落ち着かせるために大きく息を吐く。
「……いいから、早くそれ飲みなよ。 その薬は副作用が少ない方だし、体に合う合わないよりも、とにかくそのフェロモン抑えないことにはここから出ることも出来ない 」
渡したのは、抑制剤としてはオーソドックスで誰もが知っている薬だ。見知らぬ男から渡されたものでも安心出来るだろう。
女の子は頷き、急いでペットボトルの蓋を開けると震える手で薬を口に入れた。
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