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★お兄さん達の本音(*BL要素アリマス。注意要*)

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 「本当のあの子は、可愛くて、素直で、頭もいい。 壱葉くんとコウちゃんのことも気付いて俺に聞いてきたけど、男同士だからとか余計なことは何も言わなかったよ。
 ただ、コウちゃんが壱葉くんのことを騙してないか、大事にするか、心配していただけだ 」

 「……だから、俺にも協力しろってか? 」

 「悪い話じゃないだろ? どちらにしろ、《妹で姉》になるんだから 」


 浩輔が断れないと分かっているからこそ、浩峨は頼み事という名前の無理な命令をする。


 「俺は朔耶と璃桜姫に何て言ったらいいんだよ! 」

 「まぁ、それはお前に任せる。 俺が出た方がいいなら出るし、この件で璃桜ちゃんの担当医を外れろっていうならそうする。
 でも出来れば、今じゃなくともいずれお互いが落ち着いた時に会わせる場を設けてくれたら嬉しい 」


 ーーー俺も信頼してるよ、コウちゃん。

 ニッコリと笑う笑顔は、弟にとって邪悪以外のナニモノでもない。
 兄とは反対に、浩輔は頭を抱えた。


 「……やっぱり、俺は兄貴のことが嫌いだ 」

 「そうなの?  残念、俺はコウちゃんのこと大好きなのに 」

 「俺がストレスで倒れたら、兄貴のせいだからな 」

 「平気だよ。 コウちゃんなら、少し禿げるくらいだって」

 睨み上げてくる浩輔の瞳を受け止めた時、キッチンから仔猫達のじゃれあう声が聞こえた。
 騒ぐ音に何ごとかと二人で視線をやれば、パタパタと手にプリンとスプーンを持って、美花がこちらに駆け寄って来る。


 「聞いてよ! 壱葉ったらひどいのよっ! 」

 「だから、お前は呼び捨てにするなっ! 」


 美花は浩峨の近くまで来ると、追い掛けてくる兄を振り返った。


 「人の作ってきたプリンを、茶碗蒸しみたいはないでしょう?! 」

 「だってそれ、この間と違って全然甘くないじゃないかっ! 」

 「その時、もう少し甘さを抑えた方がいいって言ったのは誰よ! 」

 「俺は《少し》だって言ったよな?! 」


 目の前で繰り広げられる兄妹喧嘩に、こちらの兄と弟は目を円くする。

 何という子どもっぽい喧嘩の理由。
 しかし、止めようとする浩輔とは反対に、それをよい傾向とみた浩峨は注意するどころか優しく見守る。

 それは、お互いに対する信頼感だけでなく、与えられた庇護の元、守られていると無意識に感じている中で、美花はきっと今まで出来なかった兄妹喧嘩を壱葉と今しているからだ。
 そして自分は、それだけの愛情という名の水と栄養を与えている自信もある。


 綻んだ蕾は、もうすぐ誰にも負けない大輪の花を咲かせるだろう。

 微笑みながら見守っていると、美花が小さく可愛らしい顔をこちらに向けた。


 「ねぇ、浩峨さんは美味しいって言ってくれたわよね? 」

 目許をうっすら染めた、少し不安げなはにかんだような表情が堪らなく可愛い。
 このまま、何処かへ攫って悪いことをしたくなるから困ってしまう。


 「……本当によく俺んとこに降りてきてくれました 」

 「えっ? 」


 くすっと笑った浩峨に、美花が不思議な顔をした。


 「ううん、何でもないよ 」

 だが、天使と出逢ったと思っているのは浩峨だけではない。
 ふわふわと見つめ合いながらあまい恋のなかで、お互いがお互いをそう思っていたことをまだ二人はしらない。






               《fin》




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